KEYNOTE-087試験
古典的ホジキンリンパ腫:国際共同臨床試験成績:国際共同第Ⅱ相試験 <KEYNOTE-087試験>
承認時評価資料:国際共同第Ⅱ相試験(KEYNOTE-087試験)
Chen R et al. J Clin Oncol 2017; 35: 2125-2132
本試験はMSD社の支援を受け行われた。Robert ChenはMSD社から顧問料などを受領している。また、著者のうち、Yinghua Zhang、Alejandro D. Ricart、Arun BalakumaranはMSD社の社員である。その他の著者にMSD社より講演料、顧問料などを受領している者が含まれる。
試験概要
【目的】再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫患者におけるキイトルーダ®の有効性及び安全性を検討する。
【デザイン】国際共同非無作為化第Ⅱ相試験
【対象】再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫患者210例(日本人患者10例を含む)
【方法】疾患の状態及び前治療歴により3つのコホートに組み入れ、キイトルーダ®200mgを3週間間隔(Q3W)で点滴静注した。キイトルーダ®の投与は疾患進行(PD)又は許容できない毒性が認められるまで、最長24ヵ月継続した。

BV:ブレンツキシマブ ベドチン ASCT:自家造血幹細胞移植 CR:完全奏効 PR:部分奏効 Q3W:3週間間隔投与

【評価項目】主要評価項目: 奏効率(overall response rate; ORR)、安全性
副次評価項目: 完全奏効率(complete remission rate; CRR)、奏効期間(duration of response; DOR)、無増悪生存期間(progression free survival; PFS)、全生存期間(overall survival; OS)など
【判定基準】有効性評価は、盲検下独立判定委員会(blinded independent central review; BICR)が改訂IWG criteria(2007)に基づき評価した。
【解析計画】解析対象は有効性及び安全性ともにASaT集団*とし、各評価項目について全体集団及びコホート別での解析を実施した。また、有効性をさらに検討するため前治療歴が異なる次のサブグループでORR及びCRRを検討した。サブグループは、「3レジメン以上の治療後に再発した患者」「少なくとも1レジメンの前治療に抵抗性であった患者」「primary refractory患者[一次治療に抵抗性であった患者]」「いずれの前治療に対しても抵抗性であった患者」「BV未治療の患者」などとした。
ORR及びCRRについては点推定値及びClopper-Pearsonによる正確な両側95%信頼区間(CI)を算出し、DOR、PFS及びOSについてはKaplan-Meier法を用いて推定した。ORRはヒストリカルコントロールから設定した値(ORR: 20%)を用いて、有意水準片側2.5%で二項分布に基づく正確検定を実施した。
ORRの主要解析は、最後に投与した患者の12週の評価を実施した時点、もしくは、投与を中止した時点で解析を実施し、その時点で副次評価項目の解析も実施した。さらに24週の評価を実施した時点、1年後及び2年後にも解析を実施し、有効性評価項目の結果を更新することとした。
*ASaT集団(All Subjects as Treated)=治験薬が1回以上投与されたすべての患者
4. 効能又は効果(抜粋)
〇再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫
5. 効能又は効果に関連する注意(抜粋)
〈再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫〉
5.5 臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について、「17. 臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。[17.1.11参照]
6. 用法及び用量(抜粋)
〈再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫〉
通常、成人には、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として、1回200mgを3週間間隔又は1回400mgを6週間間隔で30分間かけて点滴静注する。
9. 特定の背景を有する患者に関する注意(抜粋)
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.3 臓器移植歴(造血幹細胞移植歴を含む)のある患者
本剤の投与により移植臓器に対する拒絶反応又は移植片対宿主病が発現するおそれがある。
15. その他の注意(抜粋)
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.2 臨床試験において、本剤による治療後に同種造血幹細胞移植が実施された症例で、重篤な移植片対宿主病等の移植関連合併症が認められた。
患者背景(ASaT集団)

ECOG:eastern cooperative oncology group PS:performance status ASCT:自家造血幹細胞移植 BV:ブレンツキシマブ ベドチン
主要評価項目 奏効率:ORR、副次評価項目 完全奏効率:CRR
全体とコホート別の奏効率(ORR)(ASaT集団)

(追跡期間中央値:10.1ヵ月)
全体とコホート別の最良総合効果(BOR)(ASaT集団)

*二項分布の確率計算による正確法
(追跡期間中央値:10.1ヵ月)
Reprinted with permission. © 2017 American Society of Clinical Oncology. All rights reserved.
Chen R et al. J Clin Oncol 2017; 35(19): 2125-2132.
本論文は、MSD社の資金提供及び著者に同社の社員を含む。
- 追跡期間中央値7.1ヵ月における全体のORRは68.1%(95%CI: 61.3, 74.3)で、コホート1、コホート2及び
追跡期間中央値10.1ヵ月における全体のORRは69.0%(95%CI: 62.3, 75.2)、コホート別のORRはそれぞれ73.9%(95%CI: 61.9, 83.7)、64.2%(95%CI: 52.8, 74.6)及び70.0%(95%CI: 56.8, 81.2)でした。同じくCRRは全体で22.4%(95%CI: 16.9, 28.6)、コホート別のCRRはそれぞれ21.7%(95%CI: 12.7, 33.3)、24.7%(95%CI: 15.8, 35.5)及び20.0%(95%CI: 10.8, 32.3)でした。
前治療に対する治療反応性別の奏効率:ORR(サブグループ解析)
前治療に対する治療反応性別の奏効率(ORR)

※一次治療に抵抗性であった患者
(追跡期間中央値:10.1ヵ月)
前治療に対する治療反応性別の最良総合効果(BOR)

*二項分布の確率計算による正確法
※一次治療に抵抗性であった患者
(追跡期間中央値:10.1ヵ月)
Reprinted with permission. © 2017 American Society of Clinical Oncology. All rights reserved.
Chen R et al. J Clin Oncol 2017; 35(19): 2125-2132, Supplementary Appendix.
本論文は、MSD社の資金提供及び著者に同社の社員を含む。
- 前治療に対する治療反応性別にみたORRは、3レジメン以上の治療後に再発した患者で67.8%(95%CI: 59.6, 75.3)、primary refractory患者※で79.5%(95%CI: 68.4, 88.0)でした。
※一次治療に抵抗性であった患者
副次評価項目 奏効期間:DOR
奏効期間(DOR)のKaplan-Meier曲線(ASaT集団)

奏効期間(DOR)の要約(ASaT集団)

*1 CRあるいはPRが認められた患者
*2 打ち切りデータはproduct-limit(Kaplan-Meier)法に基づく
*3 「+」は最後の疾患評価からPDがみられないことを示す
(追跡期間中央値:7.1ヵ月)
- 奏効までの期間中央値は、全体2.8ヵ月(範囲: 2.0, 8.1)、コホート1 2.7ヵ月(範囲: 2.0, 5.7)、コホート2 2.8ヵ月(範囲: 2.2, 5.6)、コホート3 2.8ヵ月(範囲: 2.6, 8.1)でした。また、DOR中央値は、全体で未到達(範囲: 0.0+, 8.3+)、コホート1 未到達(範囲: 0.0+, 8.3+)、コホート2 未到達(範囲: 0.0+, 6.3+)、コホート3 未到達(範囲: 0.0+, 6.0+)でした。全体で奏効が得られた143例のうち、115例(80.4%)が奏効を持続していました。
副次評価項目 無増悪生存期間:PFS
無増悪生存期間(PFS)のKaplan-Meier曲線(ASaT集団)

無増悪生存期間(PFS)の要約(ASaT集団)

*打ち切りデータはproduct-limit(Kaplan-Meier)法に基づく
(追跡期間中央値:7.1ヵ月)
- PFS中央値は、全体10.8ヵ月(95%CI:8.3, 未到達)、コホート1 未到達(95%CI:8.1, 未到達)、コホート2 未到達(95%CI:7.3, 未到達)、コホート3 10.8ヵ月(95%CI:6.1, 未到達)でした。
副次評価項目 全生存期間:OS
全生存期間(OS)のKaplan-Meier曲線(ASaT集団)

全生存期間(OS)の要約(ASaT集団)

*打ち切りデータはproduct-limit(Kaplan-Meier)法に基づく
(追跡期間中央値:7.1ヵ月)
- OS中央値は、全体 コホート1、コホート2及びコホート3のいずれも未到達(95%CI:未到達, 未到達)でした。

安全性(主要評価項目)
副作用は安全性解析対象例210例中144例(68.6%)(日本人10例中8例を含む)に認められました。主な副作用(10%以上)は、甲状腺機能低下症26例(12.4%)及び発熱22例(10.5%)でした。重篤な副作用は11例(5.2%)に認められ、2例以上に認められた重篤な副作用は、肺臓炎3例(1.4%)、呼吸困難2例(1.0%)でした。副作用による中止は9例(4.3%)で、その内訳は肺臓炎4例(1.9%)、注入に伴う反応2例(1.0%)、心筋炎、サイトカイン放出症候群、脊髄炎、筋炎各1例(0.5%)でした。副作用による死亡例は認められませんでした。
副作用(いずれかの投与群で発現率5%以上)(ASaT集団)

MedDRA/J v19.0、GradeはCTCAE v4.0
(追跡期間中央値:10.1ヵ月)
免疫関連など特に注目すべき有害事象(ASaT集団)
免疫関連など特に注目すべき有害事象は210例中60例(28.6%)に認められました。免疫関連など特に注目すべき有害事象による死亡例は認められませんでした。
最も多くみられた免疫関連など特に注目すべき有害事象は甲状腺機能低下症であり、Grade 1-2が28例(13.3%)、Grade 3が1例(0.5%)に認められました。
免疫関連など特に注目すべき有害事象(ASaT集団)

MedDRA/J v19.0、GradeはCTCAE v4.0
(追跡期間中央値:10.1ヵ月)
Reprinted with permission. © 2017 American Society of Clinical Oncology. All rights reserved.
Chen R et al. J Clin Oncol 2017; 35(19): 2125-2132, Supplementary Appendix.
本論文は、MSD社の資金提供及び著者に同社の社員を含む。
キイトルーダ®の投与期間中は、以下の検査スケジュールを参考に患者さんの状態を観察してください。
国際共同第Ⅱ相試験(KEYNOTE-087試験)における検査スケジュール(最大24回投与)

※サイクル10以降、サイクル6‒9の繰り返し
バイタルサイン:体温、脈拍、呼吸数、体重、血圧、身長(スクリーニング時のみ計測)
妊娠検査:妊娠の可能性がある女性の場合に、治療開始前72時間以内に実施
血液学的検査:ヘマトクリット、ヘモグロビン、血小板数、白血球数、白血球分画、赤血球数、好中球絶対数、リンパ球絶対数
血液生化学的検査:総蛋白、アルブミン、ALT(GPT)、AST(GOT)、ALP、HCO3‒、総ビリルビン、直接ビリルビン、BUN、クレアチニン、尿酸、Na、K、Cl、Ca、Mg、P、血糖値
尿検査:潜血、糖、蛋白、比重、顕微鏡検査(異常値の場合)
画像評価:スクリーニング時のPET又はCTで頚部に浸潤が認められなければ、スクリーニング以降のCTでは頚部を対象としなくてよい。PETは、CR又はPDの判定のため12週目、24週目及び臨床的に必要な場合に実施する。
骨髄検査:骨髄に浸潤が認められる患者に限り、CRの判定のため、及び臨床的に必要な場合に実施する。
①:サイクル8以降6週毎 ②:12週毎 ③:サイクル8以降6週毎 ④:12週毎
Chen R et al. J Clin Oncol 2017; 35: 2125-2132 Supplementary Data(Protocol)より作表
本論文は、MSD社の資金提供及び著者に同社の社員を含む。