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肺高血圧症の概要

肺高血圧症の概要


肺高血圧症の定義

肺高血圧症は様々な原因により、肺動脈圧が持続的に上昇した病態です。肺高血圧症は、2008年に開催された肺高血圧症の世界的なシンポジウムであるダナポイント会議で「安静時に右心カテーテル検査を用いて実測した肺動脈圧(PAP)の平均値(mean PAP)が25 mmHg 以上の場合」1)と定義され、この定義は2013年のニース会議でも採用されました。

ダナポイント会議:米国のダナポイントで開催された第4回肺高血圧症ワールド・シンポジウム
肺動脈圧の平均値:健常人の安静時mean PAP は14±3mmHg、正常上限は20mmHg2)
ニース会議:仏国のニースで開催された第5回肺高血圧症ワールド・シンポジウム


肺高血圧症の症状

肺高血圧症は、自覚症状として、労作時呼吸困難、息切れ、易疲労感、動悸、胸痛、失神、咳嗽などがみられます。しかし、軽度のうちは症状が現れにくく、症状を認めたときには、すでに高度の肺高血圧をきたしていることも少なくありません3)。進行すると、右心不全により、頸静脈怒張、肝腫大、下腿浮腫、腹水などの症状が現れることもあります3)
その他、以下のような肺高血圧症の原因疾患特有の身体所見がみられます。

肺高血圧症でみられる身体所見

肺高血圧症でみられる身体所見

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肺高血圧症の臨床分類

1998年のエビアン会議において、肺高血圧症は5群に分類されました。その後複数回の改訂を経て、 2018年にニースで開催された第6回肺高血圧症ワールド・シンポジウムにおいて、図に示すニース分類2018が提案されました4)。2018年の改訂で、第4群の慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)は肺動脈の閉塞による肺高血圧症に変更されました4)

図 肺高血圧症の臨床分類(ニース分類[2018年])

肺高血圧症の臨床分類

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コラム:肺高血圧の臨床分類の変遷

1973年
ジュネーブ
• 原発性肺高血圧症(primary pulmonary hypertension:PPH)に関する専門家会議(WHO主催)で、肺高血圧症の臨床分類を提案
1998年
エビアン
• 第2回PPHワールド・シンポジウム(WHO共催)で、初めて“肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)”という疾患概念が導入され、病因・病態により肺高血圧症例を5群に分類整理
2003年
ベニス
• 第3回肺高血圧症ワールド・シンポジウム(NIH:アメリカ国立衛生研究所が後援)で若干の改訂
特に原因となる疾患の存在を指摘することができない例を、“特発性PAH(idiopathic PAH:IPAH)” 、家族歴を持つ例を“家族性PAH”と名称変更
2008年
ダナポイント
• 第4回肺高血圧症ワールド・シンポジウム(ダナポイント会議)で、エビアン分類・ベニス分類を継承しつつ、その後の研究成果を取り入れて改訂
“膠原病に伴うPAH”を、“結合組織病に伴うPAH(connective tissue disease-PAH:CTD-PAH)”に名称変更
“肺静脈閉塞性疾患(pulmonary veno-occlusive disease: PVOD)および/または肺毛細血管腫症(pulmonary capillary hemangiomatosis: PCH)”を、第1群の亜型(第1’群)に位置づけ
“慢性血栓塞栓および/または塞栓症によるPH(PH due to chronic thromboembolic and/or embolic disease)”を、“慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension: CTEPH)”に名称変更
2013年
ニース
• 第5回肺高血圧症ワールド・シンポジウムで、ダナポイント分類に小規模の改訂
新生児遷延性肺高血圧症(persistent pulmonary Hypertension of the newborn:PPHN)が第1群の亜型(第1’’群)に、慢性溶血性貧血が第5群にそれぞれ変更など
2018年
ニース
• 第6回肺高血圧症ワールド・シンポジウムで、分類に小規模の改訂
第4群の名称を“慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension: CTEPH)”から“肺動脈の閉塞による肺高血圧症”に変更、第1群にCa拮抗薬に長期反応を示すPAHを新設、第5群にTableを追加など

日本循環器学会. 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)、
Simonneau G, et al. Eur Respir J. 53, 1801913(2019)より作成

References

1)日本循環器学会. 肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)
2)Kovacs G, et al. Eur Respir J. 34, 888(2009)
3)難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究班. 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(指定難病88). 難病情報センター.
http://www.nanbyou.or.jp/entry/307
4)Simonneau G, et al. Eur Respir J. 53, 1801913(2019)