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1分で読める睡眠豆知識 ~昼寝習慣のある子どもは学力が高い~

昼休みに昼寝の時間を取り入れたら、午後の集中力向上と、脳と体のリフレッシュができた、と実感された方は少なくはないでしょう。以前は、昼寝といえば「怠惰」のイメージがありましたが、最近は「パワーナップ(積極的仮眠)」と名を変えてイメージチェンジしつつあります。実際に昼寝は子どもの教育に恩恵をもたらすようです。米国の研究グループが小学生を対象とした調査研究を行ったところ、昼寝の習慣のある子供は、学力が高く、行動面の問題が少ないという結果が報告されています1)

週3回以上、30-60分の昼寝が効果的(海外データ) 

子どもの日中の眠気は、学業成績の低下を含む認知能力の低下と関連していることが報告されています2)。昼寝は、眠気の軽減、疲労回復、覚醒度の向上に役立ち、最近では、夜の睡眠不足を補う効果も報告されています3)

研究は米国のペンシルベニア大学とカリフォルニア大学アーバイン校の研究グループにより実施されました。中国の金壇市コホート研究に登録された2011年時の小学4~6年生(10~12歳)の子供たち3,819人を対象に、昼寝の頻度・時間と学業成績、行動面、幸福感や自制心などの心理面との関係について分析しました。BMI、空腹時血糖値などの身体面における計測も行われました。これらのデータは小学校を卒業する前(2011〜2013年)のデータと比較検討されました()。

図:昼寝と学力の関係

その結果、週に少なくとも3日、30~60分の昼寝をした子供たちは、学力が向上し、問題行動を起こすことが少ない傾向にありました。週3回以上、平均31分以上の昼寝の習慣のある6年生は、学業成績が7.6%向上していることがわかりました。また、全体的に昼寝の習慣のある小学生は習慣のない小学生と比べて幸福感が高く、物事をやり抜く力や自制心が強いことがわかりました。

NASAの研究でも実証(海外データ)

スペインやイタリアなど南欧ではシエスタという習慣が有名ですが、中国でも昔から昼寝は日常生活に取り入れられています。多くの小学校では、昼休みが長く、一度自宅に帰り昼食を取った後昼寝してから再び登校する子どもも少なくないとされます。

昼寝は欧米でもその効果が新たに見直されています。米国航空宇宙局(NASA)の研究によると、26分の昼寝で、認知能力は34%、集中力は54%向上するといわれています4)。厚生労働省が2014年3月に公表した『健康づくりのための睡眠指針2014』においても、午後の早い時刻に30分以内の短い昼寝をすることは眠気による作業能率の改善に効果的であると書かれています5)

昼寝は古くて新しい習慣なのかもしれません。

  1. Liu J,et al., Sleep. 2019 Sep; 42(9): zsz126.
  2. Dewald JF, et al. Sleep Med Rev. 2010; 14(3): 179–189.
  3. Lo JC, et al., Sleep. 2017; 40(2). doi:10.1093/sleep/zsw042.
  4. Rosekind MR, et al. Crew Factors in Flight Operations IX: Effects of Planned Cockpit Rest on Crew Performance and Alertness in Long Haul Operations (NASA Technical Memorandum 108839). Moffett Field, Calif: NASA Ames Research Center; 1994.
  5. 健康づくりのための睡眠指針2014 厚生労働省健康局 平成26年3月