Q&Aでわかる肺癌診療におけるQOL評価の臨床的意義

Q&Aでわかる 肺癌診療におけるQOL評価の臨床的意義

 QOL(健康関連QOL)とは何でしょうか?

Answer

「治療を受ける前と後(病気になる前と後)でどのくらい変わったか?」と捉えるとわかりやすい

QOLとは「生活の質」であり、「身体面・心理(精神)面・社会面・機能(役割)面を平穏な気持ち、生きがい、信念、宗教などが下支えしている」というのが概念です。治療により影響があるものとして、「身体面・心理面・機能面」を健康関連QOLとし、がん治療薬だけでなく、様々な治療薬の臨床試験で評価されています。
しかし、具体的にはわかりづらいため、「治療を受ける前と後(病気になる前と後)で生活がどのくらい変わったか?」と捉えるとわかりやすいかと思います。患者さんへ「QOLとは何か?」を説明する際も、そのように話すようにしています。

 QOLの評価にはどんな意義がありますか?

Answer

臨床試験のQOL結果は患者さんにとって「他の患者さんによる治療の実感」のようなもの

今の医学では、我々医療従事者は、患者さんの治療に対する想いや実感を評価することができません。しかし、QOLは唯一、治療の効果と副作用を患者さんが主観的に評価できるものなのです。
臨床試験におけるQOL評価の結果は、臨床試験の有効性・安全性の結果を前提として、治療選択の助けにもなります。患者さんにとっては「他の患者さんによる治療の実感」のようなものであり、これから治療を受ける患者さんは、自分と同じ治療を受けた方がどうなったかということにとても興味があります。QOL評価が高い治療は患者さんにとってより受け入れやすい治療ということになりますし、医療関係者にとっても患者さんの納得を得られやすいという面で意義があると思います。

 がん(肺癌)患者におけるQOL評価法の概要を教えてください

Answer

肺癌患者を対象としたQOLの評価には、がん患者や肺癌患者を対象として開発された尺度(EORTC QLQ-C30及びEORTC QLQ-LC13など)が用いられる

現在、世界的によく用いられているQOL尺度にはEORTC QLQ-C30やFACTなどがあります。国際的な臨床試験に使用可能なQOL尺度が求められていたことから、1980年~1990年代にかけて開発が進みました。
その後、肺癌を含めたがん種特異的なQOL尺度も開発されています。肺癌治療薬の開発においては、主にがん患者や肺癌患者を対象としたQOL尺度(EORTC QLQ-C30及びEORTC QLQ-LC13など)が用いられますが、がん特異的ではないQOL尺度のEQ-5Dなどを用いると、異なる疾患に対する治療の費用対効果を比較することができます。

EORTC QLQ-C30及びFACTの開発

EORTC QLQ-C30及びFACTの開発

国際的な臨床試験における主なQOL尺度

国際的な臨床試験における主なQOL尺度

1)Aaronson NK et al. J Natl Cancer Inst 1993; 85: 365-376
2)Bergman B et al. Eur J Cancer 1994; 30A: 635-642
3)Cella DF et al. J Clin Oncol 1993; 11: 570-579
4)Cella DF et al. Lung Cancer 1995; 12: 199-220
5)EuroQol Group. Health Policy 1990; 16: 199-208
6)Brooks R. Health Policy 1996; 37: 53-72

 肺癌で重要なQOLは何でしょうか?

Answer

咳や呼吸困難、胸痛などの肺癌関連症状の評価結果があれば、患者さんの症状にあわせた治療選択の助けにも

肺癌関連症状が重要だと思います。
EORTC QLQ-LC13では、咳嗽、喀血、呼吸困難、部位特異的な疼痛を肺癌関連症状として評価することができます。このような肺癌関連症状ごとの評価結果があれば、患者さんの症状にあわせた治療選択の助けになると思います。

 ORR、PFS、OSとの違いは何でしょうか?

Answer

QOLは唯一、副作用も含めた治療に対する患者さんの主観的な評価である

ORR、PFS、OSは客観的な評価、QOLは患者さんの主観的な評価である点が大きく違います。
ORRと症状・QOLの関係については、原発腫瘍が小さくなれば、腫瘍による圧迫が原因で起こっていた息切れや咳などは改善するため、ORRとQOL改善の相関が認められることもあるかと思います。しかし、QOLは治療効果だけでなく、副作用を含めた総合的な評価であるため、効果が高くても、副作用が強ければQOLが低下する場合もあります。
OSやPFSが同程度であればORRやQOLが治療選択の参考になることもあるでしょう。

 先生はご自身の治療にどのようにQOL評価を取り入れられていますか?

Answer

EORTCやFACTの質問票を使ってはいないが、精神状態の評価にはHADSを使用する場合も。対症療法で解消しない症状には不安や抑うつが隠れている可能性が

日常臨床では、診療の中で患者さんの心身の状態を把握できるので、EORTC QLQ-C30やFACTなどは特に取り入れていません。ただ、チーム医療においては各医療従事者の認識を一致させる意味で、一定の形式により記録に残しておくことは有用であると思います。
場合によってですが、診察のみでは判断が難しい精神状態の評価にはHADSを使用することはあります。患者さんの不眠や食欲減退などの訴えは不安・抑うつによる場合もあり、そのような場合は対症療法では解消が期待できないかもしれません。実際に、抑うつに対する治療を行ったことで、症状が改善した患者さんもいました。このような場合もありますので、必要に応じてQOL評価を行うことも重要であると思います。

HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)1)

身体的疾患を有する患者の精神状態(不安と抑うつ)を測定する尺度で、各項目4段階評価(0~3点)により、抑うつ、不安それぞれ7項目、合計14項目の設問により構成される。
項目得点の合計により、以下のように評価される。

0~7点:不安または抑うつなし
8~10点:不安または抑うつ疑い
11点以上:不安または抑うつあり

*各項目の得点は、高いほど不安や抑うつが強いことを示す

1)Zigmond AS et al. Acta Psychiatr Scand 1983; 67: 361-370

髙山先生からのメッセージ

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