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下顎骨に異常が起きる疾患の画像所見を集めました

下顎骨に異常が起きる疾患というと歯などの口腔に関連した病気を思い浮かべるかもしれません。実際には、口腔に関連した病気だけでなく、全身疾患であるリウマチや痛風などでも下顎骨に異常が起きることがあります。下顎骨に異常が起きる疾患の画像所見をお見せします。


下顎骨骨折

mandibular fracture

(小田昌史)
出典ページ:P382-383

症例

10歳代後半,男性.階段で転倒し,下顎を強打した.左側顎関節部の疼痛を主訴に来院.咬合不全,開口障害および左側顎関節部と右側下顎骨体部に圧痛.

図1-A パノラマX線写真

図1-B 単純CT(骨条件,下顎骨体レベル)

図1-C 単純CT(骨条件,下顎頸レベル)

図1-D 3D CT再構成像

図1-E 3D CT再構成像

 パノラマX線写真にて,下顎右側第2小臼歯から下顎骨下縁に斜走する線状の透過像を認める(図1-A;→).下顎骨体部骨折の所見である.下顎右側第2小臼歯は脱臼している.また,左側下顎頸部に骨が不連続な部分を認める(図1-A;➤).基底部骨折の所見である.骨片は偏位しており,一部,重積による不透過像を認める.単純CT(骨条件)にて,右側下顎骨体部および左側下顎頸基底部の骨折線がより明瞭である(図1-B,C;→).3D CT再構成像にて,骨折線および骨片の偏位が3次元的に把握できる(図1-D,E;→).

顎顔面部骨折の受傷原因として,近年の高齢化に伴い高齢者の転倒が増加している.その一方で,交通事故による骨折は減少する傾向にある.顎顔面部骨折の好発年齢は10~20歳代で,男性に多い.下顎骨は顔面骨の中で最も外力を受けやすく,骨折の頻度が最も高い1).高齢者では介達骨折の頻度が上昇するが,これは無歯顎では有歯顎よりも外力が顎関節部に集中しやすいことが原因である.下顎頸部骨折では,小骨片は外側翼突筋によって,前下内方に偏位することが多い.正中部骨折では,開口時に骨折部が離開する.これは正中部骨折の特徴であり,骨片呼吸と呼ぶ.元来,下顎骨はリング状の形態をしているため,通常,2か所での骨折を認めるとされているが,1か所のみでの骨折であることも半数近くで認められる2).また,側頭骨骨折を伴うこともあるため,診断の際には下顎窩および外耳道も十分に観察することが必要である3)
 治療は,観血的処置による整復およびプレートによる固定が選択されることが多いが,関節突起骨折については,非観血的処置か観血的処置かの選択は意見が分かれる.基本的には非観血的処置とするが,骨折部が低位である場合や小骨片に外側転位がみられる場合には後遺症が多いとされるため,観血的処置を行う傾向にある.その際,骨の癒合のみではなく,咬合機能の回復を目標としなければならない.幼児の顎骨骨折については成長発育や歯胚への影響を考慮し,非観血的処置を行う傾向にある.小児の関節突起骨折では骨代謝が活発なため,非観血的処置のみでも予後が良好である.
  画像所見 下顎骨以外の顔面部外傷ではその形態が複雑で,単純X線写真では正常構造物が重なるためCT検査が選択されるが,形態が単純な下顎骨骨折では,選択される画像検査が完全にCT検査に置き換わっているとはいいがたい.特に,放射線感受性が高い小児では,可及的に無駄な被ばくは避けるべきである.下顎骨骨折のスクリーニングには,パノラマX線検査が有用である.骨折線は線状透過像を示し,偏位がある場合は皮質骨部にステップを認める.骨片の偏位が大きく画像上重なる場合,重積効果により一部が不透過像として描出される.
 臨床症状と併せて検討し,骨折が疑われる場合,CT検査を行う.CT画像では骨折線の有無,縫合の離開,骨片の偏位を精査する.また,3D CT再構成像を作成し,視覚的・直感的に把握することも有用である.MRI検査では,外傷を原因とした顎関節部の滑液貯留を認めることもある.

 下顎骨骨折の読影において,注意すべきは正常構造物である.具体的には,栄養管,下顎管の分枝,臼後管などである.また,パノラマX線写真では,時に舌などの軟組織や気道による濃淡が骨折線のようにみえることもあるため,注意する.


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参考文献

  1. 近藤雄大, 中村友梨, 山下善弘: 下顎骨骨折・下顎頭(関節突起)骨折. 山下康行(監); KEY BOOKシリーズ 知っておきたい顎・歯・口腔の画像診断. 学研メディカル秀潤社, p.164-165, 2017.
  2. Buch K, Mottalib A, Nadgir RN, et al: Unifocal versus multifocal mandibular fractures and injury location.Emerg Radiol 23: 161-167, 2016.
  3. Ogura I, Kaneda T, Sasaki Y, et al: Prevalence of Temporal Bone Fractures in Patients with MandibularFractures Using Multidetector-Row CT. Clin Neuroradiol 25: 137-141, 2015.

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