共有する
1分で読める睡眠豆知識 ~揺りかごは大人にも安眠をもたらす!?~

新生児では啼泣がやんだ

新生児をあやしたり、眠らせたりするときに使われる揺りかご。最近では新生児の動きに合わせて揺れる機能があるコンパクトな「バウンサー」タイプのものが主流のようです。いずれにしても、「揺れ」は新生児にとって泣きやむなどの効果が示されているようです。一例として、健康な新生児54人を対象にした日本の研究では、振動周波数1Hz、振幅55mm、加速度1m/秒2、Z軸方向、正弦波振動で5分間負荷を与えたところ、①新生児の啼泣が速やかに停止②啼泣中の新生児の心拍数および心拍数が変動(CVR-R)、末梢体表面温度が減少し、呼吸数が増加③振動刺激が睡眠中の新生児の末梢体表面温度やCVR-Rが減少④啼泣中の新生児では沈静化―が認められました1)

揺れに心身をリラックスさせる効果があるのであれば、眠りにもなんらかの良い影響が期待でき、あるいは大人もその恩恵にあずかれるのではないでしょうか。そういえば、大人は日常的に乗る機会の多い電車内で座っていると、ついうとうとしてしまうことがありますよね。ある意味、揺りかご効果なのかもしれません。とはいえ、人目も時間も気にせず車中で眠りこけるわけにはいきません。

揺れるベッドでノンレム睡眠が増加

そのような着眼点を持ったのでしょうか、スイス・Geneva University HospitalのLaurence Bayer氏率いる研究チームが興味深い報告をしています2, 3)。研究チームは、昼寝習慣のない成人男性12人を対象に、一般的なベッドとモーターにつながれたロッキングベッド(振動周波数0.25Hz)で45分間の昼寝をしてもらい、睡眠中の脳活動や眼球および筋肉の動きについて検討しました2)。その結果、有効なデータが得られた10人全員が、一般的なベッドに比べロッキングベッドで昼寝したときの方がより深い睡眠が得られたこと、急速眼球運動が見られなくなる中程度の睡眠段階(N2)の時間が長かったことなどが分かりました。

さらに研究チームは、18人の健康な若年男女を対象に、ロッキングベッドで一晩眠った際の睡眠の質も調査しました3)。その結果、固定したベッドで眠った場合に比べ、ロッキングベッドで眠った場合はノンレム睡眠までの時間が短縮され、ノンレム睡眠の割合が増加したことなどが明らかになりました。

近年、室内でも使える大人向けのハンモックが市販されています。電車で移動中のうとうとも心地良いものですが、人目や時間を気にせずに安眠を求めるなら、ハンモックに揺られてリラックス効果を試してみるのもよいかもしれません。

  1. 江守陽子, 他. 人間工学 1995; 31: 369-377.
  2. Laurence Bayer, et al. Curr Biol 2011; 21: R461-R462.
  3. Aurore A. Parrault, et al. Curr Biol 2019; 29: 402-411.e3.