医療関係者向けインクレチン情報

2型糖尿病におけるインクレチン

2型糖尿病患者または耐糖能異常者ではインクレチンの効果が低下し、インスリン分泌が減弱していることが報告されています。
また、2型糖尿病患者にインクレチン(GLP-1)を静脈内投与するとインスリン分泌が促進されることが示されました。こうしたことから、インクレチンは2型糖尿病の治療として有望視されています。

【2型糖尿病におけるインクレチンの作用】

健康成人に血糖値が同程度となるよう調整してブドウ糖を経口投与あるいは経静脈内投与すると、経口投与をした方がインスリン分泌量は約2.5倍に増幅されます。これは、経口投与の場合、血糖値の上昇に加え、消化管から分泌されるインクレチンに反応して膵β細胞からのインスリン分泌が促進されるためと考えられます。
健康成人では経口ブドウ糖投与に対するインスリン分泌反応の60~70%がインクレチンの作用によるもの(インクレチン効果)ですが、2型糖尿病患者におけるインクレチン効果は、健康成人と比較して低下することが示されています(p≦0.05)。

■ブドウ糖を経口投与もしくは経静脈内投与した際の血漿インスリン濃度(海外データ)

ブドウ糖を経口投与もしくは経静脈内投与した際の血漿インスリン濃度

Nauck M et al.Diabetologia 1986;29(1):46-52.より改変



【血糖依存的なインクレチンの作用】

インクレチンは、血糖値が上昇した時にはインスリン分泌を促進し、中でもGLP-1は、グルカゴン分泌を抑制して、血糖値を低下させます。しかし、血糖値が低い時にはこれらの作用は起こりません。つまり、インクレチンの作用は血糖依存的であることが特徴です。
2型糖尿病患者にGLP-1を持続的に注入すると、しばらくは血中インスリンの上昇とグルカゴンの減少がみられ、血糖値は低下します。しかし、血糖値が正常域近くになるとGLP-1によるインスリン分泌促進は停止し、グルカゴンが上昇して血糖は正常域に保たれます。

■GLP-1による血糖依存的な効果(海外データ)

GLP-1による血糖依存的な効果(海外データ)

Nauck M et al.Diabetologia 1993;36(8):741-744.より改変



【糖尿病治療への応用】

消化管から分泌されたGIPとGLP-1は、生体内ではDPP-4(dipeptidyl peptidase-IV)酵素により速やかに分解され、生理活性を失います。
したがって、治療においては分解されない工夫が必要になります。
たとえばDPP-4活性を阻害して内因性のインクレチン作用を高めたり、DPP-4に認識されないインクレチン受容体刺激薬や誘導体を投与することなどが考えられます。

■DPP-4によるインクレチンの活性制御

DPP-4によるインクレチンの活性制御


Deacon CF et al. Diabetes. 1995; 44(9): 1126-1131.
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Weber AE J Med Chem. 2004; 47(17): 4135-4141. より改変


GLP-1: glucagon-like peptide-1
GIP: glucose-dependent insulinotropic polypeptide

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