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睡眠の質を高めるモーツァルト

モーツァルトに知能向上効果

普段、どのような環境で睡眠を取っていますか。照明や室温・湿度も大切ですが、音も重要と言われています。もちろん、静かな環境という意味合いですが、実は音楽をかけてリラックス効果を引き出す方法も注目されているのです。

音楽というと有名なのは「モーツァルト効果(The Mozart Effect)」です。これは、モーツァルトに代表されるクラシック音楽を聴くことで頭が良くなるというもの。アメリカ・University of California, Irvineで行われた研究でモーツァルトの音楽を聴いた学生は、それ以外の音楽を聴いた学生や音楽を聴かなかった学生に比べ知能検査で好成績を収めたとして、1993年に『Nature』に報告されました1)。ただ、その効果は音楽を聴いてから10〜15分程度だったとのことです。

4,000Hz以上の高周波音にリラックス効果

さて、音楽と睡眠の関係について、いくつか報告を紹介しましょう。不眠を訴えるハンガリーの大学生94人を睡眠前に45分間①クラシック音楽を聴く群②オーディオブックを聴く群③非介入群の3つに分けて3週間追跡したところ、睡眠の質は①のみで向上が示され、さらに抑うつ症状が①のみで低下し、それぞれ有意差が認められたということです2)

もう1つはスイスからの報告です。こちらは女性のみが対象で、90分間の昼寝前に①音楽を聴く群と②オーディオテキストを聴く群に分け睡眠の質を比較したところ、①ではノンレム睡眠の中でも比較的眠りが浅い段階のN1睡眠が減り、徐波睡眠(slow-wave sleep)が有意に増加するなどの効果が得られたのです3)

さて、なぜモーツァルトが良いとされるのかについてですが、4,000Hz以上の高周波音と関係があるようです。脳はリラックス状態になるとα波を出しますが、モーツァルトには3,500〜5,000Hzの高周波の曲が多いようで、そのことがリラックス効果を生み出していると考えられています。ハードロック系や、バラードでも歌詞が付いていたりするとかえって脳を刺激してしまいますので、あまりお勧めできません。試しに一度、モーツァルトを聴いてからリラックスした気持ちで寝てみるのも良いかもしれません。

イラスト

<参考文献>

  1. Frances H. Rauscher, et al. Nature 1993; 365: 611.
  2. László Harmat, et al. J Adv Nurs 2008; 62: 327-335.
  3. Maren Jasmin Cordi, et al. Sci Rep 2019; 9: 9709.