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1分で読める睡眠豆知識 ~あの食べ物で睡眠改善!?~

プレバイオティクスの底力

腸内細菌叢(フローラ)を整えることは、健康の増進や維持に役立つことがよく知られています。ここで重要な役割を果たすのがプロバイオティクス。乳酸菌やビフィズス菌など、体に良い作用をもたらす生きた微生物、いわゆる善玉菌のことです。一方、プロバイオティクスに似た言葉で、プレバイオティクスという言葉が注目されています。腸内に常在する特定の細菌を選択的に増殖・活性化させることで健康状態を改善する「難消化性食品成分」のこと。つまり、プロバイオティクスの働きを助ける役割を果たします。1995年に、英・MRC Dunn Clinical Nutrition Centre(現University of Reading)のGlenn R. Gibson氏らが提唱しました1)

同氏らによると、プレバイオティクスとは①消化管上部で加水分解、吸収されない②大腸内に共生する1種類または限定的な種類の有益な細菌の選択的な基質であり、それらの細菌の増殖を促進または代謝を活性する③大腸の腸内細菌叢を健康的な構成に都合良く改変できる④宿主の健康に有益な全身的な有効性を誘導するーの4つの条件を満たすものとされています。具体的にはオリゴ糖類(フラクトオリゴ糖)セイヨウネギ、アーティチョーク、タマネギなど一部の食物繊維類が挙げられます。その機能は極めて多様で、整腸(便通改善)、脂質改善、インスリン抵抗性改善、ミネラル吸収促進、尿中窒素低減、大腸がん・炎症性腸疾患の予防・改善、アレルギー抑制、腸管免疫の増強などが報告されています2)

レム睡眠・ノンレム睡眠の時間が延びる!?

プレバイオティクスは、良質な睡眠を取る上でも有効性が示されています3)。米・University of Colorado at BoulderのRobert S. Thompson氏らが行った若いオスのラットを用いた実験では、標準的な餌を与えたラットに比べ、プレバイオティクスを混ぜた餌を与えたラットではノンレム睡眠の時間がより長くなることが分かりました。また、ラットにストレスを加えたところ、やはりプレバイオティクス入りの餌を摂取したラットでは、ストレスからの回復に必須とされるレム睡眠の時間が長くなることも明らかになりました。

もちろん、これはまだ動物実験段階での話です。果たして、ヒトでも同じ効果が得られるかについてはさらなる研究が必要でしょう。しかし、既に報告されているプレバイオティクスによる健康への良い影響を踏まえると、同氏らが考察する通り、プレバイオティクスがストレスを緩和する物質の働きを増強し、睡眠を妨害する物質を抑制する効果が期待できるのかもしれません。

  1. Glenn R. Gibson, et al. J Nutr 1995; 125: 1401-1412.
  2. Glenn R. Gibson, et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2017; 14: 491-502.
  3. Robert S. Thompson, et al. Sci Rep 2020; 10: 3848.