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睡眠とヒラメキ

「ヘビの夢」から生まれたヒラメキ

先生は、昨夜どんな夢をみたか覚えていますか?
夢の中では、普段は到底思いつかないような突飛な連想が起こることがあります。入眠時や覚醒時に、思いがけず課題解決のヒントやヒラメキを得た経験がある先生もいらっしゃるのではないでしょうか。

睡眠とヒラメキに関する有名な話のひとつとして、ベンゼンの構造式を提唱したドイツの化学者アウグスト・ケクレの夢が知られています1)。当時、ベンゼンが6つの炭素原子からなることは知られていましたが、それがどのような構造を成しているかは明らかでありませんでした。1865年、ケクレは、蛇が自身の尻尾を追ってリング状になっている夢をみて、ベンゼンが環状であることを思いついたとされています。

イラスト

ノンレム睡眠が想像力を促進する

ケクレの例のように睡眠がヒラメキに影響を及ぼすメカニズムはいまだ明らかになっていませんが、イタリアIRCCSのDrago氏らは、ヒトの睡眠中の脳波と創造性との関連を検討した結果、ノンレム睡眠中にみられる周期性の脳波パターン(cyclic alternating pattern:CAP)と創造性のスコアに関連が認められたことを報告しています2)

本試験では、健常者8名を対象に、第1夜と第2夜に睡眠ポリグラフ、それぞれの翌朝に創造性検査(Abbreviated Torrance Test for Adults:ATTA)を行いました。創造性は、流暢性、独自性、巧緻性、柔軟性の4つの尺度とこれらの合計である創造性指数によってスコア化し、ノンレム睡眠におけるCAP率、ステージ1~4、およびレム睡眠との関連性を検討しました。

その結果、ノンレム睡眠のステージ1は流動性や柔軟性、ステージ4は独自性において正の相関がみられました。また、CAP率と独自性の間にも正の相関が認められました。一方、レム睡眠と独自性の間には負の相関がみられました。
この結果の背景としては、ノンレム睡眠でみられる大脳皮質の覚醒の低下が、創造力に重要な遠隔連想(remote association)を促進する可能性などが考えられています。

  1. Heilman KM, et al., Arch Clin Neuropsychol. 2016 Jun; 31(4): 285-96.
  2. Drago V, et al., Sleep Med. 2011; 12(4): 361-6.