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ショートスリープと遺伝子

ショートスリーパーな偉人たち

先生は、「睡眠時間を短縮したい」と考えたことはありますか?睡眠時間を短縮すれば活動時間が増え、その分多くの知識や経験を得て、たくさんの行動ができるとも考えられます。

実際、歴史に名を遺す偉人には睡眠時間に関する眉唾物のエピソードが数多く存在します。ナポレオンの睡眠時間は1日3時間、エジソンは4時間、レオナルド・ダ・ヴィンチは15分の仮眠を4時間ごとに6回くりかえしていたそうです(すべて諸説ありますが)。
どれも逸話の域を超えませんが、通常よりも短期間の睡眠で足りる人、すなわちショートスリーパーに関連する遺伝子は、科学的に解明されつつあります。

イラスト

遺伝子変異により睡眠時間が短縮

2009年、米カリフォルニア大学のYing He氏らは、DEC2遺伝子の突然変異がショートスリープと関連している可能性を報告しています1)。この報告では DEC2は概日リズムの制御に関連する遺伝子であり、この変異をもつトランスジェニックマウスは、対照マウスと比較して覚醒時間の増加と睡眠時間の短縮を示しています。

さらに同グループは、2019年、β1アドレナリン受容体遺伝子(ADRB1)とショートスリープの関連性についても報告しています2)。この遺伝子は、家族性のショートスリーパーであるヒトの遺伝子スクリーニングにより同定され、マウス実験によりショートスリープとの関連性が確認されました。ADRB1に変異がある場合は、橋背部の覚醒促進ニューロンを容易に活性化できると考察されています。

  1. Ying He, et al. Science. 2009 Aug 14; 325(5942): 866–870.
  2. Guangsen Shi, et al. Neuron. 2019 Sep 25; 103(6): 1044-1055.e7.