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1分で読める睡眠豆知識 ~夢の内容を視覚化する~

「夢=レム睡眠」は誤解

夢はレム睡眠中にだけ現れる現象である、というイメージはありませんか? 最近の科学的知見によるとこれは誤りで、ノンレム睡眠中にも夢を見ていることが確かめられています1)。なぜ「夢=レム睡眠」と誤解をしている人が多いのかというと、1957年に報告された、被験者をレム睡眠とノンレム睡眠の途中で覚醒させ、夢見体験の有無を尋ねるという実験2)の結果によるところが大きいと考えられています。この実験で、ノンレム睡眠から覚醒させたときには夢を見たという報告がほとんど得られなかったのに対して、レム睡眠から覚醒させたときにはおよそ80%の確率で夢を見ていたという報告が得られたため、「ノンレム睡眠時に夢を見ていない」という誤解が生まれてしまったのです。

夢の内容を視覚化できる技術が登場

時は流れ、現代の夢研究は大きく進化しています。ATR脳情報研のチームは、ブレインデコーディング技術によってMRI画像から睡眠時の夢の内容を視覚化することに成功しました3)。この研究では、被験者にMRI装置の中で眠ってもらい、夢見と強い関連がある脳波が生じたタイミングで被験者を覚醒させて、直前まで見ていた夢の内容を報告させました。この方法で夢報告とそれに対応する脳活動データを大量に取得し、さらに機械学習を用いることで、覚醒直前の脳活動から夢に現れた物体の有無を予測できるようになりました。この研究は、2013年にScience誌に掲載されました。

たった60年弱の間に、夢研究は「夢を見たかどうか」から「どんな夢を見ているか」を予測するまでに進歩したということですね。これからどうなっていくのか、楽しみです。

  1. D Oudiette, et al. Conscious Cogn. 2012; 21(3): 1129.
  2. W Dement, et al. J Exp Psychol. 1957; 53(5): 339.
  3. T Horikawa, et al. Science. 2013; 340(6132): 639.