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PD-L1検査の臨床的意義

「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等はこちらをご参照ください。

PD-L1検査の臨床的意義

はじめに

監修:
横浜市立大学附属病院
病理診断科・病理部
主任教授
藤井 誠志 先生

近年、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場、またパネル検査の保険収載により、治療の適否や効果予測に関わる病理診断の重要性はますます高まっています。
そのような状況下で、2019年12月にキイトルーダ®が「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」に対する効能又は効果の追加が承認されました。頭頸部癌への適応は、「コンプリメンタリー診断薬」のPD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」(Autostainer Link 48用)におけるCPS(Combined Positive Score)によって判定(PD-L1検査)されます。

国際共同第Ⅲ相試験であるKEYNOTE-048試験1,2)では、再発又は遠隔転移を有する頭頸部扁平上皮癌患者において、キイトルーダ®併用群[キイトルーダ®、プラチナ製剤および5-FU併用療法]が、対照(EXTREMEレジメン)群に対して、全患者集団において全生存期間(OS)を有意に延長しました。また、キイトルーダ®単独群は、対照群に対してCPS陽性(CPS≧1およびCPS≧20)の患者集団でOSを有意に延長し、全患者集団においては非劣性が示されました(優越性は検証されませんでした)。本試験成績から、キイトルーダ®併用群・単独群において、CPSの多寡に関わらず1次治療から使用可能と承認されました

今回PD-L1評価に採用されたCPSは、腫瘍細胞に加えて、腫瘍浸潤免疫細胞(リンパ球、マクロファージ)も評価対象とし、算出するスコアとなっています。CPSの計算式や評価対象細胞の詳細については、本コンテンツの中で説明させていただきますが、CPSは頭頸部癌治療におけるコンプリメンタリー診断であり、PD-L1検査の新しい診断法として本邦で初めて導入されます。

以上のことから、CPSについて精通することは非常に重要であり、それと同時に、検体の取り扱い(固定・包埋・薄切・染色など)についても精度管理が求められます。

IHC:Immunohistochemistry(免疫組織化学的染色)

1)承認時評価資料:海外第Ⅲ相試験(KEYNOTE-048試験)
2)Burtness B et al. Lancet 2019; 394: 1915-1928
(本試験はMSD社の資金提供により行われた。Barbara BurtnessはMSD社より謝礼や旅費などを受領している。その他の著者にMSD社より謝礼などを受領している者が含まれる)

5. 効能又は効果に関連する注意
〈再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌〉

5.15 本剤単独投与の延命効果は、PD-L1発現率(CPS)により異なる傾向が示唆されている。CPSについて、「17. 臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。[17.1.19 参照]
5.16 「17. 臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。[17.1.19 参照]

頭頸部癌に関する「効能又は効果」、「用法及び用量」

効能又は効果(抜粋)

再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌

効能又は効果に関連する注意(抜粋)

<再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌>

5.14 本剤の術後補助療法における有効性及び安全性は確立していない。

5.15 本剤単独投与の延命効果は、PD-L1発現率(CPS)により異なる傾向が示唆されている。CPSについて、「17. 臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。[17.1.19参照]

5.16 「17. 臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。[17.1.19参照]

用法及び用量(抜粋)

〈再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌〉
通常、成人には、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として、1回200mgを3週間間隔又は1回400mgを6週間間隔で30分間かけて点滴静注する。

用法及び用量に関連する注意(抜粋)

〈再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌〉
7.2 本剤の用法及び用量は「17. 臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、選択すること。また、本剤を他の抗悪性腫瘍剤と併用する場合、併用する他の抗悪性腫瘍剤は「17. 臨床成績」の項の内容を熟知し、国内外の最新のガイドライン等を参考にした上で、選択すること。[17.1.19 参照]

PD-L1検査の臨床的意義

PD-L1検査のタイミング5)

PD-L1検査は、「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」の1次治療開始前に実施が考慮されます。

PD-L1検査のタイミング

*PD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」(ASL48用)によるPD-L1検査

キイトルーダ®の臨床試験(KEYNOTE-048試験)におけるPD-L1タンパク発現程度(CPSの分布)1)

キイトルーダ®の臨床試験(KEYNOTE-048試験)におけるPD-L1タンパク発現程度(CPSの分布)

再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌におけるPD-L1検査(CPS)のアルゴリズム

再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌におけるPD-L1検査(CPS)のアルゴリズム

※:対象患者は「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」ですが、
生検試料として非浸潤癌(上皮内癌)が提出された場合、PD-L1検査にはその試料を使うことはできません。

CPS(Combined Positive Score)の算出手順

CPSの算出方法5)

CPSの算出には、以下に示す計算式を用います。
CPSはTPSと異なり、浸潤癌で判定します。

計算式6)

CPSの計算式

※:CPSの評価において、分子あるいは分母に組み入れる細胞あるいは除外する細胞の種類については、下記の「CPSの評価において、PD-L1陽性細胞として加算すべき細胞」をご参照ください。

CPSの計算式

 参考)TPS(Tumor Proportion Score)の計算式

TPSの計算式

Ⅳ期非小細胞肺癌におけるPD-L1検査では、TPS(Tumor Proportion Score)が指標として用いられており、腫瘍細胞のみが評価対象細胞となっています。

CPSの評価において、PD-L1陽性細胞として加算すべき細胞

CPSの分子および分母の組み入れ/除外基準5)

CPSの評価において、分子あるいは分母に組み入れる細胞あるいは除外する細胞の種類は以下の表に示す通りです。

* MICでは、細胞質に対する細胞核の比率が高いため、多くの場合細胞膜染色と細胞質染色とは判別不能です。
  このため、 MICの細胞膜または細胞質染色はスコアリングに含まれます。
† 隣接するMICは腫瘍と同じ20倍視野内にあると定義されます。しかし、腫瘍に対する反応に直接関連しないMICは除外されます。
‡ マクロファージと組織球は同じ細胞と判断します。

CPS計算式の分母の組み入れ/除外基準

 染色強度1+(弱陽性)以上の染色像5)

腫瘍細胞 免疫細胞

■頭頸部癌:国際共同臨床試験成績:国際共同第Ⅲ相試験 <KEYNOTE-048試験>の概要

詳細はこちら >

引用文献

1)承認時評価資料:海外第Ⅲ相試験(KEYNOTE-048試験)
2)Burtness B et al. Lancet 2019; 394: 1915-1928
(本試験はMSD社の資金提供により行われた。Barbara BurtnessはMSD社より謝礼や旅費などを受領している。その他の著者にMSD社より謝礼などを受領している者が含まれる)
3)Chow LQM et al. J Clin Oncol 2016; 34: 3838-3845
4)Bauml J et al. J Clin Oncol 2017; 35: 1542-1549
5)PD-L1 IHC pharmDx「ダコ」頭頸部癌染色結果判定マニュアル
6)PD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」(Code No. SK006)電子添文

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