診療ガイドライン紹介 糖尿病

日経メディカルOnline『疾患解説 for GP』より転載
監修・植木浩二郎(東京大学大学院医学系研究科分子糖尿病科学講座教授)

  • 糖尿病は代謝異常が長期に及ぶことでさまざまな合併症を発症する。血糖、体重、血圧、血清脂質などを良好な状態に維持し、細小血管合併症や動脈硬化性疾患である大血管合併症の発症・進展を阻止し、「健康な人と変わらない日常生活の質の維持、健康な人と変わらない寿命の確保」を実現することが治療の目標となる。
  • 最近では、糖尿病では癌のリスクが増加することや、アルツハイマー病のリスクが増加することも明らかになってきており、古典的な合併症に加えてこれらの合併にも注意を要する。また、糖尿病と非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(NASH)との関連も注目されている。NASHの約1/3は進行性で肝硬変や肝癌の要因になるといわれており、特にインスリン抵抗性の強い糖尿病患者においてはNAFLD/NASHのチェックも重要である。
  • 診断基準は2010年に改訂され、初回検査で血糖値とHbA1cを同時に測定し、どちらも糖尿病型であれば、初回検査だけで糖尿病と診断してよい。
  • 2型糖尿病は、インスリン分泌低下の遺伝素因に加えて、過食や運動不足、また肥満に伴うインスリン抵抗性といった環境因子が病態に深く関与しているため、治療は食事療法と運動療法が基本となり、原則としてこれらを2~3カ月続けても目標とする血糖コントロールに達しない場合に薬物療法を開始する。ただし、口渇・多飲・多尿などの典型的な糖尿病症状を呈している場合には、ただちに薬物療法を開始するか、専門医に紹介する。


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糖尿病の診療に関するガイドラインとして、日本糖尿病学会の編集による書籍が2種類発行されている。主に糖尿病を専門としていない医師を対象とした『糖尿病治療ガイド2014—2015』(文光堂)と、糖尿病専門医を対象とした『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013』(南江堂)である(糖尿病学会のホームページから無料でダウンロード可能)。

 『糖尿病治療ガイド』は『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン』に掲載されたエビデンスに基づいて編集されているので、前者の記載の根拠を調べたいときは、後者で確認することができる。ただし、『糖尿病治療ガイド』は後者の完全なダイジェスト版ではなく、例えばHbA1cで6.0%、7.0%、8.0%と3段階に分けた新しい血糖コントロール目標の図や、「病態に合わせた経口血糖降下薬の選択」という図は、『糖尿病治療ガイド』だけにしか掲載されていない。糖尿病を専門としていない医師にもわかりやすいように、適宜加筆されているとのことだ。

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