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睡眠医療とAI

AIによる睡眠障害診断の可能性

近年のAI技術の発展はめまぐるしく、医療現場での活用も進められています。睡眠医療の分野でもAIの存在感は増しており、2020年4月、米国睡眠医学会は、睡眠医療におけるAI活用に関する声明を公開しました1)。本声明では、AIによる解析に適した分野として、睡眠ポリグラフ検査中の睡眠状態および有害事象のスコアリングをあげています。これまでに検査技師がスコア化した睡眠ポリグラフ検査データは大量に収集保存されており、これらをAIに学習させることで、スコアリングの自動化が見込めると予想されています。AIが適切に使用されることで、睡眠障害の評価と治療は精密さを増し、睡眠障害患者の転帰が改善する未来が開けるかもしれません。

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AIの診断精度は個々の専門家より高い

米スタンフォード大学の Jens B. Stephansen氏らは、ポリグラフ検査における睡眠段階のスコアリングを自動化するために約3000の睡眠記録からニューラルネットワークを作成し、その精度を報告しています2)。本研究では、70例の被験者の睡眠段階を6人の専門家(スコアラー)および機械学習アルゴリズムによってスコアリングし、その正確性を検証しました。その結果、スコアラーの診断精度はコンセンサスを取る人数が増加するほど増していきましたが、個々(1人)の診断精度はアルゴリズムよりも劣っていました。しかし、スコアラーと同様にアルゴリズムでも、特定の睡眠段階の移行(覚醒とN1、N1とN2、N2とN3)においては誤認がみられました。この誤認は、これらの睡眠段階が連続的で、人為的に定義され、主観的なものであるために生じると考察されています。

  1. Cathy A. Goldstein, et al. J Clin Sleep Med. 2020; 16(4): 605-607.
  2. Jens B. Stephansen, et al. Nat Commun. 2018; 9: 5229.