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全身性疾患に伴う消化管病変を画像から考える

消化器症状を伴う全身性疾患は数多くありますが、ここでは4つの疾患を取り上げました。CT、造影X線撮影、内視鏡等の画像所見を示し、疾患の一般知識と合わせて解説します。画像のイメージを今後の診療にお役立て下さい。


全身性疾患に伴う消化管病変,その他
強皮症

scleroderma

(市川珠紀)
出典ページ:P188-189

症例1

70代,女性.1年前より強皮症と間質性肺炎で治療中.食道つかえ感の精査のため上部消化管造影施行.

図1-A 食道造影(嚥下直後)
図1-B 食道造影(嚥下60 秒後)

症例2

60代,女性.手指皮膚硬化と抗核抗体陽性で強皮症の精査のため来院.

図2-A 胸部CT(肺野条件)
図2-B 胸部単純X 線立位側面像

参考症例

60代,男性.

図3 胸部CT 矢状断像

強皮症で間質性肺炎の評価のため撮影された胸部CTにて,偶然右側結腸の嚢状気腫(→)が発見された(図3).腹腔内遊離ガスはなく,腹部症状も認められず,経過観察となった.

 【症例1】 食道造影(図1-A)にて蠕動運動の低下が認められ,60秒後(図1-B)でもバリウムが食道に停滞している.

 【症例2】 胸部CT肺野条件にて末梢肺に顕著な網状影とすりガラス影があり,間質性肺炎の所見である.下部食道は拡張し(図2-A;→),残渣が認められる.胸部単純X線写真でも拡張した食道のガス(図2-B;→)が顕著である.

 強皮症(scleroderma)は皮膚および内臓諸臓器に線維化や硬化性病変を来す膠原病のひとつであり,全身性硬化症(systemic sclerosis)とも呼ばれる.強皮症の消化管病変は75~90%に認められ,食道に最も多く(50~80%),次いで小腸(40~60%),大腸(10~50%)とされている1).その本態は,固有筋層の萎縮と膠原線維を主体とした結合組織の増殖で,消化管の拡張と蠕動運動の低下がもたらされる2).消化管病変の成因は不明であるが,小血管病変による循環障害などが想定され,ステロイドや免疫抑制剤の有効性は認められず,治療は主に対症療法となる.
 食道では蠕動運動の低下,下部食道の拡張,下部食道括約筋圧の低下を来し,食道裂孔ヘルニア,逆流性食道炎や線維性瘢痕による狭窄の合併も見られる.食道造影では蠕動運動の低下と協調運動の消失により,嚥下30秒後以降でも食道に造影剤が停滞する.顕著な食道の拡張は胸部単純X線写真やCTでも指摘できる.
 十二指腸では下行脚から水平脚の著明な拡張を認め,バリウム造影検査では下十二指腸角から水平脚にかけて大量のバリウムが停滞するloop signが特徴的とされている.
 強皮症ではしばしば慢性偽性腸閉塞症を合併し,それに伴う腸管内圧の上昇は腸管嚢状気腫症や気腹の原因となる.膠原病に合併する腸管嚢状気腫症は強皮症が最も多い3)

 無症状の食道拡張は強皮症患者の80%に認められ,CTで食道の異常拡張と間質性変化を認めた場合は,強皮症を疑う.腸管嚢状気腫症は他の膠原病にも合併し,確診には至らない.強皮症では消化管が原因で気腫を来すことは多いが,間質性肺炎による気腫の場合もある.

NOTE
腸管嚢状気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis:PCI)

 膠原病では皮膚筋炎,強皮症,SLE,混合性結合組織病(mixed connective tissue disease:MCTD,関節リウマチ,Sjögren症候群での合併が多い.時に腹腔や後腹膜腔に遊離ガスを伴うことがあるが,通常無症状である.膠原病に合併しやすい間質性肺炎による縦隔気腫に続発することもある(図3)(p.254参照).


同テーマの症例

腸管Bahcet病、単純性潰瘍

強皮症

Shock Bowel

蛋白漏出性胃腸症

参考文献

  1. 高橋裕樹, 小原美琴子, 今井浩三: 膠原病の難治性病変:消化管. 日臨免疫会誌 27: 145-155, 2004.
  2. Ebert EC: Gastric and enteric involvement in progressive systemic sclerosis. J Clin Gastroenterol 42: 5-12, 2008.
  3. Scheidler J, Stäbler A, Kleber G, Neidhardt D: Computed tomography in pneumatosis intestinalis: differential diagnosis and therapeutic consequences. Abdom Imaging 20: 523-528, 1995.

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