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海外第Ⅲ相無作為化比較試験(RACE試験)及びフォローアップ試験

BPAとアデムパス®の直接比較試験(非盲検試験)

海外第Ⅲ相無作為化比較試験(RACE試験)及びフォローアップ試験

Jaïs X et al. Lancet Respir Med. 10, 961(2022)(COI:本研究はバイエル社の資金により実施された、著者にバイエル社及び/又はMSD社より講演料等を受領している者を含む)

プラセボ対照二重盲検比較試験(国際共同第III相試験 CHEST-1試験)

承認時評価資料:バイエル薬品社内資料[慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者を対象とした第Ⅲ相試験]
Ghofrani HA et al. N Engl J Med. 369, 319(2013)(COI:本研究はバイエル社の資金により実施された、著者にバイエル社員(3名)を含む、著者にバイエル社より講演料等を受領している者を含む、著者にMSD社からコンサルタント料等を受領している者を含む)

6分間歩行距離のベースラインから第16週までの平均変化量(主要評価項目)(検証的解析結果)

6分間歩行距離の第16週におけるベースラインからの平均変化量は、アデムパス®群38.9m、プラセボ群-5.5mであり、アデムパス®群はプラセボ群に比べて有意な改善を示しました(最小二乗平均値の差45.69[95%信頼区間:24.74~66.63]a、p<0.0001b))。

国際共同第Ⅲ相試験:有効性検証試験(CHEST-1)主要評価項目:6分間歩行距離のベースラインから第16週までの平均変化量(検証的解析結果)

ITT解析による評価
a:ベースライン値を共変量、投与群及び国/地域を主効果とした共分散分析で算出した最小二乗平均値の差及び95%信頼区間
b:国/地域を層とした層別Wilcoxon検定


安全性

本試験において、副作用はアデムパス®群で103/173例(59.5%)、プラセボ群で36/88例(40.9%)に認められ、主な副作用(いずれかの群で5%以上に発現)は頭痛[アデムパス®群27例(15.6%) 、プラセボ群7例(8.0%) 、以降同順)、浮動性めまい[26例(15.0%)、3例(3.4%)] 、消化不良[21例(12.1%)、6例(6.8%)]、低血圧[14例(8.1%)、0例]、悪心[11例(6.4%)、5例(5.7%)]でした。
重篤な副作用は、アデムパス®群で6例(3.5%)、プラセボ群で1例(1.1%)に認められ、アデムパス®群で失神3例、胃炎、急性腎不全、低血圧がそれぞれ1例、プラセボ群で失神及び損傷が1例でした。
投与中止に至った副作用はアデムパス®群で1例(消化不良、下痢、悪心、嘔吐、頭痛)に認められました。死亡に至った副作用はアデムパス®群で1例(急性腎不全)に認められました。


試験概要

目的 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者におけるアデムパス®の有効性及び安全性を検討​
試験デザイン 多施設・国際共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験​
対象 肺動脈血栓内膜摘除術不適応又は本手術後に残存・再発したCTEPH患者261例(日本人16例を含む)
試験方法 アデムパス®群又はプラセボ群に2:1の割合で割付けた後、用量調節期(8週間)としてアデムパス®1.0mg又はプラセボを1日3回投与より開始し、患者の忍容性に合わせて2週間ごとに1回0.5mgずつ、最高1回2.5mg1日3回まで増量した。​その後、主治療期(8週間)として用量調節期終了時における用量を盲検下で投与し、16週間後の主要・副次的評価項目の分析を行った。
評価項目 <主要評価項目>6分間歩行距離の第16週におけるベースラインからの変化量(検証的評価項目)
     <安全性の評価項目>有害事象、死亡率等
解析計画 主要評価項目において、アデムパス®群とプラセボ群の比較には、ベースラインの6分間歩行距離を共変量、投与群及び国/地域を主効果とした共分散分析を用いた。共分散分析の残差の正規性をShapiro-Wilk検定により検討し、その結果が有意水準5%で有意な場合には、国/地域を層とした層別Wilcoxon検定を用いた。​第16週の欠測値はLOCFで補完した。ただし、死亡・臨床的悪化で中止来院がなかった、あるいは中止来院時の測定値がなかった場合最悪値で補完した。

4. 効能又は効果(抜粋)
○外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症


試験概要

RACE試験(海外データ)

海外第Ⅲ相無作為化比較試験(RACE試験) 試験概要

CTEPH(chronic thromboembolic pulmonary hypertension):慢性血栓塞栓性肺高血圧症
BPA(balloon pulmonary angioplasty):バルーン肺動脈形成術
PVR(pulmonary vascular resistance):肺血管抵抗
NT-proBNP(N-terminal prohormone of brain natriuretic peptide):ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント
mPAP(mean pulmonary arterial pressure):平均肺動脈圧

RACEフォローアップ試験(海外データ)

RACEフォローアップ試験 試験概要

4. 効能又は効果(抜粋)
○外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症

RACE試験及びフォローアップ試験(海外データ)  試験デザイン

海外第Ⅲ相無作為化比較試験(RACE試験)及びフォローアップ試験 試験デザイン

*1 mPAP30mmHg未満到達、あるいは拡張可能病変を全て施行するまで複数回実施
*2 アデムパス®は1回1.0mg 1日3回経口投与から開始。2週間継続して収縮期血圧が95mmHg以上で低血圧症状を示さない場合は2週間間隔で1回用量を0.5mgずつ増量するが最高用量は1回2.5mg 1日3回までとする。収縮期血圧が95mmHg未満でも低血圧症状を示さない場合は現行の用量を維持するが、低血圧症状を示す場合は1回用量を0.5mgずつ減量する。
*3 アデムパス®の投与は継続された。

Jaïs X et al. Lancet Respir Med. 10, 961(2022)より作図

患者背景

海外第Ⅲ相無作為化比較試験(RACE試験)及びフォローアップ試験 患者背景

ITT、n(%)又は平均値(SD)
* n=52、†n=44、‡n=45

Jaïs X et al. Lancet Respir Med. 10, 961(2022)
Reprinted from The Lancet Respiratory Medicine, 10(10), Jaïs X , et al., Balloon pulmonary angioplasty versus riociguat for the treatment of inoperable chronic thromboembolic pulmonary hypertension (RACE): a multicentre, phase 3, open-label, randomised controlled trial and ancillary follow-up study, 961-971., Copyright (2022), with permission from Elsevier.


有効性

第26週におけるPVRは、ベースライン値から、BPA群で60.1%、アデムパス®群で33.3%低下し、BPA群が有意に改善しました(p<0.0001、ANCOVA)。

主要評価項目:第26週におけるPVRのベースライン値に対する割合

海外第Ⅲ相無作為化比較試験(RACE試験)主要評価項目:肺血管抵抗のベースラインからの変化(第26週)

ITT、第26週の肺血管抵抗の幾何平均値(95%信頼区間)をベースライン値に対する割合で示す
*治療効果(95%信頼区間): 0.60(0.52~0.69)p<0.0001
〔治療効果:幾何平均値の比、治療群及びベースライン値(対数変換値)を共変量としたANCOVAで算出〕

Jaïs X et al. Lancet Respir Med. 10, 961(2022)
Reprinted from The Lancet Respiratory Medicine, 10(10), Jaïs X , et al., Balloon pulmonary angioplasty versus riociguat for the treatment of inoperable chronic thromboembolic pulmonary hypertension (RACE): a multicentre, phase 3, open-label, randomised controlled trial and ancillary follow-up study, 961-971., Copyright (2022), with permission from Elsevier.


有効性(フォローアップ試験)

第52週におけるPVRは、ベースライン値から、BPA群で65%、アデムパス®群で61.4%低下し、両群間に差はみられませんでした(ANCOVA)。

有効性評価項目:第52週におけるPVRのベースライン値に対する割合

RACEフォローアップ試験有効性評価項目:ベースラインから第52週までの肺血管抵抗の変化

ITT、第52週の肺血管抵抗の幾何平均値(95%信頼区間)をベースライン値に対する割合で示す
*治療効果(95%信頼区間): 0.91(0.79~1.04)p=0.18
〔治療効果:幾何平均値の比、治療群及びベースライン値(対数変換値)を共変量としたANCOVAで算出〕

Jaïs X et al. Lancet Respir Med. 10, 961(2022)より作成


安全性

第26週において、全ての有害事象発現率はBPA群で63%(33/52例)、アデムパス®群で72%(38/53例)でした。

有害事象

海外第Ⅲ相無作為化比較試験(RACE試験)及びフォローアップ試験 有害事象

SAF、n(%) 1症例で複数の有害事象を発現する場合がある。

Jaïs X et al. Lancet Respir Med. 10, 961(2022)
Reprinted from The Lancet Respiratory Medicine, 10(10), Jaïs X , et al., Balloon pulmonary angioplasty versus riociguat for the treatment of inoperable chronic thromboembolic pulmonary hypertension (RACE): a multicentre, phase 3, open-label, randomised controlled trial and ancillary follow-up study, 961-971., Copyright (2022), with permission from Elsevier.

治療と関連のある重篤な有害事象のうち、各群で最も頻度が高かった事象はBPA群で肺損傷(52例中18例[35%])、アデムパス®群で失神を伴う重度の低血圧(53例中2例[4%])でした(論文中にはこれら以外の事象について記載がありませんでした)。
本試験において、投与中止に至った有害事象、死亡例は認められませんでした。

BPA関連の重篤有害事象の発現率は、BPAより開始群で42%、アデムパス®より開始してBPAを追加施行した群では14%で認められました。

RACEフォローアップ試験におけるBPAに関連する有害事象

海外第Ⅲ相無作為化比較試験(RACE試験)及びフォローアップ試験 BPAに関連する有害事象

n(%) 1症例で複数の有害事象を発現する場合がある。

RACEフォローアップ試験において、アデムパス®の有害事象は予め規定されたものではないため論文中に記載がありませんでした。なお、アデムパス®より開始した群で1例肺炎による死亡が報告されています。安全性情報についてはDIをご参照ください。

Jaïs X et al. Lancet Respir Med. 10, 961(2022)
Reprinted from The Lancet Respiratory Medicine, 10(10), Jaïs X , et al., Balloon pulmonary angioplasty versus riociguat for the treatment of inoperable chronic thromboembolic pulmonary hypertension (RACE): a multicentre, phase 3, open-label, randomised controlled trial and ancillary follow-up study, 961-971., Copyright (2022), with permission from Elsevier.

(参考)RACE試験及びRACEフォローアップ試験におけるBPA施行前の患者背景

海外第Ⅲ相無作為化比較試験(RACE試験)及びフォローアップ試験 (参考)RACE試験及びびRACEフォローアップ試験におけるBPA施行前の患者背景

n(%)又は平均値(SD)
*n=34 £n=44 §n=32
‡:χ2検定  ¶:Wilcoxon-Mann-Whitney検定  #:Fisher正確検定 &:Student‘s t検定

Jaïs X et al. Lancet Respir Med. 10, 961(2022)
Reprinted from The Lancet Respiratory Medicine, 10(10), Jaïs X , et al., Balloon pulmonary angioplasty versus riociguat for the treatment of inoperable chronic thromboembolic pulmonary hypertension (RACE): a multicentre, phase 3, open-label, randomised controlled trial and ancillary follow-up study, 961-971., Copyright (2022), with permission from Elsevier.