禁忌を含む使用上の注意
禁忌を含む使用上の注意
「禁忌を含む使用上の注意」の改訂には十分ご留意ください。
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
(1) 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
(2) CYP3Aを強く阻害する薬剤(イトラコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル、ネルフィナビル)を投与中の患者〔「相互作用」の項参照〕
使用上の注意
1. 慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(1) | ナルコレプシー又はカタプレキシーのある患者〔症状を悪化させるおそれがある。〕 |
(2) | 高齢者〔「高齢者への投与」、「薬物動態」の7.(1)の項参照〕 |
(3) | 重度の肝機能障害のある患者〔スボレキサントの血漿中濃度を上昇させるおそれがある。(「薬物動態」の項参照)〕 |
(4) | 重度の呼吸機能障害を有する患者〔これらの患者に対する使用経験がなく、安全性は確立していない。(「臨床成績」の項参照)〕 |
(5) | 脳に器質的障害のある患者〔作用が強くあらわれるおそれがある。〕 |
2. 重要な基本的注意
(1) | 本剤の影響が服用の翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。〔「臨床成績」の項参照〕 |
(2) | 症状が改善した場合は、本剤の投与継続の要否について検討し、本剤を漫然と投与しないよう注意すること。 |
3. 相互作用
スボレキサントは主に薬物代謝酵素CYP3Aによって代謝される。 また、弱いP糖蛋白(腸管)への阻害作用を有する。
〔併用禁忌〕(併用しないこと)
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
CYP3Aを強く阻害する薬剤 イトラコナゾール:イトリゾール ポサコナゾール:ノクサフィル ボリコナゾール:ブイフェンド クラリスロマイシン:クラリシッド リトナビル:ノービア ネルフィナビル:ビラセプト | 本剤の作用を著しく増強させるおそれがあるため、併用しないこと。 | スボレキサントの代謝酵素であるCYP3Aを強く阻害し、スボレキサントの血漿中濃度を顕著に上昇させる。〔「薬物動態」の項参照〕 |
〔併用注意〕(併用に注意すること)
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
アルコール(飲酒) | 精神運動機能の相加的な低下を生じる可能性がある。本剤を服用時に飲酒は避けさせること。 | 本剤及びアルコールは中枢神経系に対する抑制作用を有するため、相互に作用を増強させるおそれがある。〔「薬物動態」の項参照〕 |
中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体等) | 中枢神経系に対する抑制作用を増強させるおそれがあるため、慎重に投与すること。 | 本剤及びこれらの薬剤は中枢神経系に対する抑制作用を有するため、相互に作用を増強させるおそれがある。 |
CYP3Aを阻害する薬剤 (ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等) | 傾眠、疲労等の本剤の副作用が増強するおそれがあるため、併用する際には 1日1回10mgへの減量を考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察すること。〔「用法・用量に関連する使用上の注意」の項参照〕 | スボレキサントの代謝酵素であるCYP3Aを中等度に阻害し、スボレキサントの血漿中濃度を上昇させる。〔「薬物動態」の項参照〕 |
CYP3Aを強く誘導する薬剤 (リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン等) | 本剤の作用を減弱させるおそれがある。 | スボレキサントの代謝酵素であるCYP3Aを強く誘導し、スボレキサントの血漿中濃度を低下させる。〔「薬物動態」の項参照〕 |
ジゴキシン | ジゴキシンの血漿中濃度を上昇させるおそれがある。〔「薬物動態」の項参照〕 本剤と併用する場合は、ジゴキシンの血漿中濃度をモニタリングすること。 | スボレキサントはP糖蛋白阻害作用を有する。 |
4. 副作用
不眠症患者を対象とした第Ⅲ相国際共同試験では、254例(日本人61例)に本剤(成人:20mg、高齢者:15mg)が投与された。この試験の6ヵ月間の副作用は53例(20.9%)に認められた。主な副作用は、傾眠(4.7%)、頭痛(3.9%)、疲労(2.4%)であった。
(1) その他の副作用
次のような症状又は異常があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
種類/頻度 | 1~5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 |
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心臓障害 | 動悸注1) | ||
胃腸障害 | 悪心注1)、嘔吐注1) | ||
一般・全身障害及び投与部位の状態 | 疲労 | ||
神経系障害 | 傾眠、頭痛、浮動性めまい | 睡眠時麻痺 | |
精神障害 | 悪夢 | 異常な夢、入眠時幻覚 | 睡眠時随伴症注2)、夢遊症注2)、傾眠時幻覚注2)、不安注1)、激越注1) |
皮膚及び皮下組織障害 | そう痒症注1) |
注1)自発報告あるいは海外において認められている。
注2)海外臨床試験でみられた副作用。高用量(成人:40mg、高齢者:30mg)投与群を含む。
5. 高齢者への投与
高齢者での薬物動態試験において、非高齢者と比較して血漿中濃度が高くなる傾向が認められている。一般に高齢者では生理機能が低下していることも考慮し、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。〔「薬物動態」の7.(1)の項参照〕
6. 妊婦、産婦、授乳婦等への投与
(1) | 妊娠又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。〔妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。動物実験(ラット)では、交配前、交配期間中及び妊娠初期に臨床曝露量の70倍を投与した場合、黄体数、着床数及び生存胎児数の減少が、妊娠期に臨床曝露量の86倍を投与した場合、胎児体重の減少が認められた。また、妊娠から授乳期に臨床曝露量の49倍を投与した場合、出生児に一過性の体重低値が認められた。〕 |
(2) | 授乳中の婦人にやむを得ず本剤を投与する場合は授乳を中止させること。〔動物実験(ラット)でスボレキサントが乳汁中へ移行することが報告されている。〕 |
7. 小児等への投与
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児等に対する安全性は確立していない。〔使用経験がない。〕
8. 過量投与
(1) | 徴候、症状 :本剤の過量投与に関する情報は少ない。〔外国人健康成人に本剤120~240mgを朝投与した臨床試験で、用量依存的に傾眠の発現率及び持続時間が増加し、脈拍数が一過性に低下する傾向がみられた。外国人健康成人に本剤240mgを朝投与した臨床試験では、胸痛及び呼吸抑制が報告された。〕 |
(2) | 処置 :呼吸数、脈拍数、血圧及びその他の適切なバイタルサインのモニタリングを行う。必要に応じて、ただちに胃洗浄、輸液を行い、一般的な対症療法を行う。なお、血液透析は本剤の除去に有用かどうかは不明である。〔スボレキサントは蛋白質結合能が高いため、血液透析では除去されないと考えられる。〕 多剤服用の可能性を考慮する。 |
9. 適用上の注意
薬剤交付時 :PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。〔PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。〕
10. その他の注意
(1) | ラットの2年間がん原性試験では、臨床曝露量の36倍の投与により肝細胞腺腫及び臨床曝露量の11倍の投与により甲状腺濾胞細胞腺腫の発現頻度が増加したが、これらの変化はげっ歯類に特異的な肝酵素誘導及び甲状腺ホルモン産生増加の二次的な変化と考えられた。一方、rasH2トランスジェニックマウスでは、臨床曝露量の105倍までの用量を6ヵ月間経口投与しても、がん原性を示唆する変化は認められなかった。 |
(2) | ラットの2年間がん原性試験において、臨床曝露量の11倍(雄)及び18倍(雌)以上の用量で網膜萎縮の発現頻度が増加した。薬効量を大きく超えた用量のオレキシン受容体拮抗薬をラットに投与すると明期における覚醒時間が増加したこと、スボレキサントを投与した有色ラットの網膜萎縮の発現はアルビノラットよりも遅く、その発現率及び重症度も低かったことが報告されている。さらに、イヌに臨床曝露量の84倍を9ヵ月間投与しても網膜変化はみられていない。これらのことからラットがん原性試験でみられた網膜萎縮は、アルビノラットで自然発生的に生じることが知られている加齢及び光誘発性の網膜萎縮の発現頻度が、スボレキサントの薬理作用を介した網膜への光照射の増加により増加したことを反映した、ラット特有の変化と考えられた。 |
2021年12月改訂(第9版)
2021年12月作成