婦人科検体の取り扱いにおけるポイント

病理精度管理マテリアル MSI検査 婦人科検体の取り扱いにおけるポイント

Precision Medicineの時代におけるMSI検査

Precision Medicineを進展させていくには質の高い精度管理が重要である

患者の遺伝子情報等をもとに最適な治療を行うPrecision Medicineが進展するなかで、質の高い検査が求められている。2018年12月には免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブが「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」に対して承認された。MSI-High検出にはコンパニオン診断薬「MSI検査キット(FALCO)」が用いられる。またがん遺伝子変異解析プログラムも承認されており、MSIや各種遺伝子異常およびがんゲノムプロファイリングの検出が実施され、がん患者に応じたPrecision Medicineが進んでいくと思われる。

当院におけるMSI検査の流れ

当院におけるMSI検査の流れ

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Check&Instruction

臨床 Point1|摘出した検体はすぐに固定しなくてはいけない?

手術で摘出した検体は、速やかに4℃下で保存し、1時間以内、遅くとも3時間以内に固定を行うことが望ましい。摘出後30分以上、室温におかない

内視鏡下で切除した組織などの小さい組織や生検組織は速やかに固定する。

臨床 Point2|大きな検体を固定する際の注意点は?

固定液は1時間あたり1mm浸透し、10mm以上は進まない。そのため直径が5cm以上の検体は3cm以内で割を入れて固定する。固定時間が短いと、検体の中央は固定不足(生の状態)となり、正確な病理診断ができない。大型腫瘍は病理医とともに切り出す。

大きな検体を固定する際の注意点

臨床 Point3|適切な固定液の量は?

ホルマリン固定時の固定液は、固定不良を避けるため、組織量の10倍以上の量にすることが望ましい。固定液を入れる容器は、生検組織などの小さい検体は小瓶でも良いが、手術検体は全体がホルマリン液につかるよう大きな容器を準備し、直径5cm以上の検体は割を入れてゴム板に張り付けて固定するとよい。

適切な固定液の量


臨床病理Point4|適切な固定時間は?

固定時間は6~48時間とし、固定液は中性緩衝ホルマリン10%溶液を使用する(日本病理学会「ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程」)。病理医が不在の施設では、週末をはさむ場合など固定時間が長くなるケースもみられるが、ホルマリンの過固定は核酸の断片化や核酸塩基の化学修飾が起こるため、やはり6〜48時間の固定時間が望ましい。

固定時間を延ばしてみたら

PCR法における測定値(Ct値)を用いて核酸の品質が検討された。ホルマリン固定を7日間、14日間した場合は、核酸の品質が基準値(赤線)に達していない

ホルマリン固定時間延⻑が検体品質およびNGS⽤ライブラリー調製に与える影響

ホルマリン固定時間延⻑が検体品質およびNGS⽤ライブラリー調製に与える影響
  • 単⼀施設において、切除後のホルマリン固定時間(1、2、3、7および14⽇)の影響を確認するために精度管理⽤に作製された⼤腸癌⼿術検体を⽤いて検討した。
  • 市販のFFPE組織⽤DNA抽出キット(キアゲン社)を⽤いてDNA抽出を⾏ったのちに、リアルタイムPCR法を⽤いたDNA品質の確認を⾏い、品質基準を満たした検体を対象に、MiSeqシステム(イルミナ社)を⽤いたアンプリコンシーケンス(TruSeq Amplicon Cancer Panel;イルミナ社)のライブラリー調製を⾏った。検量線を利⽤した指標が推奨されている。

日本病理学会.ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程.p23,2018.より引用

臨床Point5|保存期間の長い検体でも検査可能か?

10年前の検体を使用する場合は、検査不可能な場合があります。


FFPEブロック保管期間がDNA品質に与える影響

高品質検体の割合は、経年的に低下する一方、低品質検体の割合は増加した(左図)。また解析の成否についても同様の傾向が認められた(右図)。

高品質検体と低品質検体の割合、解析の成否

日本病理学会.ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程.P31-32,2018.より引用

  • GI-SCREEN試験参加20施設から提出された診療時に作製された消化器癌のFFPE検体(生検および手術検体)のうちパネル解析が実施された2668検体を対象に調査した。

FFPE検体由来DNAの一次PCR収量及びQ-valueは、パラフィンブロックの保管期間と一定の相関を示した。FFPE検体の長期保管が、DNAの品質不良を引き起こすと考えられた。

FFPE検体由来DNAの一次PCR収量及びQ-value

日本病理学会.ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程.P31-32,2018.より引用

  • TOP-GEARプロジェクト第1期前半において実際にNCCオンコパネル解析を行った131症例のFFPEがん組織検体について、パラフィンブロックの保管期間の影響を検討した。
  • これらの情報が得られた検体について、一次PCR収量およびQ-valueと比較した。一次PCR収量については、SureSelect XT Reagents単独でNGSライブラリーを調製した検体に限定した。

検体品質の保持

とくに切り出しから固定までの時間、処理といったプロセスが重要で、正確な検査結果を得るうえで欠かせない

検体品質の保持

婦人科癌におけるMSI検査の意義

MSI-Highの発現頻度は癌種によって異なり、消化管癌や婦人科癌で比較的頻度が高いことが知られている。32種類の癌種(患者の合計12,019例)を対象とした次世代シーケンサー(NGS)によるdMMRの解析では、子宮内膜癌、胃腺癌、小腸癌、結腸・直腸腺癌、子宮頸癌の順に発現頻度が高いことが示された1)図1)。
類内膜癌(endometrial carcinoma)は子宮体癌の8割を占め、組織型として卵巣や子宮頸部にも類内膜癌が発生することから、婦人科癌におけるMSI検査を行う意義は大きいといえる。
MSI検査は従来から遺伝性大腸癌の1つであるリンチ症候群のスクリーニングに用いられてきたが、当院でも大腸癌や婦人科癌を中心にMSI検査を開始している。2019年9月時点での検査数は178件である(図2)。

図1 癌種別のMSI-High固形癌の割合(海外データ)

癌種別のMSI-High固形癌*の割合(海外データ)

対象・方法:32の癌腫(サブタイプ)の患者12,019例を対象とした次世代シーケンサー(NGS)による解析により、MMR欠損癌の患者の割合を特定できた24の癌種別に評価した。*MMR欠損癌

1) Le DT, et al. Science. 2017;357:409-13.

図2 京都大学におけるMSI検査実施件数

京都大学におけるMSI検査実施件数

(南口早智子先生提供)

今後の展望

日本病理学会では2021年から分子病理専門医の認定を開始し、がんゲノム医療の実現を目指している。今後はPrecision Medicineの流れに対応して、各施設間の連携に向けた中核拠点病院・拠点病院・連携病院の整備も重要である。

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