KEYNOTE-189試験
Q&Aで読み解くKEYNOTE-189試験

2019年1月 掲載
キイトルーダ®は2018年12月より、PD‑L1の発現率に関わらず進行・再発非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)に対して、ペメトレキセド/プラチナ製剤との併用が、使用可能となりました。本コンテンツでは、KEYNOTE‑189試験に関する疑問について、関西医科大学附属病院 呼吸器腫瘍内科 診療教授 倉田 宝保 先生に解説していただきました。
Question一覧【クリックで各Q&Aへ移動します】
Q2 プラセボ併用群において、病勢進行後にキイトルーダ®がクロスオーバーで投与された患者の割合は?
Q3 キイトルーダ®併用群において、病勢進行後に受けた後治療とは?
Q4 各群において、ペメトレキセドの維持療法を受けた割合とは?
Q5 本試験においてキイトルーダ®の投与は最大24ヵ月でしたが、キイトルーダ®の維持療法中止後でも、ペメトレキセドの維持療法は継続が許容されていましたか?
Q6 キイトルーダ®+ペメトレキセド/プラチナ製剤併用の安全性において注意すべき点を教えてください。
Q7 化学療法未治療、EGFR遺伝子変異及びALK融合遺伝子陰性、TPS≥50%の患者さんには、キイトルーダ®単剤と併用療法のどちらを優先すべきでしょうか?
Q1
キイトルーダ®+化学療法併用の科学的根拠とは?
A
化学療法は腫瘍の免疫原性を高めるため、免疫療法と化学療法を併用することで抗腫瘍効果を発揮すると考えられます。

化学療法は腫瘍の免疫原性を高めるため、免疫療法と化学療法を併用することで抗腫瘍効果を発揮する可能性が示唆されています。
化学療法は、免疫原性細胞死(ICD)の誘導、樹状細胞の成熟および活性化の増強、細胞傷害性T細胞の腫瘍組織への浸潤増加、腫瘍特異抗原の抗原提示の改善および、骨髄由来免疫抑制細胞や制御性T細胞の除去によって腫瘍免疫原性を高めることが確認されています。
Q2
プラセボ併用群において、病勢進行後にキイトルーダ®がクロスオーバーで投与された患者の割合は?
A
プラセボ併用群206例中67例の32.5%が、クロスオーバーとしてキイトルーダ®の投与を受けましたが、事実上のクロスオーバー率は42.2%でした。

プラセボ併用群に割り付けられた206例のうち96例、46.6%が病勢進行後に後治療を受けていました。
病勢進行後にキイトルーダ®がクロスオーバーで投与されたのは67例、32.5%であり、これらの患者はBICRにより病勢進行と判定され、キイトルーダ®単剤へのクロスオーバーの適格基準を満たしていました。
なお、キイトルーダ®へのクロスオーバーによる転帰に関しては、本解析時点では評価されませんでした。
また、キイトルーダ®以外の後治療として、抗PD‑1抗体のニボルマブが7.8%、抗PD‑L1抗体のアテゾリズマブが1.0%投与されており、キイトルーダ®による後治療とあわせると、事実上のクロスオーバー率は42.2%でした。
Q3
キイトルーダ®併用群において、病勢進行後に受けた後治療とは?
A
後治療として、免疫療法や併用化学療法、単剤化学療法、分子標的治療などが行われました。

本試験でキイトルーダ®併用群に割り付けられた410例のうち125例、30.5%が病勢進行後に後治療を受けていました。残りの69.5%は後治療を受けていませんでした。
病勢進行後に受けた後治療としては、ニボルマブやアテゾリズマブなどの免疫療法、その他にも併用化学療法、単剤化学療法、分子標的治療などが挙げられました。
Q4
各群において、ペメトレキセドの維持療法を受けた割合とは?
A
キイトルーダ®併用群で76.5%、プラセボ併用群で66.8%がペメトレキセド維持療法を受けました。

ペメトレキセドの維持療法を受けた割合は、キイトルーダ®併用群76.5%、プラセボ併用群66.8%であり、維持療法は5サイクル以上実施されていました。
Q5
本試験においてキイトルーダ®の投与は最大24ヵ月でしたが、キイトルーダ®の維持療法中止後でも、ペメトレキセドの維持療法は継続が許容されていましたか?
A
ペメトレキセドの維持療法は、病勢進行、許容できない毒性がみられる、または治験医師の判断により中止となるまで継続することが許容されていました。

キイトルーダ®の投与は、最大35サイクル、あるいは病勢進行、許容できない毒性がみられる、または治験医師の判断により中止となるまでとされています。
一方の、ペメトレキセドは、病勢進行、許容できない毒性がみられる、または治験医師の判断により中止となるまでとされており、明確な期間は定まっていませんでした。
Q6
キイトルーダ®+ペメトレキセド/プラチナ製剤併用の安全性において注意すべき点を教えてください。
A
使用上の注意から予測できない副作用は認められませんでしたが、急性腎障害や間質性肺疾患には特に注意が必要です。

本試験において報告されたキイトルーダ®+ペメトレキセド/プラチナ製剤併用の副作用は、これまでに各薬剤で報告されていたものであり、予期せぬ副作用は認められませんでした。
しかしながら、治療中は何らかの副作用が発現する可能性は高いため、今一度、安全性プロファイルを振り返りたいと思います。
副作用発現率は、全Gradeではキイトルーダ®併用群91.9%、プラセボ併用群90.6%、Grade 3以上ではキイトルーダ®併用群48.4%、プラセボ併用群39.6%でした。
全Gradeにおける主な副作用は悪心、貧血、疲労など、Grade 3以上の主な副作用は好中球減少症、貧血などでした。
また、キイトルーダ®併用群では、Grade 3以上の急性腎障害が8例、2%にみられており、いずれの患者も試験薬の投与中止となりました。一方で、Grade 2以下の急性腎障害では19例中9例が回復・回復傾向にあったことから、急性腎障害に対しては早期での対処が重要と考えられます。
なお、有害事象による死亡は、キイトルーダ®併用群6.7%、プラセボ併用群5.9%でした。

免疫関連など特に注目すべき有害事象に関しては、全Gradeではキイトルーダ®併用群22.7%、プラセボ併用群11.9%、Grade 3以上ではそれぞれ8.9%、4.5%でした。
なお、キイトルーダ®併用群では、それらのうち死亡が3例認められ、いずれも肺臓炎によるものでした。
Q7
化学療法未治療、EGFR遺伝子変異及びALK融合遺伝子陰性、TPS≥50%の患者さんには、キイトルーダ®単剤と併用療法のどちらを優先すべきでしょうか?
A
患者さんとよく話し合い、リスクとベネフィットを考慮した上で、より良い治療を選択することが大切です。

本試験とKEYNOTE‑024試験は試験背景が異なるため、2つの試験を一概に比べることはできませんが、今回のKEYNOTE‑189試験の結果をみると、プラチナダブレットを適応できる患者さんではPD‑L1の発現率に関わらず、キイトルーダ®併用療法が全生存期間の延長に寄与した結果がみられました(ハザード比0.42)。


PFSに関しては、KEYNOTE-189、024試験のハザード比は、それぞれ0.36、0.50でした。

また、奏効率においては、キイトルーダ®併用群では60.6%、単剤群では44.8%でした。

しかしながら、安全性については、化学療法の副作用が加わる可能性も考えられます。
そのため、特にTPSが50%以上の患者さんにおいては、キイトルーダ®単剤が良いか、併用療法が良いかを、患者さんとよく話し合い、リスクとベネフィットを考慮した上で、より良い治療を選択することが大切だと思います。

Q8
PD‑L1検査は今後も実施したほうがよいでしょうか?
A
診断後すぐに治療を開始するためにも、今まで通り、PD‑L1検査を実施しておくべきです。
現在、多くの施設において、Ⅳ期非小細胞肺癌の診断時に、PD‑L1検査を他の遺伝子検査と同時に実施されていることと思いますが、現時点において特にそれを変更していただく必要はないと考えます。
その理由としては、1次治療の際に、TPS≥1%でプラチナダブレットが使用できないような患者さんに対してはキイトルーダ®単剤という選択肢があるからです。
そのような患者さんに対しては、診断後すぐに治療を開始するためにも、今まで通り、PD‑L1検査を実施しておくのが良いのではないかと思います。