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1分で読める睡眠豆知識 ~モチベーションと睡眠~

感情は睡眠を制御できる?

退屈な会議や本など、興味のないものに対すると眠くなってしまう、ということはありませんか?

私たちの睡眠は様々な機構によって調節されています。例えば、大脳皮質の疲労に応じて睡眠を発現するシステム(睡眠恒常性維持機構)や、夜になると睡眠を発現させるシステム(体内時計機構)などが挙げられます1)

しかし、「楽しいときは眠くない」「つまらないときは眠い」というように、感情によって私たちの睡眠行動が制御される可能性はあるのでしょうか。

モチベーションと睡眠の関係

2013年、モチベーションと睡眠の関連性について調査したマウス実験の結果が報告されました2)。本研究では、側坐核という脳部位に注目しています。側坐核には睡眠を誘発するアデノシン受容体を持つニューロンが多数存在しており、これを活性化するとマウスの行動量が低下し、徐波睡眠の量が増加します。逆に、ニューロンの活動を低下させると、徐波睡眠の量は大きく減少します。

本研究では、マウスのケージにモチベーション刺激となるチョコレート、異性のマウス、玩具を投入して何が起こるかを調べました。すると、マウスの睡眠量は低下し、モチベーション刺激に応じて側坐核のニューロンの活性が抑制されていました。側坐核のニューロンは、モチベーションに関わる刺激によって制御され、かつ睡眠覚醒も制御することが明らかになりました。

人間にも同じことが言えるのかどうかはまだわかりませんが、マウスにおいては感情によって睡眠行動が制御される可能性があるようです。

  1. 内山真, 日大医誌. 2020; 79(6): 327.
  2. Y Oishi, et al. Nat Commun. 2017; 8(1): 734.