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CTEPHの診断基準

CTEPHの診断基準

厚生労働省はCTEPHの診断基準を表のように定めています。

表 CTEPHの診断基準

CTEPHの診断には、右心カテーテル検査による肺高血圧の診断とともに、他の肺高血圧をきたす疾患の除外診断が必要です。

(1)検査所見

① 右心カテーテル検査で
1. 肺動脈圧の上昇(安静時の肺動脈平均圧が25mmHg以上)
2. 肺動脈楔入圧(左心房圧)が正常(15mmHg以下)

② 肺換気・血流シンチグラム所見
換気分布に異常のない区域性血流分布欠損(segmental defects)が、血栓溶解療法または抗凝固療法施行後も6ヵ月以上不変あるいは不変と推測できる。推測の場合には、6ヵ月後に不変の確認が必要。

③ 肺動脈造影所見
慢性化した血栓による変化として、1.pouch defects、2.webs and bands、3.intimal irregularities、4.abrupt narrowing、5.complete obstruction の5つのうち少なくとも1つが証明される。

④ 胸部造影CT所見
慢性化した血栓による変化として、1.mural defects、2.webs and bands、3.intimal irregularities、4.abrupt narrowing、5.complete obstruction の5つのうち少なくとも1つが証明される。

(2)参考とすべき検査所見

① 心エコー
1. 右室拡大、中隔の扁平化
2. 心ドプラ法にて肺高血圧に特徴的なパターンまたは高い右室収縮期圧の所見(三尖弁収縮期圧較差40mmHg以上)
3. TAPSE(三尖弁輪収縮期偏位)の低下

② 動脈血液ガス所見
1. 低炭酸ガス血症を伴う低酸素血症(PaCO2≦35Torr、PaO2≦70Torr)
2. AaDO2の開大(AaDO2≧30Torr)

③ 胸部X線写真
1. 肺門部肺動脈陰影の拡大(左第Ⅱ弓の突出または右肺動脈下行枝の拡大:最大径18mm以上)
2. 心陰影の拡大(CTR≧50%)
3. 肺野血管陰影の局所的な差(左右又は上下肺野)

④ 心電図
1. 右軸偏位および右房負荷
2. V1でのR≧5mmまたはR/S>1、V5でのS≧7mmまたはR/S≦1

(3)主要症状及び臨床所見

① 労作時の息切れ

② 急性例にみられる臨床症状(突然の呼吸困難、胸痛、失神など)が以前に少なくとも1回以上認められている。

③ 下肢深部静脈血栓症を疑わせる臨床症状(下肢の腫脹および疼痛)が以前に少なくとも1回以上認められている。

④ 肺野にて肺血管性雑音が聴取される。

⑤ 胸部聴診上、肺高血圧症を示唆する聴診所見の異常(Ⅱp[Ⅱ]音の亢進、Ⅲ/Ⅳ音、肺動脈弁逆流音、三尖弁逆流音のうち、少なくとも1つ)がある。

(4)除外すべき疾患

以下の肺高血圧症を呈する病態は、慢性血栓塞栓性肺高血圧症ではなく、肺高血圧ひいては右室肥大・慢性肺性心を招来しうるので、これらを除外すること。

1. 特発性又は遺伝性肺動脈性肺高血圧症
2. 膠原病に伴う肺動脈性肺高血圧症
3. 先天性シャント性心疾患に伴う肺動脈性肺高血圧症
4. 門脈圧亢進症に伴う肺動脈性肺高血圧症
5. HIV感染に伴う肺動脈性肺高血圧症
6. 薬剤/毒物に伴う肺動脈性肺高血圧症
7. 肺静脈閉塞性疾患、肺毛細血管腫症
8. 新生児遷延性肺高血圧症
9. 左心性心疾患に伴う肺高血圧症
10. 呼吸器疾患及び/又は低酸素血症に伴う肺高血圧症
11. その他の肺高血圧症(サルコイドーシス、ランゲルハンス細胞組織球症、リンパ脈管筋腫症、大動脈炎症候群、肺血管の先天性異常、肺動脈原発肉腫、肺血管の外圧迫などによる二次的肺高血圧症)

厚生労働省. 平成27年1月1日施行の指定難病(告示番号1~110).
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000062437.html. (2024年2月閲覧)より作成


CTEPH(慢性血栓塞栓性肺高血圧症)の診断