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寝不足で肥満になる!?

短時間睡眠で食欲増進

昔から「寝る子は育つ」といいますが、「寝不足は太る」ともいわれています。食欲増進に作用する「グレリン」と、食欲抑制に働く「レプチン」という2つの摂食ホルモンが関与しているようです。健康な成人男性12人を対象に4時間睡眠群と10時間睡眠群で2晩後の血漿グレリンおよびレプチン濃度を比較した代表的な研究があります1)。結果は、4時間睡眠群でグレリン28%増加、レプチン18%減少に加え、空腹感および食欲が上昇していました。

長時間睡眠でも肥満?

では、睡眠時間が短いと、何故、肥満になるといえるのでしょうか。そこに関わるのが、睡眠と覚醒のスイッチング機能で知られる脳の神経伝達物質オレキシンです。オレキシンは、グレリンによって活性化し、レプチンによって抑制することが明らかになっています2)。これら三者の関係性が短時間睡眠と食欲の悪循環を生み出しているのでしょうか。ところが、話はそれほど単純でもなさそうです。睡眠時間と肥満の関連については、「睡眠時間は短くても長くても肥満と関連する」との報告も多いのです。一例として、1,000人以上を対象に睡眠時間別にBMIを比較した研究では、平均睡眠時間7.7時間の人はBMIが最も低く、それより短くても長くてもBMIは上昇傾向を示し、「U字型」の関連が認められています3)

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睡眠時間と肥満との関連は「未解決」?

こうした報告を踏まえて考えてみると、「寝不足は太る」はコンセンサスが得られているわけではないことが分かります。睡眠不足と肥満の研究は数日から数週間程度のごく短期間に行われており、たとえ数週間程度の摂食ホルモン異常が生じても、ホメオスタシス(恒常性維持機能)により次第に正常化されるのではないか、という指摘もあります。睡眠時間と肥満との関連についてはっきりしたことが分かるまで、もう少し時間が必要なようです。グレリンによって増加する食欲に負けない強い心も大事かもしれません。

<参考文献>

  1. Spiegel K, et al. Ann Intern Med 2004; 141: 846-850.
  2. Yamanaka A, et al Neuron 2003; 38: 701-713.
  3. Shahrad Taheri, et al. PLoS Med 2004; 1: e62.