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KEYNOTE-042試験

Q&Aで読み解くKEYNOTE-042試験

進行・再発の非小細胞肺癌に対するキイトルーダ®単剤治療

2019年3月 掲載

キイトルーダ®は2018年12月より、進行・再発非小細胞肺癌の1次治療において、PD‑L1発現が1%以上であれば単剤で使用することが可能となりました。本コンテンツでは、エビデンスとなったKEYNOTE‑042試験に関する質問について、日本医科大学大学院医学研究科 呼吸器内科学分野 教授 久保田 馨 先生に解説していただきました。

Question一覧【クリックで各Q&Aへ移動します】

Q1 KEYNOTE‑042試験にはどのような患者が組み入れられましたか?

Q2 KEYNOTE‑024試験との違いは?

Q3 キイトルーダ®群及び化学療法群において、どのくらいの患者が後治療を受けましたか?

Q4 他のキイトルーダ®の臨床試験と比べ、新たに注意すべき副作用は認められましたか?

Q5 PD‑L1発現が1%以上の患者では、キイトルーダ®単剤と化学療法併用のどちらを使用すべきですか?

Q6 PD‑L1検査は今後も必要ですか?

Q1
KEYNOTE‑042試験にはどのような患者が組み入れられましたか?

A
ECOG PSが0又は1、十分な臓器機能を有しているなどの組み入れ基準を満たし、放射線療法や脳転移などに関して設定された除外基準に該当しない、全身化学療法の治療歴がないPD‑L1発現陽性の非小細胞肺癌患者が組み入れられました。

KEYNOTE-042試験の主な組み入れ基準

KEYNOTE‑042試験の対象は、全身化学療法の治療歴がないPD‑L1発現陽性の非小細胞肺癌患者でした。組み入れ基準としては、これらの他に、18歳以上、余命3ヵ月以上、ECOG PSが0又は1、十分な臓器機能を有している、などが規定されていました。

KEYNOTE-042試験の主な除外基準

こちらは主な除外基準です。
治験薬初回投与前3日以内にステロイドの全身投与もしくは他の免疫抑制剤による治療を受けた患者や、治験薬初回投与前6ヵ月以内に30Gyを超える肺への放射線療法を受けた患者、7日以内に緩和放射線療法を完了した患者が除外されました。脳転移に関しては、活動性の中枢神経系への転移又は髄膜癌腫症を有する患者が除外されましたが、脳転移に対する治療を受けて臨床的に安定しており、治療後少なくとも4週間、新規の脳転移や脳転移病変の拡大が認められず、治験薬初回投与3日前にはステロイド投与を完了していた患者は組み入れられました。
合併症や既往歴に関しては、自己免疫疾患、肺臓炎、感染症などに関する基準が設けられていました。

Q2
KEYNOTE‑024試験との違いは?

A
患者背景や治験参加国、クロスオーバーの規定などが異なります。異なる試験であるため結果を直接比較することはできませんが、KEYNOTE‑042試験の結果は、KEYNOTE‑024試験との違いを理解した上で解釈する必要があります。

KEYNOTE-042試験及びKEYNOTE-024試験における患者背景

こちらは、KEYNOTE‑042試験及びPD‑L1発現が50%以上の患者を対象とし、キイトルーダ®が1次治療で使用されるきっかけとなったKEYNOTE‑024試験の患者背景です。
KEYNOTE‑042試験では、KEYNOTE‑024試験に比べて男性、東アジアでの参加、喫煙歴なし、扁平上皮癌の患者が比較的多かったようです。

KEYNOTE-042試験及びKEYNOTE-024試験における患者背景

主な治験参加国をみると、KEYNOTE‑024試験には16ヵ国が参加し、アメリカや日本、ヨーロッパの国々の参加が多かったことがわかります。
一方、KEYNOTE‑042試験では32ヵ国と、KEYNOTE‑024試験の倍の国が参加しました。主な参加国はブラジル、トルコなどで、KEYNOTE‑024試験とは違いがあるようです。

KEYNOTE-042試験及びKEYNOTE-024試験におけるクロスオーバー

また、クロスオーバーに関しても異なる点があります。
KEYNOTE‑024試験では化学療法群に割り付けられた患者ではキイトルーダ®へのクロスオーバーが規定されていました。一方、KEYNOTE‑042試験ではクロスオーバーは規定されていませんでしたが、治験薬投与終了後、患者の状態に応じて腫瘍に対する後治療が検討されました。

異なる試験であるため結果を直接比較することはできませんが、KEYNOTE‑042試験の結果に関しては、患者背景や後治療などのKEYNOTE‑024試験との違い、特に参加国の違いについては、各国の医療環境が異なる可能性も十分に理解した上で解釈する必要があります。

Q3
キイトルーダ®群及び化学療法群において、どのくらいの患者が後治療を受けましたか?

A
キイトルーダ®群の37.7%(240/637例)、化学療法群の44.0%(280/637例)が抗悪性腫瘍薬による後治療を受けました。

後治療として抗悪性腫瘍薬が投与された患者の割合(ITT集団)

キイトルーダ®群では、637人中240人が抗悪性腫瘍薬による後治療を受けました。
本試験では、クロスオーバーの規定がありませんでしたが、化学療法群では、637人のうち28人がキイトルーダ®、89人がニボルマブ、3人がアテゾリズマブ、7人がアベルマブによる後治療を受けました。

Q4
他のキイトルーダ®の臨床試験と比べ、新たに注意すべき副作用は認められましたか?

A
新たに注意すべき、副作用又は免疫関連など特に注目すべき有害事象は認められていませんが、それらの有害事象には特に注意してキイトルーダ®をご使用ください。

KEYNOTE-042試験及びKEYNOTE-024試験における副作用

こちらは、KEYNOTE‑042試験とKEYNOTE‑024試験の主な副作用です。
KEYNOTE‑042試験のキイトルーダ®群における副作用は636人中399人の62.7%に認められ、10%以上に認められた副作用は甲状腺機能低下症でした。

KEYNOTE-042試験及びKEYNOTE-024試験における副作用

KEYNOTE‑042試験のキイトルーダ®群における免疫関連などの有害事象発現割合は27.8%で、甲状腺機能低下症、肺臓炎、甲状腺機能亢進症などが多く認められました。

このように、PD‑L1発現が1%以上の未治療患者を対象とした試験においても新たに注意すべき副作用などは認められていませんが、これまでどおり、免疫関連などの有害事象には特に注意してキイトルーダ®をご使用いただきたいと思います。

Q5
PD‑L1発現が1%以上の患者では、キイトルーダ®単剤と化学療法併用のどちらを使用すべきですか?

A
薬物療法を行う上で重要なのは、治療目的を明確にして医療スタッフ、患者・家族と共有することです。各臨床試験の結果を踏まえ、患者さんとよく話し合った上で、リスクとベネフィットを考慮しながら最適な治療を選択してください。

KEYNOTE-189試験及びKEYNOTE-407試験における全生存期間(OS)

左は、非扁平上皮非小細胞肺癌に対するキイトルーダ®とプラチナ製剤併用化学療法の有効性及び安全性を検討したKEYNOTE‑189試験、右は扁平上皮非小細胞肺癌を対象としたKEYNOTE-407試験の結果です。
それぞれの試験において、キイトルーダ®併用群でプラセボ併用群に比べて有意な全生存期間の延長が認められています。

KEYNOTE-024試験及びKEYNOTE-042試験における全生存期間(OS)

左は、PD‑L1発現が50%以上の非小細胞肺癌に対するキイトルーダ®単剤試験であるKEYNOTE‑024試験の全生存期間の結果です。キイトルーダ®群の化学療法群に対する全生存期間の有意な延長が認められたことから、これまでキイトルーダ®単剤の治療対象は、PD‑L1発現が50%以上の患者でした。
今回のKEYNOTE‑042試験においても、PD‑L1発現が50%以上の患者における全生存期間は、キイトルーダ®群で有意に延長しました。PD‑L1発現が50%以上の患者におけるキイトルーダ®単剤の有効性が改めて確認されました。

KEYNOTE-024試験 PFS(主要評価項目)
KEYNOTE-042試験における全生存期間(OS)

こちらは、PD‑L1発現が1%以上及び1‑49%の患者における全生存期間の結果です。1%以上の患者においてもキイトルーダ®群で全生存期間の有意な延長が認められました。1‑49%の患者の結果は探索的なサブグループ解析であり有意差検定の結果は示されていませんが、化学療法群に対するキイトルーダ®群のハザード比は0.92(95%CI:0.77, 1.11)でした。

キイトルーダ®の化学療法併用及び単剤試験における主な副作用

キイトルーダ®と化学療法を併用した際の安全性と、キイトルーダ®単剤の安全性をみると、併用療法においては両者の副作用が相加的に発現しており、単剤に比べると発現割合も高く、副作用の種類も多くなっています。
キイトルーダ®とプラチナ製剤併用化学療法の併用治療という選択肢が増えましたが、薬物療法を行う上で重要なのは、治療目的を明確にして医療スタッフ、患者・家族と共有することです。紹介した結果を踏まえ、患者さんとよく話し合った上で、リスクとベネフィットを考慮しながら最適な治療を選択していただきたいと思います。
治療選択肢が増えたことは我々にとっても患者にとっても非常に喜ばしいことであり、治療機会を逃さないようにしていくことが重要であろうかと思います。

Q6
PD‑L1検査は今後も必要ですか?

A
プラチナ製剤化学療法を使用できない患者さんや、化学療法を好まれない患者さんにはキイトルーダ®単剤という選択肢も考慮できるため、PD‑L1検査を事前に行いPD‑L1発現状況を把握しておくことが、スムーズな治療戦略の立案に繋がります。

キイトルーダ®の臨床試験

KEYNOTE‑042試験、KEYNOTE‑189試験、KEYNOTE‑407試験が新たなエビデンスとして加わったことで、キイトルーダ®の非小細胞肺癌における位置付けは大きく変わりました。現在では、プラチナ製剤併用化学療法と併用することでPD‑L1発現にかかわらず、使用可能です。単剤の場合には、PD‑L1発現が1%以上であることが必要です。
1次治療としては、PD‑L1発現にかかわらずキイトルーダ®とプラチナ製剤併用療法の併用が可能です。ただし、プラチナ製剤化学療法を使用できない患者さんや、化学療法を好まれない患者さんもいらっしゃるかと思います。そんなときには、PD‑L1発現状況がわかっていれば、キイトルーダ®単剤という選択肢を考慮することができます。PD‑L1検査を事前に行い、PD‑L1発現状況を把握しておくことは、スムーズな治療戦略の立案に繋がります。

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