小児肺炎球菌感染症に関する疾病負担
小児肺炎球菌感染症に関する疾病負担
肺炎球菌感染症とは
肺炎球菌は、乳幼児の鼻咽頭で高頻度に検出されます。そして、小児や成人で中耳炎、副鼻腔炎、菌血症をともなわない肺炎などの「非侵襲性感染症」を引き起こします。また、肺炎球菌は髄膜炎や菌血症をともなう肺炎などの「侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)」も引き起こします。
なお、IPDとは通常無菌的な検体から肺炎球菌が分離された疾患を指します。
日本の小児において肺炎球菌が原因となる頻度は、中耳炎が31.7% 2,4)、肺炎が12.7% 2,5) 、細菌性髄膜炎が19.5%2,3)、敗血症・菌血症が72% 2,6)と報告されています。
1)IASR Vol. 44 p1-2: 2023年1月号.
2)小児呼吸器感染症診療ガイドライン作成委員会:小児呼吸器感染症診療ガイドライン 2017: 245、2017.
3)砂川 慶ほか. 感染症誌. 2008; 82(3): 187-197.
4)神谷 齊ほか. 感染症誌. 2007; 81(1): 59-66.
5)石和田稔彦. 感染症誌. 1996; 70(5): 470-478.
6)西村龍夫ほか. 日児誌. 2008; 112(10): 1534-1542.
【国内データ】小児肺炎球菌性髄膜炎および小児肺炎球菌性菌血症による疾病負担
2013年の報告では、小児肺炎球菌性髄膜炎による致死率は、5歳未満の小児髄膜炎患者で15% 1) 、別の報告では、5歳未満の小児髄膜炎患者の入院後1カ月以内で14.3% 2)と報告されています。
小児肺炎球菌性髄膜炎による後遺症発現率は、5歳未満の小児髄膜炎患者の入院後1カ月以内で9.5% 2)と報告されています。
また、平均入院日数は、小児肺炎球菌性髄膜炎で13.8~31.9日3) 、小児肺炎球菌性菌血症で7.2~11.5日3) 、通院回数は、小児肺炎球菌性髄膜炎で1.5~8.1回/エピソード3) 、小児肺炎球菌性菌血症で1.4~2.9回/エピソード3) 、子供の入院日数と外来通院回数を合計して推定した入院時の保護者の生産性損失は、小児肺炎球菌性髄膜炎で14.6~22.7日/エピソード3) 、小児肺炎球菌性菌血症で7.9~11.5日/エピソード3)と報告されています。
※ 小児の入院日数と外来通院回数(通院1回: 0.5日損失)を合計して推定される労働損失日数に相当した4)
1)研究代表者: 庵原俊昭(国立病院機構三重病院)「Hib、肺炎球菌、ロタウイルス、HPV等ワクチンの有効性、安全性並びにワクチン副反応に関する基礎的・臨床的研究」平成25 年度研究報告書「小児細菌性髄膜炎および侵襲性感染症調査」に関する研究(全国調査結果).
2)Iwata S, et al. J Infect Chemother. 2021; 27(4): 604-612.【利益相反】MSDに研究助成を受けた著者が含まれる。
3)Igarashi A, et al. J Mark Access Health Policy. 2021; 10(1): 2010956.
4)Shiragami M, et al. Infect Dis Ther. 2014; 4(1): 93-112. 【利益相反】MSDに助成を受けた著者が含まれる。
小児細菌性髄膜炎(肺炎球菌性髄膜炎を含む)の症状
「細菌性髄膜炎診療ガイドライン」作成委員会: 細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014: 44, 2015
【海外データ:米国】肺炎球菌の血清型別の侵襲性
肺炎球菌の血清型別侵襲能力推定値(7歳未満の小児でIPDを引き起こす最も頻度の高い24の血清型について)
米国の7歳未満の小児で、IPDを引き起こす頻度の高い24血清型における侵襲性の違いを示したデータをご紹介します。
本研究では、各血清型によるIPD罹患率を肺炎球菌の保菌率で割り、侵襲性(Invasive capacity)を算出しています。
バクニュバンス®固有の血清型である血清型22Fと33Fは、小児でIPDを引き起こす頻度の高い24血清型の中で、それぞれ6番目と2番目に高い侵襲性が示されました。
対象と方法 :米国マサチューセッツ州全体の7歳未満の小児IPDサーベイランスデータ(2003~2004年、2006~2007年、2008~2009年)においてIPD患者から採取した206の肺炎球菌分離株をもとに、血清型別のIPD罹患率を求め、米国マサチューセッツ州の16のコミュニティデータ(2003~2004年)、米国マサチューセッツ州の8つのコミュニティデータ(2006~2007年、2008~2009年)において鼻咽頭から採取された806の肺炎球菌分離株による同年齢の同一血清型の肺炎球菌保有率で除し、IPDにおける血清型別侵襲能力推定値を算出した。
Limitation:7歳以上の小児のIPD患者数と分布が制限されているため、年齢と侵襲能の関係をさらに評価するためには、より大きなデータセットが必要である。
Yildirim I, et al. Vaccine. 2010; 29(2): 283-288. より改変