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「パワーナップ」で仕事の効率アップ

30分以内の仮眠で睡眠効果を最大限に引き出す

パワーナップ(power nap)」という言葉をご存じでしょうか。米・社会心理学者で元Cornell University教授のJames Maas氏が1998年に出版した自著で提唱した、日中の短い仮眠のことを指します1)。日本語では「積極的仮眠」と訳されることもあります。深い眠り(SWS;slow-wave sleep)に落ちる前の約30分仮眠を取ることで、睡眠効果を最大限に引き出す方法です。

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業務遂行脳力や注意力が向上、眠気改善や疲労回復に効果も

パワーナップで引き出される効果とは、具体的にどのようなものでしょうか。
米航空宇宙局(NASA)による1994年の報告では、航空機のパイロットを対象に仮眠した群としなかった群で比較したところ、仮眠した群で業務遂行脳力が34%、注意力が54%それぞれ上昇しました2)。また日本の報告では、日中に20分程度の仮眠を取った人と取らなかった人では、仮眠を取った人の方が眠気の改善や業務遂行脳力の向上が認められ3)、コンピュータ画面などを用いたVDT(Visual Display Terminals)作業でも、仮眠を取った人ではその後の疲労回復効果が維持されたとの報告があります4)。眠気のせいで業務遂行脳力が落ちてミスにつながるリスクを考えると、30分以内の仮眠を取った方が得策ではないでしょうか。

仮眠は30分以内に、カフェイン摂取で心地よい目覚めを

今や米国ではNASAをはじめ、GoogleやNIKEなど多くの企業がパワーナップを取り入れているといいます。日本でも大手企業を中心に生産性の向上を目的としてパワーナップの導入が進んでいるようです。仮眠室を設置する企業もあるそうです。パワーナップの注意点は、夜間の睡眠に影響を及ぼさないよう30分以内に留めること。カフェインをパワーナップ前に飲んでおくとよいといわれます。カフェインは、摂取後30~45分程度で血中濃度がピークに達するため5)、心地よい目覚めが期待できるようです。日常診療の合間に取り入れてみてはいかがでしょうか。

<参考文献>

  1. Maas JB. Miracle Sleep Cure:The Key to a Long Life of Peak Performance 1998; Thorsons.
  2. Rosekind MR, et al. NASA Ames Research Center 1994.
  3. Hayashi M, et al. Clin Neurophysiol 1999; 110: 272-279.
  4. Hayashi M, et al. Ergonomics 2004; 47: 1549-1560.
  5. Juliano LM, et al. Psychopharmacology 2004; 176: 1-29.