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1分で読める睡眠豆知識 ~寝入りばなの深い睡眠で壊れた筋肉細胞が修復~

筋肉は筋組織の破壊と再生を繰り返すことで発達します。運動によって壊された筋組織の回復のためには、最初の睡眠サイクルで深い睡眠をとることが大切で、それにより成長ホルモン(growth hormone:GH)が多く分泌され、壊れた筋肉の再生につながります。

成長ホルモンは徐波睡眠と密接な関係

筋肉は筋繊維の集合体でできていて、運動により筋肉を使い強い負荷をかけると、筋繊維は一時的に壊されますが、ヒトの体には壊れた筋肉を修復する機能が備わっています。それが睡眠中に分泌されるGHで、壊れた筋肉細胞の修復を行います。GHは、メラトニンやプロラクチンなどのように睡眠に関連した分泌パターンを示す代表的なホルモンで1)、運動など活動によって消耗した筋肉や肌の細胞などの修復機能・疲労回復機能なども兼ね備えています。

通常、睡眠中は約90分周期でノンレム睡眠とレム睡眠が交互に訪れ、このサイクルを一夜に4〜5回繰り返すことで目覚めます。GHの分泌は最初の睡眠サイクルで訪れる深いノンレム睡眠である徐波睡眠と密接な関係があることが分かっていて、入眠後3時間の徐波睡眠の時間帯に多くのGHが分泌されます2))。睡眠開始直後のGH分泌は1日のなかで最も大きく、男性では睡眠中GH分泌の約7割が徐波睡眠中に起きていることが報告されています3)

図:睡眠サイクルと成長ホルモン(GH)の関係

入眠時にいかに深いノンレム睡眠を確保できるかがポイント

睡眠中のGH分泌は、加齢や性差の影響を受けます。若年男性では1日の分泌量のうち約6〜7割が、若年女性では5割未満が睡眠中に分泌されます。加齢による変化としては、男性は30歳代から、女性では閉経後から睡眠関連のGHの分泌が減少するといわれます4)

以前は、「午後10時から午前2時までの間はGHが最も分泌されるため睡眠のゴールデンタイム」と呼ばれていましたが、その根拠はなく、GHは時間帯で分泌されるのではなく、睡眠サイクルの最初のノンレム睡眠と関係があることがわかりました2)。すなわち、何時に寝るのではなく、入眠時にいかに深いノンレム睡眠を確保できるかが重要なポイントとなるようです。

  1. Takahashi Y, et al., Clin Invest. 1968; 47(9): 2079-90.
  2. Van Cauter E, et al., Principles and Practice of Sleep Medicine 5th ed. 2011; 291
  3. Van Cauter E, et al., Growth Horm IGF Res. 2004; 14Suppl A:S10-7
  4. Obal F, et al., Sleep Med Rev. 2004; 8(5): 367-77