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昼食後の睡魔、そのメカニズムを探る

インスリンとオレキシンが関与

誰でも、昼食後、午後2~3時くらいになると急激な「睡魔」に襲われることがあるでしょう。30分以内のパワーナップ(積極的仮眠)が取れればよいのですが、制度として導入されていない職場でうたた寝をすると、サボリ認定されてしまうかもしれません。ところで、なぜ、昼食後に眠たくなるのでしょうかー。主な原因として、インスリンとオレキシンが関与しているようです。

高血糖時のインスリン大量分泌が脳に影響

食後の眠気の主な原因の1つとして、膵臓で産生されるインスリンが関係しています。食事内容にもよりますが、一般に糖質を多く含む食事を取り過ぎてしまうと血液中のブドウ糖の量が増え、血糖値が急激に上昇することが知られています。そして高血糖を抑制するためにインスリンが大量に分泌されますが、急激に上昇した血糖値を急激に下げるため、脳にとって主な栄養素であるブドウ糖が十分に供給されなくなり、結果として眠気を引き起こしてしまうといわれています。

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オレキシンの働きが睡眠モードにスイッチ

また、脳の神経伝達物質であるオレキシンも、食後の眠気の原因の1つとされています。オレキシンは覚醒と睡眠のスイッチという役割を持つと同時に、食欲にも関与しているからです。このためオレキシンは満腹になると活動が抑制されます。その上、血糖値の上昇に伴いあまり分泌されなくなるのです。結果的に睡眠モードにスイッチが切り替わるため、ヒトは睡魔に襲われるのです。対策の1つとしてパワーナップも効果的と言われていますが、高血糖による血管内皮の損傷リスクを考えると、食物繊維が豊富な食べ物を先に取り、糖質の摂取量を抑えつつ時間をかけて食べることも大切だと言われています。加えて、近年は「ウルトラディアンリズム」という、30分~4時間程度のごく短い周期の体内時計も関与しているとの報告があります1)。いずれにしても日中に眠たくなるのは、過度の寝不足などを除けば自然な生理現象であることに間違いなさそうです。

<参考文献>

  1. Wu YE, et al. Proc Natl Acad Sci USA 2018; 115: E9469-E9478.