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夜間頻尿が引き起こす睡眠不足

「夜中に目覚めて何度もトイレに行きゆっくり眠れない」
このような悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。夜に何度も尿意で起きてしまうと、昼間に眠気を感じたり、ぼーっとしたりで仕事に集中できなかったりすることもあります。

夜間頻尿は約4,500万人も

夜中に目覚めて1回以上トイレに行く人は、40歳代以上の男女では約4,500万人もいるといわれています1)。加齢とともにその人数は増え続け、50歳代では約6割、60歳代以上では約8割の人が夜間頻尿に悩んでいるといいます2)
夜間頻尿は夜間に1回以上トイレに行くことと定義されていますが3)、通常は夜間に2回以上起きるとつらく感じる人が多くなるといわれます。

夜間頻尿と睡眠障害はどちらが先なのか明確ではありませんが、互いに影響し合っていると考えられています。眠りが浅くて目が覚めるたびに尿意を感じてトイレに行くから夜間頻尿になるのでしょうか。それとも尿意を強く感じて目が覚めるのでしょうか。高齢者では睡眠が浅く分断されるため覚醒しやすく、その結果として膀胱内圧の上昇を認め、膀胱容量が低下するため尿意を生じて夜間頻尿につながると考えられています4)

イラスト

2回以上のトイレでQOL低下

夜間頻尿は慢性的な睡眠不足を引き起こしがちで、入眠後、途中で起きてトイレに行く回数が2回だと睡眠の質が低下し、日中も眠気を感じるよりになります。3回以上になると、1日中疲れた状態が続き、仕事や家事に影響を及ぼします。このように夜間頻尿は生活の質(QOL)を低下させるのです5)

睡眠不足対策としては、体内時計を整えるために日光浴や適度な運動を行うことがお勧めです。昼寝は30分以内にとどめたいものです。また、就床1~2時間前の入浴も良いでしょう。夜間頻尿対策としては、カフェインやアルコール、塩分の取り過ぎに気をつけるほか、下肢のむくみ予防が効果的とされます。このような対策による改善で朝までぐっすり快眠したいものです。

  1. 本間之夫 他.排尿に関する疫学的研究委員会:日本排尿機能学会誌 2003; 14(2): 266-277.
  2. 日本排尿機能学会編集:夜間頻尿診療ガイドライン,ブラックウェルパブリッシング,2009.
  3. Abrams P et al. Neurourol Urodyn 2002; 21: 167-178.
  4. 青木芳隆 日老誌2013:50:434-439.
  5. Tikkinen KA et al. Eur Urol 2010; 57: 488-498.