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開発の経緯

開発の経緯

1998年に柳沢正史、櫻井武らによって同定されたオレキシン1)2)は、覚醒/睡眠を調整する重要な神経伝達物質です3)。オレキシン産生ニューロンは、視床下部に局在し、脳内の覚醒に重要な働きをしている神経核に密に投射し、これらの神経核を活性化させることで覚醒を維持しています3)。また、動物実験では、摂食行動、報酬系、情動及び自律神経系の制御等への関与も示唆されています3)

Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAでは、High Throughput Screening(HTS)により、オレキシン1受容体(OX1R)及びオレキシン2受容体(OX2R)に拮抗作用を持つジアゼパン誘導体を2005年に見出しました。この誘導体をリード化合物として、代謝安定性に優れ、オレキシン受容体に対し高い選択性及び結合親和性を持つスボレキサントを合成しました。

従来の睡眠薬は、GABAAの受容体のモデュレーターとして睡眠/鎮静系に作用、又はメラトニン受容体の作動薬として、サーカディアンリズムに作用するのに対し、ベルソムラ®錠(一般名:スボレキサント)は、2種のオレキシン受容体(OX1R 及びOX2R)の選択的拮抗薬として作用し、オレキシンニューロンの神経支配を受けている覚醒を促す神経核に作用することで、睡眠を誘導する世界初のオレキシン受容体拮抗薬です。ベルソムラ®錠は、2014年9月に「不眠症」の効能・効果で承認を取得しました。

1)Sakurai T et al. Cell 1998; 92(4) : 573-585.
2)de Lecea L et al. Proc Natl Acad Sci USA 1998; 95(1) : 322-327.
3)Gotter AL et al. Pharmacol Rev. 2012;64(3):389-420.

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