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ロタウイルス胃腸炎の特徴

ロタウイルス胃腸炎の特徴

(参考)ロタウイルスについて

ロタウイルス胃腸炎の感染力について

  • ロタウイルスは感染力が強く、わが国でも5歳未満の乳幼児のほとんどがロタウイルスに感染したという報告があります1
  • 一般外来における小児のロタウイルスによる胃腸炎の発症患者数は、ノロウイルス胃腸炎についで多いことが示されました(図)。

図:日本における5歳未満の急性胃腸炎発症患者において
ウイルスが検出された患者数(2009~2013)2

急性胃腸炎発症患者における下痢症ウイルス検出患者

ロタウイルス胃腸炎による疾病負担

  • ロタウイルス胃腸炎は、罹患したお子さんだけでなく、保護者や家族にとっても負担が大きい疾患です。
  • 年間28.5人が死亡、85.5人が脳炎・脳症を合併3
    国内データ :ロタウイルス感染症による突然死、脳炎・脳症
    ※ロタウイルスワクチン発売前後含む
  • 入院は15〜43人に1人4~7
    国内データ :5歳までの推定人数
    ※ロタウイルスワクチン発売前
  • 外来受診はおよそ2人に1人8
    国内データ :小学校入学までの推定人数
    ※ロタウイルスワクチン発売前
  • 入院の場合:117,208円
    経静脈補液の場合:61,044円
    外来受診の場合:46,823円9
    国内データ :ロタウイルス胃腸炎発生時の生産性損失
    ※ロタウイルスワクチン発売前

1. 谷口孝喜. 小児感染免疫 2009;21(2):9-36.
2. Thongprachum A et al. J Med Virol 2015 ; 87(7) : 1141-1148.
3. Hattori F et al. Pediatr Int 2018 ; 60(3) : 259-263.
4. Nakagomi T et al. J Infect Dis 2005 ; 192(S1) : S106-110.
5. Kamiya H et al. J Infect Dis 2009 ; 200(S1) : S140-146.
6. Ito H et al. Vaccine 2011 ; 29(44) : 7807-7810.
7. Kamiya H et al. Jpn J Infect Dis 2011 ; 64(6) : 482-487.
8. Yokoo M et al. Jpn J Infect Dis 2004 ; 57(4) : 166-171.
9. 池田俊也 他. 厚生労働省科学研究費補助金新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業分担研究報告書(平成26年度)

ロタウイルスの感染経路と感染の特徴

感染経路は主に糞口感染1

  • 1000億個のウイルスが1gの糞便中に存在します2
  • 接触・飛沫感染の可能性も考えられます1

感染力が強い

  • 1~10個のウイルスが口に入るだけで感染が成立するとも言われています3

安定したウイルスである1

  • 器物やテーブルの上でも最低数時間は感染力を保持でき4、おもちゃからの検出例もあります2
  • 石鹸や一般的に用いられている除菌剤に対し比較的耐性があります2

ウイルスの伝播は、症状が出る前に起こる可能性もあり、また症状が治まってもウイルスが持続的に排出されていることもある5

  • 発症後4~7日は糞便中にウイルスを大量に排出すると言われています4
  • ある試験 (n=37)では、30%の小児が下痢症状が始まってから25~57日後にもウイルスを排出していたと報告されています6

1. Fischer TK et al. Vaccine 2004; 22S: S49-54.
2. Dennehy PH. Pediatr Infect Dis J 2000; 19: S103-105.
3. 谷口孝喜. 小児科診療 2007; 70: 2283-2287.
4. 中田修二. 小児科診療 2007; 70: 2271-2276.
5. Raebel MA, Ou BS. Pharmacotherapy 1999; 19: 1279-1295.
6. Richardson S et al. Lancet 1998; 351: 1844-184

ロタウイルス感染症は冬から春にかけて流行する

  • ロタウイルス感染症には季節性があります。
  • ロタウイルス感染症は12~5月の時期に多く、2月から4月にかけてピークがみられます7

図:ロタウイルスの検出報告数

ロタウイルスの検出報告数

7. 中田修二. 小児科診療 2007; 70: 2271-2276.

病院、託児所、保育園におけるRV感染の流行

院内感染

  • ヨーロッパ主要6カ国では、小児院内感染による下痢症の31~87%はRVが原因でした8
  • 入院を数日単位で延長させ、再入院が必要な場合があります8
  • 発生により病棟閉鎖することもあります9

託児所・保育園

  • ヨーロッパの託児所や保育園に通う5歳未満の子どもは、同年齢の一般人口における推定発生率より高い確率でロタウイルス胃腸炎を発症していました10

感染力の強いロタウイルス感染の流行には注意が必要です

8. Gleizes O et al. Pediatr Infect Dis J 2006;25(S1): S12~21.
9. Widdowson MA et al. Infect Control Hosp Epidemiol, 2002; 23: 665-670.
10. Huppertz H-I et al. Pediatr Infect Dis J 2008; 27(S1): S11~19.

ロタウイルス感染症の症状

  • 典型例では、感染から遅くとも2日目までに症状が出そろいます1
  • 一般的に1週間くらいの経過で回復します1

症状

  • 激しい下痢2 (白色水様便; とぎ汁様の便が多くみられます)
  • 激しい嘔吐3
  • 高熱3
  • 脱水2

まれに起こる合併症状

  • 激しい高張性脱水症2,4
  • 痙攣4
  • 脳炎2,4

1. 中田修二. 小児科診療 2007; 70: 2271-2276.
2. Raebel MA, Ou BS. Pharmacotherapy 1999;19:1279-1295.
3. Raebel MA, Ou BS. Pharmacotherapy 1999;19:1279-1295.
4. 河島尚志ほか. 小児科診療 2007; 70: 2277-2281.

ロタウイルス性胃腸炎の治療

ウイルス性胃腸炎では、抗ウイルス薬などの特殊な治療法はなく対症療法が中心となります1

  • 基本的には水分補給と電解質の補正が中心となります1
  • これに食事療法、薬物療法(整腸剤)を組み合わせます1
    • 軽症~中等症: 経口補液と食事療法1,2
    • 重症: 点滴による補液1,2
  • 止痢薬はウイルスを腸管に停留させることになるため一般的には用いません2

1. 佐藤吉壮. 化学療法の領域 2007; 23(S1): 17-24.
2. 牛島廣治ほか. 別冊日本臨床 2009; 12: 49-53.

ロタウイルスは車輪状の、分節したRNAをもつウイルスである

ロタウイルスは車輪状で、外層と内層のカプシドおよび内部のコア蛋白からなる粒子です。

このうち、外層表面のVP7と外層表面の突起状のVP4はそれぞれGおよびP型を決定する蛋白であり、ウイルスの中和に関係する主な抗原となります。

図:ロタウイルス

ロタウイルス

ロタウイルス感染症は主に流行する5種類の遺伝子型(血清型)で91.2%を占めていました。

ロタウイルス胃腸炎の原因となるウイルスの遺伝子型はG1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]、およびG9P[8]の5つで、全体の91.2%を占めていました。

図:ロタウイルス遺伝子型(血清型)の世界的な分布【海外データ】

ロタウイルス遺伝子型の世界分布(海外データ)

ロタウイルスの流行する遺伝子型は年によって変動します。

図:日本におけるロタウイルス遺伝子型(血清型)の割合

日本におけるロタウイルス遺伝子型(血清型)の流行変動

流行する遺伝子型は、年によって変動することが報告されており、2020~2021年ではG1、G2、G3、G4、G9の遺伝子型が確認されました。

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