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CTEPH (慢性血栓塞栓性肺高血圧症)

CTEPHの早期発見・早期治療のために

大郷剛先生

ページ監修

国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門 肺循環科 特任部長・医療安全管理部部長(併任)
(ご所属・ご役職は記事作成当時のものです。)

大郷 剛先生

香川大学医学部卒。岡山大学附属病院、英国キングスカレッジを経て国立循環器病研究センターへ。 専門領域は肺高血圧症および肺循環器疾患の診断および治療、肺動脈バルーン形成術、肺高血圧症の病態解明・治療の研究、成人先天性心疾患、循環器一般。


CTEPHとは

CTEPH(chronic thromboembolic pulmonary hypertension)とは、日本語で言うと慢性血栓塞栓性肺高血圧症。言葉は難解ですが、病態は読んで字のごとく。肺動脈に血栓が詰まっており、それが慢性化して肺高血圧症を合併している疾患です。
肺高血圧症を引き起こす疾患は5群に大別されていますが、CTEPHはそのうち第4群。ポイントは「慢性」ということで、抗凝固療法を6ヵ月以上続けても労作時の息切れが認められたり、肺動脈圧が上がっている…この状態があって初めてCTEPHと診断できます。

CTEPHは国の指定する難病ですが、適切な時期に適切な治療を施すことで根治する可能性のある疾患です。ただし治療しなければ悪化の一途を辿り、時には死に至ることも。肺高血圧症の専門施設なら治療できたのに、何の病気かわからないまま、命を落としてしまう患者さんもおられます。また運良く治療を受けることができても、病気のために社会生活ができなくなってからでは失うものが多すぎるでしょう。早期発見・早期治療の大切さをぜひ知っていただきたいと思います。

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CTEPHの症状と診断

CTEPHになると起こる症状

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早期発見、早期治療が根治へとつながるCTEPHですが、専門病院への受診がなかなか実現しない大きな理由は、診断の難しさです。CTEPHの主な症状は「息切れ」「だるさ」「疲れやすさ」「咳」「むくみ」など。ひどくなると失神する場合もあります。しかし、さほど症状が進んでいない状態だと喘息や慢性気管支炎と区別ができにくい。「精神的なものでしょう」と言われるケースもあります。
症状と疾患が結びつきにくいCTEPHですが、プライマリケア医の方々に注意いただきたいポイントがいくつかあります。まずCTEPHは「反復型」と「潜伏型」に区別されます。反復型については過去に肺塞栓を起こしているので既往歴を確認してください。
潜伏型は明らかな症状がないまま進行しますが、特徴的なのが聴診における「Ⅱ音の亢進」。
よほど丁寧に聴診しなければ気づかないものの、おかしいと思うきっかけにはなると思います。
また心電図や心エコーにも、肺高血圧症の進展により変化が出ることがあります。いずれにせよ常にCTEPHを念頭に置きながら「もしかして」という気持ちを持つことが重要でしょう。

CTEPHの診断はこちら >


CTEPHの患者数と治療の進歩

CTEPHはもともと患者さんの絶対数が少ない疾患ですが、特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は増加傾向にあります。その背景にあるのは「治療の進歩」です。治療方法の進歩があり、学会やメディアでも注目されることで、循環器系以外の先生もCTEPHという言葉を耳にする機会が多くなってきたのでしょう。結果、プライマリケア医から専門医への紹介が増え、潜在的な患者さんが表面化してきた…と、私は考えています。

治療の進歩とは「新しい選択肢が増えたこと」です。以前は、CTEPHの治療は「外科手術」が唯一の方法でしたが、外科手術以外に2つの治療法が誕生しました。これは画期的な出来事でした。

ひとつは「薬物治療」。 2013年、肺動脈を広げる作用を持つリオシグアトがCTEPHの治療薬として世界で初めて承認され、翌2014年に日本でも「外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症」を適応症として承認されました。さらに、2021年にはセレキシパグが同じく「外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症」を適応症として日本で承認されています。
もうひとつは「カテーテル治療」。バルーンを使って血管の内側を広げる治療方法です。
外科手術、薬物治療、カテーテル治療。3つの方法の中では、やはり外科手術がゴールドスタンダードであり、物理的に血栓を取り除くので良くなるのは間違いありません。しかし体力的に無理な場合や手術後に血栓が残ってしまうケースもあり、そうなると他に手立てがありませんでした。今はそのような手術のできない場合でも、カテーテル治療や薬物治療を組み合わせて行うことで、元気に生活できる患者さんもいます。
3つの治療方法にはそれぞれに役割があり、互いに補完するものです。これらをうまく組み合わせることが、CTEPHの治療が最終的に目指す方向性だといえるでしょう。

外科手術

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メッセージ:スムーズな「病診連携」がCTEPH治療のカギとなる

大郷剛先生

早期治療することで根治に近づけたり、QOLが上がる患者さんを見ていると、いかに早い段階で専門医が関わるかがCTEPH治療においては重要となります。ある患者さんは、趣味のコーラスを楽しみにされていましたが、CTEPHのために息が続かず「周囲に迷惑をかけるから」と止めざるを得ませんでした。それが治療することで再び歌えるようになり、先日は「歌えるようになって本当にうれしい」と写真を送ってくださいました。

プライマリケア医の方にお願いしたいのは「少しでも疑えば、すぐに専門機関へ送ってほしい」ということ。もし違ったとしても問題ありません。診断が難しいからと保留にするより、早く対応することが大事です。プライマリケア医から専門医へ…病診連携のバトンをスムーズにつなぐことが、CTEPHの治療におけるカギなのです。

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