医療関係者向けインクレチン情報

インクレチンとは

体内では、インスリンとグルカゴンなどによって血糖値が調節されています。小腸でのグルコース吸収や肝臓からのグルコース放出により血糖値が上昇すると膵臓でのインスリン分泌が増加し、筋肉や脂肪組織などでのグルコース取り込みが促進され血糖値が低下します。一方低血糖時にはインスリン分泌が減少するとともに、グルカゴンあるいはアドレナリン、成長ホルモン、糖質コルチコイドなどが増加して血糖値が上昇します。このような血糖調節のしくみにインクレチンというホルモンが深く関与していることがわかってきました。

【血糖調節におけるインクレチンの役割】

インクレチンとは、食事の摂取により消化管から分泌され膵臓からのインスリン分泌を促進する消化管ホルモンです。現在、小腸上部から分泌されるGIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)と、小腸下部から分泌されるGLP-1(glucagon-like peptide-1)の2つが知られています。
食事により消化管内に炭水化物や脂肪が流入すると、その刺激を受けてインクレチンが速やかに消化管から分泌されます。そして、血糖値の上昇とともに膵β細胞からのインスリン分泌を増加させ、膵α細胞からのグルカゴン分泌を抑制し、血糖低下に働きます。
血中で、インクレチンはDPP-4(dipeptidyl peptidase-IV)で速やかに分解され、血中半減期はGLP-1 2分、GIP 5分と非常に短いことが知られています。

インクレチンとインスリン分泌機序


【GLP-1とGIP】

GLP-1およびGIPは、食物中の栄養素に反応して消化管から分泌されます。両者の分泌細胞は異なっており、GIPは小腸上部などのK細胞から、GLP-1は小腸下部のL細胞から分泌されます。GLP-1とGIPは、生体内に広く存在する分解酵素DPP-4により速やかに不活性化されるため、半減期はともに数分ときわめて短いのが特徴です。
GLP-1とGIPが糖代謝の恒常性に重要な役割を果たすことは、それぞれの受容体を欠損させたマウスを用いた実験で明らかとなっています。ヒトにおいては、2型糖尿病患者で食後の血中活性型GIPは過剰~正常、GLP-1濃度は正常~低下とまだ一定の結論は得られていません。さらに、民族差の存在する可能性も示唆されています。
GIPは2型糖尿病患者に投与してもインスリン分泌を促進しませんが、GLP-1を2型糖尿病患者に投与した際のインスリン分泌促進作用は、ある程度、維持されていることが示されています。

GLP-1: glucagon-like peptide-1
GIP: glucose-dependent insulinotropic polypeptide
DPP-4: dipeptidyl peptidase-IV

GLP-1とGIPの生理作用は多岐にわたっています。膵臓において、GLP-1およびGIPは膵β細胞膜上の受容体を介してインスリン分泌促進作用を発現します。このインスリン分泌の増強はグルコース濃度依存的に引き起こされるため、血糖値が低い状態ではインスリン分泌は増加せず、血糖上昇に応じて分泌が促進されます。
膵臓以外の組織では、2つのインクレチンは異なる生理作用を有しています。GLP-1の消化管における胃排泄遅延作用や中枢神経系での食欲抑制作用は、血糖調節に有利に働くと同時に体重増加の抑制につながる可能性が考えられます。このほか、GLP-1は尿量増加作用や心筋保護作用などももっています。それに対し、GIPは脂肪細胞に直接働いてグルコースや脂肪酸の取り込みを促進し、脂肪を蓄積します。また、骨芽細胞ではGIPが骨へのカルシウム(Ca)蓄積に関与しています。

■GLP-1とGIPの代表的な生理作用

GLP-1 GIP
■膵臓
血糖依存的インスリン分泌促進
血糖依存的グルカゴン分泌抑制
■膵臓
血糖依存的インスリン分泌促進
■消化管
胃排泄遅延
■脂肪細胞
脂肪蓄積
■脳
食欲抑制
■骨芽細胞
Ca蓄積

Gautier JF et al. Diabetes Metab 2005; 31(3 Pt 1): 233-242.より作表
Flatt PR. Diabetes Vasc Dis Res 2007; 4(2): 150-152.より作表


GLP-1: glucagon-like peptide-1
GIP: glucose-dependent insulinotropic polypeptide

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