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1分で読める睡眠豆知識 ~長すぎる睡眠で脳卒中リスクが上がる!?~

「休日はできるだけ長く眠るようにしたい…」
日ごろ睡眠不足の方は、このように思っていらっしゃるかもしれません。しかし睡眠は長ければよいというものでもないようです。夜9時間以上の睡眠や90分以上の昼寝および睡眠の質の低さが、脳卒中リスクの上昇に関係しているという研究結果が中国で報告されています1)

睡眠9時間以上では脳卒中リスクが上昇(海外データ)

あまり知られていませんが、中国には昼寝の習慣があります。そこで中国華中科技大学のLue Zhou氏らは、中国の国営自動車メーカーを退職した中高年約4万人の集団(東風-同済コホート)を対象に、夜の睡眠時間、昼寝、睡眠の質と脳卒中の発症リスクや脳卒中の種類、さらに睡眠時間の変化とその後の脳卒中リスクとの関連を検討しました。

Zhou氏らが冠動脈疾患、脳卒中、がんの既往がある人を除外し、データの揃っていた3万1,750人(平均年齢61.7歳、男性1万3,996人、女性1万7,754人)を調べた結果、平均6.2±2.4年の追跡期間で、1,557人が脳卒中を発症していました。Cox比例ハザード回帰モデルを使用し解析したところ、夜間の睡眠時間が7時間以上8時間未満(8,570人)と回答した人(参照群)に比べ、夜間の睡眠9時間以上(7,580人)と回答した人では調整後の脳卒中リスクが23%高く(ハザード比[HR]1.23、95%信頼区間[CI]1.07~1.41、)、睡眠時間が6時間未満(368人)と回答した人では、脳卒中リスクの上昇は見られませんでした。

表:睡眠の時間や質と脳卒中リスクの上昇(海外データ、抜粋)

昼寝が長くなっても脳卒中リスクが上昇(海外データ)

昼寝の影響はあったのでしょうか? 昼寝の時間が1~30分(5,167人)と回答した人と比べた場合、昼寝の時間が90分超(2,415人)と回答した人では、全脳卒中リスクが25%高くなっていましたが(HR 1.25、95%CI1.03~1.53)、昼寝を全くしない人も含めたそれ以外の人では、脳卒中リスクの有意な差は見られませんでした。これは虚血性脳卒中(脳梗塞)リスクについても同様でした。

また睡眠の質が高いと回答した人に比べ睡眠の質が低いと回答した人では、あらゆる脳卒中、虚血性脳卒中、出血性脳卒中のリスクが順に29%、28%、56%高くなっていました。

さらに夜間の睡眠と昼寝の時間、睡眠の質を組み合わせて脳卒中リスクを解析すると、夜間睡眠が7時間以上8時間未満で昼寝が1~30分と回答した人を参照群として比較した場合、9時間以上の夜間睡眠と90分超の昼寝を行っている人の全脳卒中リスクは85%上昇し(HR 1.85、95%CI 1.28-2.66)、夜間睡眠9時間以上で睡眠の質が低いと回答した人では82%上昇していました(HR 1.82、95%CI 1.33-2.48)。

最後に睡眠時間の変化と脳卒中リスクです。夜間の睡眠時間が7時間超9時間未満から変化しなかった人と比べた場合、7~9時間→9時間以上に延長した人の全脳卒中リスクは44%上昇(HR 1.44 、95%CI 1.12–1.86)、変わらず9時間以上眠っていた人では35%上昇(HR 1.35、95%CI 1.01-1.82)していることが分かりました。

どうやら昼寝も夜も、睡眠はほどほどにしておくのが良さそうです。

*脳卒中の危険因子などを調整後のリスク

  1. Zhou L et al. Neurology 2020; 94(4): e345-e356.