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ホントは健康的!?「北枕」のナゾ

北枕はなぜ、縁起が悪いの?

頭を北向きにして、足を南に向けて寝る「北枕」。「縁起が悪い」という認識の人は、まだまだ多いのではないでしょうか。でも、それはなぜでしょう。

理由を調べてみると、仏教の祖であるお釈迦様と関係があるようです。お釈迦様が入滅するときに北向きに頭を置いた(頭北面西=ずほくめんさい)ことから、日本では亡くなった人の極楽往生を願い遺体を北枕にしたことに由来するそうです。これにより、死を忌む日本では北枕で眠ることは「縁起が悪い」といわれるようになったと考えられています。また、昔の日本家屋は隙間風が入りやすかったため、北枕で寝るとかぜを引きやすいともいわれていたようです。

地球の磁場との関係

一方、現在では北枕は健康的という説や報告があることも事実です。
例えば風水。風水の基本的な考え方である陰陽五行説(万物は火、土、金、水、木のいずれかの性質を持ち、陰と陽が対であるという考え)では、北は水の方位になります。これにより、北枕は頭寒足熱の状態で熟睡が期待でき、健康運などに恵まれるというのです。

そればかりではありません。ドイツ・University of Duisburg-EssenのSabine Begall氏らは、睡眠中の牛や鹿の体の向きを解析し、地球の磁場を感知して頭部を北に向けて眠ると報告しました1)。地球には地磁気〔地球が持つ磁性(磁気)と地球により生じる磁場(磁界)〕がありますが、磁力線は南極から宇宙へ放たれ北極へ弧を描いているため、地表面では北から南へ流れる磁場が発生しています。これにより人間も牛や鹿と同様に北枕で眠ることで頭から磁場を受けて足に抜けると指摘されています。これにより寝ている間に血流が良くなり、健康的になるというのです。

ただ、磁力線は水平面に平行であるわけではなく、伏角(磁力線と水平面との角度)の分だけ傾いているため、北枕で寝たからといって磁力線に体が沿った状態にはならない、という指摘もあるようです。とはいえ、北枕を忌み嫌う風習は迷信にすぎませんから、明け方に窓から差し込む太陽光で安眠を妨げられる南枕ではなく、一度、北枕を試してみるのも良いかもしれませんね。

<参考文献>

  1. Sabine Begall, et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2008; 105: 13451-13455.