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製品基本Q&A

製品基本Q&A

ニューモバックス®NP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)


製品情報

肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)から“Pneumo”を、ワクチン(vaccine)から“vax”をとり、“Pneumovax”と命名しました
“NP”は、従来のニューモバックス®NPから本剤への切り替えを明確にするため、販売名を変更する目的で付与しました。由来は“New Process”から“NP”としました。

<引用>
インタビューフォーム Ⅱ.名称に関する項目

本剤の電子添文では、以下のとおり記載されています。

4.効能又は効果
2歳以上で肺炎球菌による重篤疾患に罹患する危険が高い次のような個人及び患者
○脾摘患者における肺炎球菌による感染症の発症予防
○肺炎球菌による感染症の予防
1)鎌状赤血球疾患、あるいはその他の原因で脾機能不全である患者
2)心・呼吸器の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病、慢性髄液漏等の基礎疾患のある患者
3)高齢者
4)免疫抑制作用を有する治療が予定されている者で治療開始まで少なくとも14日以上の余裕のある患者   

<引用>
電子添文

PPSV23は、抗原として23種類の血清型特異的な肺炎球菌莢膜ポリサッカライドを含むワクチンです。肺炎球菌の莢膜ポリサッカライドは、抗原エピトープが繰り返し構造をとることから、B細胞抗原受容体を直接架橋することでB細胞を強く刺激し、抗体を産生することができます。B細胞の活性化にヘルパーT細胞を必要としないことから、T細胞非依存性と呼ばれます(1)。T細胞非依存性メカニズムによって抗体を誘発するため、ほとんどの肺炎球菌莢膜血清型に対する抗体応答は、免疫系が未熟な2歳未満の幼児では一般に乏しいか又は不安定です(2)。

T細胞非依存性の利点として、ヘルパーT細胞の活性化を待たずにB細胞がすぐに反応できるため、抗体による応答が迅速に起こるという点があります(3)。

(製品略称)
PPSV23:ニューモバックス®NP

<引用>
(1)川上和義 日本内科学会雑誌 2015;104(11):2307-2313
(2)電子添文
(3)桑田啓貴、岡橋暢夫(翻訳) 免疫系のしくみ 免疫学入門 第4版. 発行:化学同人

製造工程で鶏卵を使用しておらず、卵の成分を含有していません。また、ゼラチンも含有していません。

<添付の有無>
注射針は添付されていません。年齢や体型を考慮し、適切な注射針を選んでください。

<推奨するメーカー>
推奨する注射針のメーカー等はありません。

<針のゲージ>
注射針のゲージについて規定はありません。筋肉内投与用又は皮下投与用とされている注射針であれば使用可能と考えられます。

使用方法

本剤の電子添文には、以下のとおり記載されています。

6.用法及び用量
1回0.5mLを筋肉内又は皮下に注射する。

7.用法及び用量に関連する注意
7.1 同時接種
医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができる。

<引用>
電子添文

本剤の電子添文には、以下のとおり記載されています。

9.8 高齢者
接種にあたっては、予診等を十分に行い、被接種者の健康状態を観察すること。一般に生理機能が低下している。

<引用>
電子添文

本剤の電子添文には、以下のとおり記載されています。

2. 接種不適当者
2.1 2歳未満の者では、含有される莢膜型抗原の一部に対して十分応答しないことが知られており、また本剤の安全性も確立していないので投与しないこと。

<引用>
電子添文

[接種要注意者:過去に多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者]
[本剤の再接種を行う場合には、再接種の必要性を慎重に考慮した上で、前回接種から十分な接種間隔を確保すること]

3回以上の接種についても電子添文上制限はありません(*1)。
(*1)過去5年以内に、多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者では、本剤の接種により注射部位の疼痛、紅斑、硬結等の副反応が、初回接種よりも頻度が高く、程度が強く発現すると報告されています。本剤の再接種を行う場合には、再接種の必要性を慎重に考慮した上で、前回接種から十分な間隔を確保して行ってください(1)。

「肺炎球菌ワクチン再接種のガイダンス(改訂版)」では、23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)の再接種について以下のように記載されています(2)。
<委員会の考え方について>
・PPSV23の再接種による臨床的な有効性のエビデンスは明確になっていないが、症例によっては追加接種を繰り返すことを考慮してもよいと考える。
<安全性について>
・PPSV23 の再接種における安全性、忍容性に関しては、初回接種から 5 年以上経過していればほぼ問題なく接種できることが明らかとなっている。
・再接種時における局所の有害事象の頻度は高いが、許容できる範囲内と考えられる。
・海外においては、3 回、4 回目の接種についても、2 回目接種と同程度の安全性が確認されている。
<免疫原性について>
・免疫原性に関しては初回接種から時間の経過とともに血清型特異的 IgG および OPA(*2)は緩やかに低下する。
・初回接種から 7 年程度経過しても、ある程度の免疫原性は残存しており、接種前のレベルまでは低下していない。
・高齢者に対する PPSV23 の再接種により初回接種と同等の期間の抗体応答が誘導される。
・血清型特異的 IgG 値および OPA に関して、成人における感染予防の閾値は不明である。また、再接種における臨床的有効性に関する報告は現在までなされていない。
(*2) オプソニン活性(食細胞による貪食殺菌作用を高める働きを持つ機能的抗体の指標)

<引用>
(1) 電子添文
(2) 肺炎球菌ワクチン再接種のガイダンス(改訂版)  一般社団法人日本感染症学会 肺炎球菌ワクチン再接種問題検討委員会:感染症学雑誌 2017;91(4):543-552.

[接種要注意者:過去に、多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者]

本剤の再接種を行う場合には、再接種の必要性を慎重に考慮していただき、前回接種から十分な間隔を確保して行ってください(1)。
「肺炎球菌ワクチン再接種のガイダンス(改訂版)」では、初回接種から5年以上経過した方は再接種の対象者とされています(2)。
具体的なタイミング(間隔・暦日)は示されていません。

<引用>
(1)電子添文
(2)肺炎球菌ワクチン再接種のガイダンス(改訂版)  一般社団法人日本感染症学会 肺炎球菌ワクチン再接種問題検討委員会:感染症学雑誌 2017;91(4):543-552.

[接種要注意者:過去に多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者]

接種不適当者には該当しませんが、初回接種から5年以内の再接種はおすすめしていません。

5年以内の短期間に再接種した際、注射部位の疼痛、紅斑、硬結等の副反応が、初回接種よりも頻度が高く、程度が強く発現することが報告されていることから、対象者の再接種の必要性を慎重に考慮した上で、前回接種から十分な間隔を確保して接種を行ってください(1)。

肺炎球菌ワクチン再接種問題検討委員会による「肺炎球菌ワクチン再接種のガイダンス(改訂版)」では、23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)の再接種について、初回接種から5年以上経過した方は対象者とされています(2)。

<引用>
(1)電子添文
(2)肺炎球菌ワクチン再接種のガイダンス(改訂版)  一般社団法人日本感染症学会 肺炎球菌ワクチン再接種問題検討委員会:感染症学雑誌 2017;91(4):543-552.

本剤と国内で使用されているインフルエンザHAワクチンはいずれも不活化ワクチンですので、両ワクチン間の接種間隔に制限はありません(1)。

<電子添文>
7.1 同時接種
医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができる。
14.1.1 接種時
(3)本剤を他のワクチンと混合して接種しないこと。

<引用>
(1)厚生労働省 ワクチンの接種間隔の規定変更に関するお知らせ

[接種不適当者:本剤の成分によってアナフィラキシーを生じたことがあることが明らかな者]
[接種要注意者:本剤の成分に関してアレルギーを呈するおそれのある者]
[接種要注意者:予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた者及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者]

接種不適当者に該当しなければ接種可能です。
なお、本剤に、鶏卵の成分やゼラチン、抗生物質(ペニシリン、カナマイシン、エリスロマイシン)は含まれていません。

予防接種ガイドラインでは、日本小児アレルギー学会の見解(2022年12月)を引用して以下のように記載しています(1)。
・接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことが明らかにある者は接種不適当者である。
・気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、じんましん、アレルギー体質などだけでは、接種不適当者にはならないが、気管支喘息がコントロール不良である場合はリスクが高くなり、喘息も含めて、これらの疾患がコントロール不良である場合はワクチン副反応との鑑別が困難になる。したがって、接種前に良好なコントロールを得ることが重要である。
・ワクチンによる副反応歴、ワクチンに含まれている成分に対するアレルギー歴とこの成分と交差反応する物質に対するアレルギー歴を問診することで接種要注意者かどうかを判定する。
・接種液成分でアレルギーと関連した報告があるのは、ワクチン主成分、安定剤のゼラチン、防腐剤のチメロサール及び培養成分である培養液、鶏卵成分、抗菌薬である。
・同じ種類のワクチンでもメーカーによって成分量やその比率が異なるため、ワクチン添付文書でその内容を確認することが望まれる。
・要注意者は健康状態や体質を勘案し、診察及び接種適否の判断を慎重に行い、ワクチンの必要性、副反応、有用性について十分な説明を行い、同意を確実に得た上で、注意して接種する。過敏症状を起こし得るので、接種後約30分の院内観察や緊急時薬の準備など、発症時に速やかに対応できる体制を整えておくことが必要である。
・ワクチン接種による即時型アレルギー症状誘発を予知する確実な手段はない。保護者や接種医が強い不安を抱く場合には、要注意者への対応に準じ、慎重な観察と緊急時の体制を整える。接種の可否判定に困る際は、専門施設へ紹介する。

<引用>
(1)予防接種ガイドライン 2023年度版. 発行:公益財団法人予防接種リサーチセンター, 2023;136-138.

具体的な期間を示すガイドラインや指針はありません。
個々の患者さんの健康状態に応じて接種タイミングをご判断いただくことをおすすめします。

[免疫抑制剤等-併用注意]

免疫抑制的な治療を受けている場合、免疫機能が抑制されているため、本剤に対する免疫応答が低下する可能性があります。

<以下、予防接種全般の情報として、「予防接種ガイドライン(1)」の記載を一部抜粋>
・腎臓疾患を有する者(日本小児腎臓病学会の見解)
感染症に罹患しやすく重症化しやすいため原則的には積極的に予防接種は行うべきである。ただし、下記の状況では接種を控える。
プレドニゾロン2mg/kg/日以上、または体重10Kg以上の小児では20mg以上を内服中の場合の生ワクチンと不活化ワクチン

・悪性腫瘍の患者(日本小児血液・がん学会の見解)
原則として、完全寛解期に入って、細胞性免疫能が回復した時点で接種を行う。

・リウマチ・膠原病疾患の患者(日本小児リウマチ学会の見解)
生物学的製剤治療中における不活化ワクチン接種は抗体獲得が低下するとの報告もあるが、おおよそ正常で、副反応の発現も正常人に比して増加しない。また、基礎疾患の増悪はワクチン接種群と非接種群に有意差は無いと考える。したがって不活化ワクチンの接種は通常のスケジュールにしたがって接種することが推奨される。ただし、Rituximab使用中の抗体獲得は低下することがあり、可能であれば投与1週間以上前に接種することが望ましい。

<引用>
(1)予防接種ガイドライン2023年度版. 発行:予防接種リサーチセンター, 2023:128-131.

[免疫抑制剤等-併用注意]

免疫抑制的な作用を持つ製剤の投与を受けている者、特に長期あるいは大量投与を受けている者は免疫機能が低下していることがあり、本剤の効果が得られないおそれがあるので、併用に注意してください。

<治療開始前の接種の場合>
免疫抑制作用を有する治療が予定されている場合、接種対象者は治療開始まで少なくとも14日以上の余裕のある患者とされています(1)。


米国CDCのthe Pink Bookでは、がんの化学療法又は他の免疫抑制療法を予定している場合(例:ホジキン病患者、臓器・骨髄移植を受ける患者)、治療の2週間以上前に接種するべきであるとされています(2)。

<すでに治療中の場合>
がん治療中の接種のタイミング(休薬中にいつ接種すればいいか等)に関しては、確立された指針はありません。
接種は患者の体調を十分に勘案された上でご判断ください。

<引用>
(1)電子添文
(2)CDC The Pink Book: Course Textbook – 14th Edition (2021). CHAPTER 17:Pneumococcal Disease

電子添文上の制限はありませんので、接種は可能です。PCV接種によるワクチン血清型特異的なメモリーB細胞の誘導後、本剤接種によって共通する血清型に対する抗体のブースター効果が期待されるとして、PCV-PPSV23の連続接種が行われることがあります。

連続接種の推奨については、2つの「考え方」に示されています。

<65歳以上に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方>(1)
日本呼吸器学会・日本感染症学会による「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第4版)」では、本剤の定期接種を中心とした肺炎球菌ワクチンの接種方法とともに、連続接種の方法も示しています。

①PPSV23(*1)の再接種間隔
PPSV23接種後5年以上の間隔をおいてPPSV23を再接種することが可能である
②PCV13(*2)/PCV15(*3)接種後のPPSV23の接種間隔
PCV13/PCV15とPPSV23の接種間隔については、その安全性と両ワクチンに共通な血清型特異抗体のブースター効果が確認されている1年から4年以内に行うことが推奨される
③PPSV23接種後のPCV13/PCV15の接種間隔
PPSV23接種後のPCV13/PCV15接種について、PCV13/PCV15接種によって先行するPPSV23接種後以上の免疫応答は得られないものの、1年の間隔が保たれれば、その安全性には問題が無いことが確認されている

<6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方>(2)
日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会による「6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方 第2版」では、基礎疾患によってはPCV13/PCV15と本剤との連続接種が推奨されることが示されています。

(*1)23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン
(*2)13価肺炎球菌結合型ワクチン
(*3)15価肺炎球菌結合型ワクチン

<引用>
(1)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討WG委員会/日本感染症学会ワクチン委員会・合同委員会:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 (第4版 2023年3月24日)
(2)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討委員会/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会:6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方 (2023年9月11日)

安全性

本剤の電子添文には、以下のとおり記載されています。
8.重要な基本的注意
8.1 本剤は「予防接種実施規則」及び「定期接種実施要領」に準拠して使用すること。
8.2 被接種者について、接種前に必ず問診、検温及び診察(視診、聴診等)によって健康状態を調べること。
8.3 被接種者又はその保護者に、接種当日は過激な運動は避け、接種部位を清潔に保ち、また、接種後の健康監視に留意し、局所の異常反応や体調の変化、さらに高熱、痙攣等の異常な症状を呈した場合には速やかに医師の診察を受けるよう事前に知らせること。
8.4 過去 5 年以内に、多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者では、本剤の接種により注射部位の疼痛、紅斑、硬結等の副反応が、初回接種よりも頻度が高く、程度が強く発現すると報告されている。本剤の再接種 を行う場合には、再接種の必要性を慎重に考慮した上で、前回接種から十分な間隔を確保して行うこと。

<引用>
電子添文

国内で実施された臨床試験において、65例中49例(75.38%)96件の副反応が認められました。その主なものは注射部位疼痛47件(72.31%)、注射部位紅斑17件(26.15%)、注射部位腫脹15件(23.08%)、頭痛4件(6.15%)、腋窩痛3件(4.62%)、注射部位瘙痒感2件(3.08%)でした。(承認時)(1)(2)

国内で実施された使用成績調査の調査症例数1,116例中11例(0.99%)18件の副反応が認められました。主な副反応は注射部位腫脹等の注射部位局所反応5例(0.45%)8件でした。(調査期間 2006年11月~2009年8月)(2)

<引用>
(1)インタビューフォーム Ⅰ. 概要に関する項目 2. 製品の治療学的特性
(2)インタビューフォーム Ⅷ.安全性(使用上の注意等)に関する項目 8. 副作用 4)副反応・感染症の種類別発現頻度一覧(本剤使用成績調査終了時社内集計)

基本的に特別な治療はなく、通常の対症療法を行います(1)。
一般的な注射部位の副反応は特別な治療なく自然に消失しますが、上腕全体、あるいは前腕にまで及ぶ副反応の場合は、局所の保存的な処置(冷湿布、ステロイドホルモン剤や抗ヒスタミン剤の塗布など)を行います。

よくみられる副反応とその対策

<引用>
(1)渡辺博 著. わかりやすい予防接種 改訂第7版. 診断と治療社, 2023:129-130.

[接種要注意者:過去に、多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者]

ニューモバックス®NPでの報告ではありませんが、海外において12価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを初回接種後2年以内に再接種した成人では、強い局所反応(注射部位の疼痛、紅斑、硬結:アルサス様反応)(*)が生じたことが報告されています(1)。
文献中に「初回接種後の反応は、通常3日程度続く注射部位の疼痛であった。対照的に再接種後はすべての人が疼痛に加えて紅斑を伴う硬結を発現し、そのうち何人かは、やや長期間発現が持続した。」という記載があります。
(*)アルサス(Arthus)反応:Ⅲ型アレルギーの一種で、可溶性抗原と体内の抗体との抗原抗体結合物(免疫複合体)によって、組織障害が生じる反応。

誤って5年以内に接種してしまった場合は、接種してすぐに症状が現れなくても、十分な経過観察を行ってください。

電子添文 8.重要な基本的注意
過去5年以内に、多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者では、本剤の接種により注射部位の疼痛、紅斑、硬結等の副反応が、初回接種よりも頻度が高く、程度が強く発現すると報告されている(1)(2)。本剤の再接種を行う場合には、再接種の必要性を慎重に考慮した上で、前回接種から十分な間隔を確保して行うこと。

<引用>
(1)Borgono JM et al. Proc Soc Exp Biol Med. 1978; 157: 148-154.
(2)Musher DM et al. J Infect Dis. 2010; 201: 516-524

一般的にみられるワクチンの副反応としては、疼痛、発赤、腫脹などの局所反応や発熱、倦怠感などの全身症状がありますが、これらは免疫応答がおきる際の生体反応に伴うものとされています(1)。

予防接種ガイドライン(2)でも局所の発赤・腫脹、硬結や発熱がワクチン接種後の「通常みられる反応」とされています。

<引用>
(1)Causality assessment of an adverse event following immunization
Updated user manual for the revised WHO AEFI causality assessment classification (Second edition) (P.15 Vaccine product)
(2)予防接種ガイドライン2023年度版. 発行:公益財団法人予防接種リサーチセンター, 2023:64-65.

[接種要注意者:過去に、多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者]

ニューモバックス®NPでの報告ではありませんが、海外において12価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを初回接種後2年以内に再接種した成人では、注射部位において、初回接種時と比べて強い局所反応(アルサス様反応)が発現した(1)ことから、「多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者」は接種不適当者とされていました。

2009年に4学会(日本感染症学会、日本化学療法学会、日本呼吸器学会、日本環境感染学会)連名で「肺炎球菌ワクチンの添付文書記載事項一部改訂についての要望書」が厚生労働省に提出され、関連事項に関して検討された結果、「接種不適当者」の項から「過去に、含有莢膜型の組成のいかんにかかわらず多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者」「放射線、免疫抑制剤等で治療中の者又は接種後間もなくそのような治療を受ける者」が削除されました(2)。

米国でも発売当時は再接種は禁忌となっていましたが、再接種に関する知見の集積に伴い、1990年に再接種禁忌の対象から成人ハイリスク者が除外され、1998年の添付文書改訂で、再接種に関する記載が禁忌の項から削除されました。

<引用>
(1)Borgoño JM et al. Proc Soc Exp Biol Med. 1978;157(1):148-154.
(2)インタビューフォーム Ⅰ.概要に関する項目 1.開発の経緯

その他

本剤の電子添文には、以下のとおり記載されています。

14.1 薬剤接種時の注意
14.1.1 接種時
(1) 接種用器具は、ガンマ線等により滅菌されたディスポーザブル品を用いること。
(2) 冷蔵庫から取り出し室温になってから使用すること。
(3) 本剤を他のワクチンと混合して接種しないこと。
(4) 針を時計回りにシリンジにねじ込み、しっかり固定して、用法・用量に従い全量を投与すること。
(5) 注射針の先端が血管内に入っていないことを確かめること。
(6) 本剤は1人1回限りの使用とすること。

14.1.2 接種部位
(1)通常、上腕伸側とし、アルコールで消毒する。
(2)筋肉内注射にあたっては、組織・神経等への影響を避けるため下記の点に注意すること。 
・神経走行部位に接種しないこと。 
・注射針を刺入したとき、激痛の訴えや血液の逆流をみた場合は直ちに針を抜き、部位をかえて注射すること。

<引用>
電子添文

貯法:「2~8℃、凍結を避けること」です。

外箱開封後は遮光して保存してください。

<引用>
電子添文

室温放置された本剤の使用はおすすめできません。

接種液の貯蔵は、生物学的製剤基準の定めるところによるほか、所定の温度が保たれていることを温度計によって確認できる冷蔵庫等を使用する方法によることとされています(1)。

本剤の貯法は、「2~8℃、凍結を避けること」です。

<引用>
(1)「定期接種実施要領」第1.総論 6 接種液

[接種要注意者:過去に、多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者]

<国内データ>
慢性肺疾患患者16例を対象に23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)(*)を1~3回接種した時の安全性および免疫原性を検討した試験の結果が報告されています(1)。
各接種回の前後にて、4種の血清型(6B、14、19F、23F)に対する特異的なIgG抗体価およびオプソニン活性が評価されました。
その結果、6B、14、19F、23F 型のIgG抗体価、14、19F、23F 型のオプソニン活性は3回目接種前と比べて3回目接種後に有意(いずれもP<0.01、Wilcoxon符号付順位和検定)に上昇しました。
注射部位の疼痛 および 腫脹/発赤の発現率は、3回目接種群では、初回接種群と比べて有意(p<0.05 および p<0.01、Student’s t検定)に上昇しました。2回目接種群と3回目接種群の間に有意な差は認められませんでした。いずれの接種群でも重篤な有害事象の発現は認められませんでした。

(*) 国内ではニューモバックス®(旧製剤)及びニューモバックス®NP(現行製剤)が該当します。製法変更等に係る承認申請を経て、2006年から現行製剤が販売され、旧製剤は販売中止となりました。両製剤を比較した国内臨床試験では、抗体価上昇の観点から同等の抗原性を示すワクチンであることが確認されています(2) 。
なお、米国では1983年からPNEUMOVAX®23(PPSV23)が販売されており、2004年に製法変更の承認を受け現行製剤となっています。

<引用>
(1)Ohshima N et al. Hum Vaccin Immunother. 2020;16(9):2285-2291.
(2)審査報告書, IV 総合評価

PCV15(*1)の成人への承認を受け、以下の指針が公表されています。

<65歳以上に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方>
呼吸器学会・感染症学会・ワクチン学会より、「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第4版)」が公表され、「定期接種対象者が、定期接種によるPPSV23(*2)の接種を受けられるように接種スケジュールを決定することを推奨する」としています(1)。

<6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方>
呼吸器学会・感染症学会・ワクチン学会より「6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方 第2版」が公表されています(2)。
ハイリスクとして、慢性心疾患、慢性肺疾患、慢性腎疾患、慢性肝疾患、糖尿病、自己免疫性疾患、悪性腫瘍・臓器移植後、免疫不全(主に小児)別にワクチンの推奨の要点などがまとめられています。

(製品略称)
(*1)沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン
(*2)23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン

<引用>
(1)日本呼吸器学会 感染症・結核学術部会ワクチンWG/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 (第4版 2023年3月24日)
(2)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討委員会/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会:6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方 第2版 (2023年9月11日)

国内で本剤を用い、皮下注射と筋肉内注射での抗体価や副反応についての違いを評価した臨床試験データはありません。

海外における23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(*)の検討では、高齢者254例を対象とした皮下注射と筋肉内注射の無作為化観察者盲検比較試験が実施されており、検討された3つの血清型(3、4、6B)の抗体上昇に有意差はありませんでした。

局所の副反応としての発赤、腫脹/圧痛は皮下注射が筋肉内注射よりも有意(いずれも p<=0.005、Fisherの正確確率検定)に多く、その傾向は女性に強くみられました(OR=2.99 95%CI[1.10;8.70])。また、全身性の副反応(発熱、悪寒、筋痛/頭痛、疲労感、感冒様症状、食欲減退、悪心、嘔吐、下痢、発疹)については、両群間に有意差は認められませんでした(1)。

(*) 国内ではニューモバックス®(旧製剤)及びニューモバックス®NP(現行製剤)が該当します。製法変更等に係る承認申請を経て、2006年から現行製剤が販売され、旧製剤は販売中止となりました。両製剤を比較した国内臨床試験では、抗体価上昇の観点から同等の抗原性を示すワクチンであることが確認されています(2) 。

<引用>
(1)Cook IF et al. Vaccine. 2007;25(25):4767-74.
(2)審査報告書, IV 総合評価

効果について明確な持続期間は確立されていません。
また、終生免疫ではありません。

日本感染症学会肺炎球菌ワクチン再接種問題検討委員会「肺炎球菌ワクチン再接種のガイダンス(改訂版)」(1)には、23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンについて、以下のように記載されています。
免疫原性について 
・免疫原性に関しては初回接種から時間の経過とともに血清型特異的IgGおよびOPA(*)は緩やかに低下する。
・初回接種から7年程度経過しても、ある程度の免疫原性は残存しており、接種前のレベルまでは低下していない。
接種対象者
・初回接種から5年以上経過した者は再接種の対象とする (注釈 なお、無脾、脾機能不全の小児及び成人に対して初回接種から5年以上経過している場合接種対象者に含める)。

(*)オプソニン活性(食細胞による貪食殺菌作用を高める働きを持つ機能的抗体の指標)

<引用>
(1)肺炎球菌ワクチン再接種のガイダンス(改訂版)  一般社団法人日本感染症学会 肺炎球菌ワクチン再接種問題検討委員会:感染症学雑誌 2017;91(4):543-552.

国内で商業的に測定を行っている検査機関はありませんが、一部の研究機関で実施されています(1)。

<引用>
(1)「肺炎球菌特異抗体測定法とその役割」 国立感染症研究所 IASR 34(3)(No.397), Mar 2013

[接種要注意者:過去に、多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者]

ガイドライン等において、本剤の再接種を行うべきか、PCV[肺炎球菌結合型ワクチン:PCV13(*1)、PCV15(*2)]との連続接種を行うべきか、といった情報はありません。
3つのワクチンは、含有する血清型の数や作用機序が異なります。
どのワクチンを接種すべきかは、個々にご判断ください。

電子添文
過去5年以内に、多価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある者では、本剤の接種により注射部位の疼痛、紅斑、硬結等の副反応が、初回接種よりも頻度が高く、程度が強く発現すると報告されている。本剤の再接種を行う場合には、再接種の必要性を慎重に考慮した上で、前回接種から十分な間隔を確保して行うこと。

日本呼吸器学会/感染症学会による「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第4版)」(1)では、PPSV23(*3)の既接種者に対しては、「PPSV23接種後5年以上の間隔をおいてPPSV23の再接種、もしくはPPSV23接種後1年以上の間隔をおいて PCV13/PCV15の接種をすることも考えられる。」とされています。
どちらかを推奨しているというわけではありません。

(*1)13価肺炎球菌結合型ワクチン
(*2)15価肺炎球菌結合型ワクチン
(*3)23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン

<引用>
(1)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討WG委員会/日本感染症学会ワクチン委員会・合同委員会:65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方 (第4版 2023年3月24日)

23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(*)発売当初は、脾臓摘出患者も自由診療扱いでした。

発売後に「小児脾臓研究会」「肺炎球菌ワクチンの臨床適応に関する研究班」からの意見・要望もあり、1992年に2歳以上の脾臓摘出患者における肺炎球菌による感染症の発症予防が保険適応になりました。

脾臓摘出後は、健康人に比べ、食菌能低下、オプソニン活性の低下、抗体生産能の減弱により、感染症にかかりやすく重篤化しやすいとされています(脾摘後重症感染症: OPSI)。
脾臓摘出後の感染症の起因菌として、肺炎球菌の頻度が高いことが報告されています(1)。

(*) 国内ではニューモバックス®(旧製剤)及びニューモバックス®NP(現行製剤)が該当します。製法変更等に係る承認申請を経て、2006年から現行製剤が販売され、旧製剤は販売中止となりました。両製剤を比較した国内臨床試験では、抗体価上昇の観点から同等の抗原性を示すワクチンであることが確認されています(2)

<引用>
(1)Holdsworth RJ et al. Br J Surg. 1991;78(9):1031-1038.
(2)審査報告書, IV 総合評価

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