製品基本Q&A
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ノクサフィル®️
製品情報
本剤の添付文書には、以下のとおり記載されています。
4.効能又は効果
○ 造血幹細胞移植患者又は好中球減少が予測される血液悪性腫瘍患者における深在性真菌症の予防
○ 下記の真菌症の治療
侵襲性アスペルギルス症、フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫
5. 効能又は効果に関連する注意
〈真菌症(侵襲性アスペルギルス症、フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫)の治療〉
5.1 本剤を投与する前に、原因真菌を分離及び同定するための真菌培養、病理組織学的検査等の他の検査のための試料を採取すること。培養等の検査の結果が得られる前に薬物療法を開始する場合でも、検査の結果が明らかになった時点でそれに応じた抗真菌剤による治療を再検討すること。
〈真菌症(フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫)の治療〉
5.2 他の抗真菌剤が無効あるいは忍容性に問題があると考えられる場合に本剤の使用を考慮すること。
<引用>
添付文書
ポサコナゾールは、真菌細胞の細胞膜を構成するエルゴステロールの生合成を阻害することにより抗真菌作用を示します。
<引用>
添付文書
健康成人に[14C]ポサコナゾールの経口懸濁液*投与後、血漿中でポサコナゾールは主に未変化体として存在していました。血漿中代謝物の大部分はグルクロン酸抱合体で、CYPにより生成される酸化代謝物は、少量しか認められませんでした(外国人データ)。
*:国内で承認されている製剤と剤形が異なります。
国内では、ノクサフィル®錠100mg及びノクサフィル®点滴静注300mgが承認されています。
<引用>
添付文書
外国人健康被験者にポサコナゾール経口懸濁液(*1)を経口投与した試験で、ポサコナゾールは肺上皮被覆液(ELF)及び肺胞上皮細胞(AC)へ移行することが確認されています。
AUC0-24hr比はELF/血漿で0.84、AC/血漿で32.6であり、特にACへの移行性が高い結果となっていました(1)。
(*1)経口懸濁液:国内未承認
<引用>
(1)インタビューフォーム Ⅶ. 薬物動態に関する項目
ポサコナゾールのヒトでの眼内移行性は検討していません。
動物では、雌雄LE(Long-Evans)ラットに[14C]ポサコナゾール20 mg/kgを単回経口投与した際、眼組織中の最高平均放射能濃度は1.41~2.41 μg当量/gであり、眼内へのわずかな移行性が認められました(1) 。
<引用>
(1)申請資料概要 2.6.5.5.D
ラットに対して[14C]ポサコナゾールを投与した結果、ポサコナゾールの脳内放射能濃度が低かったことから(*)、ポサコナゾールは血液脳関門を容易に通過しないことが示されています(1)(2)。
(*)血漿中濃度に対する組織中濃度の比:<0.11
<引用>
(1)申請資料概要 2.6.4.4.1 ポサコナゾールの組織分布 p.23
(2)申請資料概要 2.7.2.3.2.2 分布 p.96
使用方法
ノクサフィル®錠100mg、ノクサフィル®点滴静注300mgの添付文書には、以下のとおり記載されています。
【ノクサフィル®錠100mg】
6. 用法及び用量
通常、成人にはポサコナゾールとして初日は1回300mgを1日2回、2日目以降は300mgを1日1回経口投与する。
7. 用法及び用量に関連する注意
〈効能共通〉
7.1 錠剤と静注液は医師の判断で切り替えて使用することができる。
〈造血幹細胞移植患者又は好中球減少が予測される血液悪性腫瘍患者における深在性真菌症の予防〉
7.2 投与期間は好中球減少症又は免疫抑制からの回復に基づき設定すること。急性骨髄性白血病又は骨髄異形成症候群の患者では、好中球減少症の発症が予測される数日前に本剤による予防を開始し、好中球数が500cells/mm3以上に増加後、7日間程度投与を継続すること。
〈真菌症(侵襲性アスペルギルス症、フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫)の治療〉
7.3 投与期間は基礎疾患の状態、免疫抑制からの回復及び臨床効果に基づき設定すること。
【ノクサフィル®点滴静注300mg】
6.用法及び用量
通常、成人にはポサコナゾールとして初日は1回300mgを1日2回、2日目以降は300mgを1日1回、中心静脈ラインから約90分間かけて緩徐に点滴静注である。
7. 用法及び用量に関連する注意
〈効能共通〉
7.1 錠剤と静注液は医師の判断で切り替えて使用することができる。ただし、臨床試験において静注液の長期投与の経験は限られており、静注液の添加剤スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウムは腎機能障害のある患者で蓄積し、腎機能の悪化等を引き起こすおそれがあることから、静注液の投与は最小限の期間とし、経口投与可能な患者には、錠剤を選択すること。[9.2.1参照]
〈造血幹細胞移植患者又は好中球減少が予測される血液悪性腫瘍患者における深在性真菌症の予防〉
7.2 投与期間は好中球減少症又は免疫抑制からの回復に基づき設定すること。急性骨髄性白血病又は骨髄異形成症候群の患者では、好中球減少症の発症が予測される数日前に本剤による予防を開始し、好中球数が500cells/mm3以上に増加後、7日間程度投与を継続すること。
〈真菌症(侵襲性アスペルギルス症、フサリウム症、ムーコル症、コクシジオイデス症、クロモブラストミコーシス、菌腫)の治療〉
7.3 投与期間は基礎疾患の状態、免疫抑制からの回復及び臨床効果に基づき設定すること。
<引用>
添付文書
臨床試験を行い、安全性が確認された用法として設定しました。
臨床試験において最終濃度1~2mg/mLの範囲の安全性が確認されており、濃度がその範囲に収まる参考希釈量として150~283mLを設定しています。
なお、希釈液を減量した際の安全性については検討しておらず不明です。
投与する際は添付文書に記載された使用方法でお願いします。
<臨床試験における希釈量>
海外第Ⅲ相試験(P5520試験)では最終希釈量を150mL、国内第Ⅲ相試験(P101試験)では最終希釈量を原則250mLとして実施し、それぞれの試験で安全性が確認されています。
添付文書 14.適用上の注意
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.2 バイアルを室温に戻した後、バイアルから16.7mL抜き取り、150~283mLの生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液が入った点滴バッグ又はボトルに添加し、最終濃度を1~2mg/mLとする。
添付文書上の規定はありません。
担当の先生方のご判断により投与を検討していただくことになります。
参考まで、適応取得の根拠となった海外第Ⅲ相臨床試験における患者の組み入れ基準(1)を紹介します。
以下の、いずれかの理由により、3-5日以内に7日以上持続する可能性がある好中球減少症(ANC<500/mm3)の発症が見込まれる、又はベースライン時に好中球減少症と診断され、7日間以上持続する可能性があることが設定されていました。
・初発急性骨髄性白血病(以下、AML)に対する強⼒な標準的寛解導⼊化学療法及びアントラサイクリン系⼜はその他の認められたレジメン(他の治験薬を除く)の投与
・初回再発のAMLに対する再寛解導⼊化学療法の投与
・AML に移⾏した骨髄異形成症候群 ⼜は急性転化した慢性⾻髄性⽩⾎病以外の⼆次性AMLに対する⾻髄抑制導⼊療法の投与
実際に組み入れられた患者のうちベースライン時の好中球が500個/mm3を上回っていた非好中球減少症患者は両群ともに32%であり、その他の患者はベースライン時にはすでに好中球減少症を伴っていました(2)。
なお、保険給付につきましては、各都道府県の基金・国保の審査の先生に委ねられているため、地域の審査支払機関にご確認ください。
<引用>
(1)申請資料概要 2.7.6.3.1.1 試験方法の概要 p.512
(2)申請資料概要 表2.7.6.3.1-4 被験者の背景因子 p.520
本剤の添付文書には、以下のとおり記載されています。
2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)
2.1 エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、ジヒドロエルゴタミン、メチルエルゴメトリン、エルゴメトリン、シンバスタチン、アトルバスタチン、ピモジド、キニジン、ベネトクラクス[再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期]、スボレキサント、ルラシドン塩酸塩、ブロナンセリン、トリアゾラムを投与中の患者[10.1参照]
2.2 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
妊娠可能な女性に対しては、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導してください。
<引用>
添付文書
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、本剤の有益性と危険性を考慮し、治療上やむを得ないと判断される場合を除き投与しないでください(1)。
ラットにおいて、臨床曝露量(AUC)と同程度の曝露量で、分娩障害、出生児数の減少、生存率低下、催奇形性が認められました。ウサギでは、臨床曝露量(AUC)を上回る曝露量で、吸収胚の増加及び胎児数の減少が認められました(2)。
<引用>
(1)ノクサフィル® 妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び妊娠する可能性のある女性への投与に関する適正使用のお願い
(2)添付文書
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討してください。ラットで乳汁中への移行が報告されています。
<引用>
添付文書
小児等を対象とした国内臨床試験は実施していません。
<引用>
添付文書
本剤を過量投与したときの対処法に関する情報はありません。
過量投与が認められた場合には、患者の状態を十分に観察し、適切な対症療法を実施してください。
ポサコナゾールは血液透析で除去されません(1)。
<引用>
添付文書
海外ガイドラインではノクサフィル®錠及び点滴静注の積極的なTDMの実施は推奨されていません。(ECIL-6では、推奨度CⅢ)
ノクサフィル®は、国内外の臨床試験において99%超の患者で有効性の目標曝露量(Cavg ≧500ng/mL)を達成した一方、曝露量と安全性に関しては明確な関連性が認められませんでした。
【適応外】
本剤を粉砕して投与することは、承認外の用法となります。
本剤は腸溶錠であり、粉砕しての投与はしないようにお願いします。
粉砕して投与した際の薬物動態、有効性、安全性は検討しておらず、安全性・有効性を保証できません。
粉砕後の安定性データはありません。
【適応外】
本剤を分割して投与することは、承認外の用法となります。
本剤は腸溶錠であり、分割投与はしないようにお願いします。
錠剤分割後の安定性について検討していません。
錠剤に割線はありません。
本剤を分包、又は他剤と一包化した際の安定性について検討していませんので、おすすめしていません。
【適応外】
本剤を簡易懸濁して投与することは、承認外の用法となります。
本剤は腸溶錠であり、簡易懸濁しての投与はしないようにお願いします。
簡易懸濁にて投与した際の薬物動態、有効性、安全性は検討していません。
簡易懸濁後の安定性データはありません。
決して2回分を一度に飲まないでください。
気がついた時に、すぐに1回分を飲んでください。
ただし、次の飲む時間が近い場合は、1回とばして、次の時間に1回分飲んでください。
<引用>
ノクサフィル錠 患者向医薬品ガイド
【適応外】
末梢静脈からの投与は承認外の用法です。
本剤のご使用にあたっては製品添付文書をご覧いただきますようお願いいたします。
点滴静注を実施する際は、中心静脈ラインから90分間かけて緩徐に投与してください。
ノクサフィル®静注液の末梢静脈カテーテルからの反復投与が血栓性静脈炎と関連していたため(発現割合60%)、中心静脈ラインからの投与としました。
なお、注入部位の不耐容は、注射液がpHが低い(約2.6)ことに関連する刺激感に起因する可能性が考えられます(1)。
<引用>
(1)申請資料概要 2.7.6.2.15.5 安全性の結果
他剤と配合し、目視検査、濁度及び不溶性微粒子により評価した結果、物理的に「適合性を示す」とされた薬剤 は以下のとおりです(1)。
アミカシン硫酸塩、塩化カリウム、カスポファンギン酢酸塩、ゲンタマイシン硫酸塩、シプロフロキサシン、タクロリムス水和物、ダプトマイシン、ドブタミン塩酸塩、ノルエピネフリン、バンコマイシン塩酸塩、ヒドロモルフォン塩酸塩、ファモチジン、フィルグラスチム(遺伝子組換え)、フェンタニルクエン酸塩、ボリコナゾール、ミカファンギンナトリウム、ミダゾラム、メロペネム、モルヒネ硫酸塩水和物、レボフロキサシン、ロラゼパム
ただし、この結果をもって、各薬剤との配合を推奨するものでありません。
使用に際しては各社最新の添付文書情報を確認してください。
<引用>
(1)インタビューフォーム Ⅳ.製剤に関する項目
安全性
承認された用法・用量で実施された主要な臨床試験(*)の併合データでは、主な副作用(5%以上)は、悪心、下痢、ALT 増加でした。
なお重大な副作用として、肝機能障害、溶血性尿毒症症候群(HUS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、QT延長、心室頻拍(Torsades de pointesを含む)、副腎機能不全、低カリウム血症、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、脳血管発作、急性腎障害、腎不全、白血球減少症、汎血球減少症が報告されています。
(*)臨床試験:P05615試験、P05520試験、P101試験、P069試験
<引用>
インタビューフォーム Ⅷ.安全性(使用上の注意等)に関する項目
その他
【ノクサフィル®錠100mg】
貯法は「室温保存」です。
【ノクサフィル®点滴静注300mg】
貯法は「2~8℃」です。
<引用>
添付文書
【ノクサフィル®錠100mg】
1. 薬剤交付時の注意
1.1 本剤は腸溶錠であり、服用にあたっては、分割したり、砕いたり、噛んだりせずに、飲みくだすよう患者に指導してください。
1.2 PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導してください。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがあります。
【ノクサフィル®点滴静注300mg】
1.薬剤調製時の注意
1.1 本剤は静脈内投与の前に希釈してください。
1.2 バイアルを室温に戻した後、バイアルから16.7mL抜き取り、150~283mLの生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液が入った点滴バッグ又はボトルに添加し、最終濃度を1~2mg/mLとします。
1.3 以下の希釈液とは配合変化を起こすので使用しないでください。
乳酸リンゲル液、5%ブドウ糖加乳酸リンゲル液、4.2%炭酸水素ナトリウム注射液
1.4 本剤は保存剤を含まないため、希釈後は速やかに使用してください。速やかに使用しない場合は、冷蔵保存(2~8℃)し、24時間以内に使用してください。1回使い切りであり、残液は廃棄してください。
1.5 本剤を希釈後、投与する前に目視で異物がないか確認してください。希釈後の溶液は無色~微黄色です。溶液に異物や変色があった場合は使用しないでください。
2.薬剤投与時の注意
2.1 本剤の急速静注は行わないでください。
2.2 治療上やむを得ないと判断される場合を除き、他の薬剤を同一の輸液ラインを通して同時に注入しないでください。やむを得ず他の薬剤を同一の輸液ラインから同時注入する場合には、配合変化を起こさない薬剤を用いてください。
<引用>
添付文書
腸溶錠とした主な理由は「腸内での原薬の溶解性を高めバイオアベイラビリティを向上させること」及び「吸収に対する食事の影響の抑制」の2点です(1)。
海外において先に上市されていたポサコナゾールの経口懸濁液(*)では十分な曝露量を得るために高脂肪食の摂取が必要でしたが、腸溶錠とし吸収率を高めることで食事の有無によらず投与が可能となり、より利便性の高い剤型となりました。
海外で使用されているポサコナゾール錠は徐放錠(delayed-release tablets)と呼称されていますが、製剤自体は国内で承認された腸溶錠と同じものです。
(*)経口懸濁液:国内未承認
<引用>
(1)申請資料概要 2.5.2.1.1 新錠剤 p.36
〔海外からの報告〕
<血液悪性腫瘍または造血幹細胞移植患者>
2005年7月~2016年6月にオーストラリアのビクトリアン病院で血液悪性腫瘍と診断または造血幹細胞移植を受けた16歳以上の患者の報告 (血液悪性腫瘍患者:32,815例、造血幹細胞移植患者:1,765例)では、約56%(*1)の患者がアスペルギルス症であったとされています(1)。
(*1)侵襲性真菌症の61%が糸状菌であり、うち91%が侵襲性アスペルギルス症であった。
<造血幹細胞移植患者>
TRANSNET(*2)の報告では2001年3月~2006年3月に確定/推定侵襲性真菌症が認められた造血幹細胞移植患者875, 983例のうち983例で侵襲性真菌症が発症し、うち43%(425例)がアスペルギルス症であったとされています(2)。
(*2)TRANSNET (Transplant-Associated Infection Surveillance Network):米国23の移植施設によるネットワーク
〔国内からの報告〕
日本病理学会からの報告によると、2013年のデータでは真菌症の剖検例のうち45.3%(571例中259例)がアスペルギルスが確認されたと報告されています(3)。
<引用>
(1)Valentine JC et al. BMC Infect Dis. 2019;19(1):274.
(2)Kontoyiannis DP et al. Clin Infect Dis. 2010;50(8):1091-1100.
(3)Suzuki Y et al. Med Mycol J. 2018;59(4):E53-E62.
菌腫(Mycetoma)とは細菌又は真菌感染により引き起こされる慢性かつ進行性の局所感染症であり、真菌が原因である場合は真菌性菌腫(Eumycetoma)と呼ばれます(1)。
特定の真菌により引き起こされるわけではなく、真菌由来の疾病の総称です。
熱帯および亜熱帯地域での発症が多いとされ、1940年代までさかのぼった本邦での報告症例は10例程度と、発症頻度の極めて低い真菌症でもあります(2)。
主な症状としては皮下膿瘍などであり、全身性播種は起こりにくいとされています。
代表的な原因真菌には黒色真菌であるExophiala jeanselmei、Pseudallescheria boydii (Scedosporium apiospermum)、Madurella mycetomatis、Madurella grisea等、さらに非黒色真菌であるAcremonium属などが挙げられます。
<引用>
(1)Revankar SG et al. Clin Microbiol Rev. 2010;23(4):884-928.
(2)申請資料概要 2.5.1.2.2 真菌症の病態及び疫学
<ムーコル症(接合菌症)とは>(1)
ムーコル目の真菌による感染症の総称であり、かつては接合菌症と呼ばれていました。
多数の属の菌種がムーコル目として一括りに分類されており、原因真菌としては、Rhizopus oryzaeなどのリゾプス属、Mucor circinelloidesなどのムーコル属、Cunninghamella bertholletiaeなどのカニングハメラ属、Rhizomucor pusillusなどのリゾムーコル属などが知られています。
<病態・病型>
日和見型深在性真菌症の一つであり、発症には宿主要因が強く関係し、重篤な免疫不全の存在下で発症します。
最多の病型は、鼻脳型で、副鼻腔から感染が始まり、眼窩や口蓋を巻き込み、脳へと波及します。その他、肺型、皮膚型、消化管型や、極めてまれな病型として各種病型から続発する播種性ムーコル症があります。
まれに外傷などに続発する限局性の皮膚型ムーコル症を除けば、急性に進行し、最も予後不良な真菌症であり、大多数は致死的転帰をたどるとされています。
<発症率>
病理剖検輯報に基づく報告では、単一真菌による主な感染例ではムーコル目の分離頻度は3.6%(22/610例)とアスペルギルス属(49.0%)、カンジダ属(30.2%)、クリプトコッカス属(5.7%)に次ぎ4番目に多い真菌感染症でした(2)。
なおこれらの感染のうち重篤例の割合はムーコル目が77.3%(17/22例)と最多でした(3)。
白血病死に占める深在性真菌症に限れば、ムーコル目の感染頻度は12.0%(22/183例)とアスペルギルス属(52.5%)、カンジダ属(14.2%)に次ぐ3番目であり、重篤率の割合はムーコル目が81.8%(18/22例)と最多でした(4)。
<引用>
(1)国立感染症研究所HP
(2)深在性真菌症のガイドライン作成委員会:深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014
(3)Suzuki Y et al. Med Mycol. 2013;51(5):522-526.
(4)Togano T et al. Med Mycol J. 2012;53(1):53-58.
クロモブラストミコーシスとは、深部皮膚真菌症のうち、黒色真菌感染症に分類される真菌感染症です。
特定の真菌により引き起こされるわけではなく、真菌由来の疾病の総称です。
土壌中や植物表面に生息する特定の真菌が皮膚の穿刺又は創傷を介して偶発的に生体組織内へ侵入することによって引き起こされ、病巣は主に真菌侵入部位の真皮・皮下組織及び周辺の筋膜や骨に限局しますが、原因菌によっては全身感染に進展し致死的転帰に至ることもあるとされています。
熱帯地域に多発し、原因菌にはFonsecaea pedrosoi 、Phialophora verrucosa 、Exophiala (Wangiella) dermatitidis 、Cladophialophora bantiana (Cladosporium carrionii) 、Fonsecaea compacta 、Rhinocladiella aquaspersa 、Exophiala spinifera 、Phaeosclera dermatioides 等がみられますが、国内では年間10例程度と極めて発症頻度の低い真菌症であるとされます。
<引用>
申請資料概要 2.5.1.2.2 真菌症の病態及び疫学