共有する
セロトニンの増加が睡眠に及ぼす効果

毎晩ぐっすり眠れていますか?
脳内で働く神経伝達物質の一つであるセロトニンが日中に十分に分泌されないと、催眠作用を持つホルモンであるメラトニンがうまく産生されなくなり、快眠が妨げられてしまうかもしれません。では、どうしたらセロトニンを増やせるのでしょうか?

日中に太陽の光を浴びると、目の網膜が太陽光に反応し、脳内のセロトニン神経が活性化され、セロトニンが分泌されます。セロトニンの分泌量が増えると夜間にメラトニンの分泌量が増えることが明らかになっています1)。夜に自然な眠りにつくためにも、日光浴は重要ということになります。

食事でセロトニン分泌をアップ

セロトニンを増やすには日光を浴びるだけしかないのでしょうか? 実は、それ以外にもさまざまな方法で分泌を促すことができます。セロトニンは、必須アミノ酸であるトリプトファンから合成されるので、食事からトリプトファンを取ることでセロトニンの分泌を促進させることができます。トリプトファンを多く含んでいるのはタンパク質の多い食品です。具体的には、豆腐、納豆などの大豆製品、牛乳、バター、チーズなどの乳製品、卵、ナッツ類、バナナなどが挙げられます2)。WHOによると、1日にトリプトファンの必要な量は、体重1キログラムあたり4mg。体重50キログラムの人だと200mgです3)。牛乳に換算すると500ml弱になります。

運動や感動の涙でもセロトニン分泌をアップ

リズミカルな運動も、セロトニンの分泌を促す効果が高いといわれます。リズム運動としては、ウオーキング、スクワット、サイクリング、ヨガなどが挙げられます4)。リズム運動には、効果的な運動継続時間があります。どの運動の場合も、運動を始めて5分後くらいからセロトニン濃度が高まり、20~30分でピークに達します。リズム運動には咀嚼も含まれ、ガムを噛むことも有効とされます。

さらに、テレビドラマ、映画、小説、音楽などに浸り感動して涙を流すことも効果があるといわれています。涙を流すと、前頭前野の血流を増加させ、セロトニン神経を刺激し、セロトニンの増加につながります5)。泣いた後に気分がすっきりするのはこのためです。
トリプトファンを豊富に含んだ朝食を取り、日光を浴びながら軽い運動をしたり、映画鑑賞を意識することで、睡眠を快適にすることにつなげることができるかもしれませんね。

  1. Ramon F et al. NeuroReport 1993; 4:49-52
  2. 有田秀穂.小児科 2009;50(13):2101-2109.
  3. FAO/WHO/UNU.PROTEIN AND AMINO ACID REQUIREMENTS IN HUMAN NUTRITION ,WHO Press,2007.
  4. 有田秀穂.日本医事新報 2009;4453:38-42.
  5. 有田秀穂,中川一郎著:セロトニン脳 健康法,講談社,2009.