ガーダシル®の接種方法
接種方法
ガーダシル®/シルガード®9適正接種の手引き
STEP 1 接種前の確認事項
[1]体温を測定し、「予診票」に記入していただいてください。
●被接種者および保護者の方に「HPVワクチン(ガーダシル®/シルガード®9)を接種される方へ」を必ずお読みいただき、予診票へ記入していただいてください。
任意接種用 説明文書
任意接種用 予診票(複写式2枚綴り)
※定期接種対象者への説明は各自治体の説明文書を用いて十分な説明を行ってください。
[2]問診、診察を実施して被接種者の健康状態を確認してください。
- ガーダシル®またはシルガード®9の接種対象の性別、年齢(9歳以上)を確認してください。
- ガーダシル®またはシルガード®9の接種回数を確認してください。2回目、3回目の接種の場合は、前回の接種との間隔が適切であるか確認してください。
- 接種前の体温を確認してください。
→通常37.5℃以上の方への接種は避けてください。 - ガーダシル®またはシルガード®9の接種不適当者および接種要注意者でないか確認してください。
- 妊娠の可能性を確認してください。

[3]接種上の注意および接種後に起こりうる副反応について説明し、同意を得てください。
- ガーダシル®およびシルガード®9の効能・効果に関連する注意点として、接種時にすでに感染しているHPVを排除したり、すでに生じているHPV疾患の進行予防効果は期待できないことを説明してください。
- 副反応として以下の症状があります。

注)発現頻度は国内臨床試験(027試験、028試験、122試験及び200試験)に基づき算出した。

※ 国際共同試験、外国臨床試験、本剤又はガーダシル®の自発報告で認められた副反応
- 重大な副反応として、過敏症反応(アナフィラキシー、気管支痙攣、蕁麻疹など)、ギラン・バレー症候群、血小板減少性紫斑病、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)があらわれることがあります。
- 重大な副反応に備え、救急医療品セット、気道確保に必要な器具一式、酸素吸入用具などをあらかじめ準備しておきます。
- ワクチン接種直後または接種後に、注射による心因性反応を含む血管迷走神経反射として失神があらわれることがあります。失神による転倒を避けるため、接種後30分程度は座らせるなどした上で、被接種者の状態を観察することが望ましいとされています。〔添付文書の「8.重要な基本的注意」(ガーダシル®)、「2.重要な基本的注意」(シルガード®9)の項参照〕
- 発生機序は不明であるが、ワクチン接種後に、注射部位に限局しない激しい疼痛(筋肉痛、関節痛、皮膚の痛み等)、しびれ、脱力等があらわれ、長期間症状が持続する例が報告されているため、異常が認められた場合には、神経学的・免疫学的な鑑別診断を含めた適切な診療が可能な医療機関を受診させるなどの対応を行ってください。

STEP 2 接種時のポイント
[1]冷蔵庫から取り出し、室温に戻してから速やかに使用してください。
- 誤って凍結させたものは、品質が変化しているおそれがあるので使用しないでください。
- ワクチン名および最終有効年月日を確認してください。最終有効年月日が過ぎたものは使用しないでください。
- ガーダシル®およびシルガード®9は、希釈または溶解する必要はありません。
- プレフィルドシリンジは1回接種用です。複数の被接種者に使用しないでください。
[2]筋注用の注射針を準備してください。
- ガーダシル®およびシルガード®9の接種は23〜25Gの注射針が推奨されます。
- 被接種者の年齢や体格を考慮し、筋肉内に達する、適した長さの注射針を選んでください。なお、接種部位は年齢に関わらず、通常、上腕三角筋とし、当該部位への接種が困難な場合は大腿前外側部への接種を考慮してください。

*1 専門家によっては、体重60kg未満の場合、16mmを勧める場合もある。
MMWR 2011 ; 60(RR-2) : 1-64.より改変
[3]包装箱からシリンジを取り出し、プランジャー(押子、内筒)が緩んでいないかを確認します。

[4]接種部位、用法及び用量、接種方法を確認の上、接種してください。
- 接種部位
- 通常、上腕三角筋とし、当該部位への接種が困難な場合は、大腿前外側部への接種を考慮してください。臀部には接種しないでください。
※開発時の臨床試験では上腕部(三角筋)への接種を推奨しており、上腕への接種が困難であった場合に大腿への接種を可としていた。ただし、ガーダシル®およびシルガード®9はガーダシル®を大腿に接種した男性1例を除き、日本人症例に対してすべて上腕部へ接種されていた。 - ガーダシル®およびシルガード®9は筋肉内注射です。皮下または静脈内へは接種しないでください。
- 神経走行部位を避けてください。
- 注射針を刺入したとき、激痛の訴えや血液の逆流がみられた場合は直ちに針を抜き、部位をかえて注射してください。
- 通常、上腕三角筋とし、当該部位への接種が困難な場合は、大腿前外側部への接種を考慮してください。臀部には接種しないでください。

●用法及び用量
ガーダシル®では9歳以上の者に、シルガード®9では9歳以上の女性に、1回0.5mLを合計3回、筋肉内に注射します。通常、2回目は初回接種の2ヵ月後、3回目は6ヵ月後に同様の用法で接種してください。
●接種方法
注射による血管迷走神経反射によって失神があらわれることがあるため、座位で接種してください。注射によって気分が悪くなった経験がある人、注射への恐怖心が強い人などについては、ベッドに臥床の上で接種することを考慮してください。

STEP 3 接種後の注意事項
[1]アナフィラキシーおよび失神による転倒を避けるため、
接種後30分程度は座らせるなど安静にした上で被接種者の状態を観察してください。
- 失神(顔面蒼白、めまい、ふらつきなど)はワクチン接種だけでなく、採血や献血でも起こります。その多くは、接種に対する不安で緊張すること、接種後に緊張が解けることが原因と考えられています。
- 失神の際に、強直間代運動を伴うことがあります。
- 失神の際は、上下肢の静脈拡張が起こり、静脈還流が低下します。心臓と脳の血流を確保するために、(仰臥位にして)下肢を挙上してください。

[2]被接種者へ接種後の注意点について説明してください。
- 接種後は、接種部位を清潔に保つよう、また接種部位を強くこすったり、もんだりしないように指導してください。
- 接種後1時間以降の入浴は問題ありませんが、接種当日は過激な運動は避けるように指導してください。
- 接種後1週間以内に、接種部位の異常な反応や体調の変化があった場合は、医師の診察を受けるようにお伝えください。
- ワクチン接種後に、注射した部位に限らず、激しい痛み(筋肉痛、関節痛、皮膚の痛みなど)、しびれ、脱力などが起こり、長くつづくことがあります。このような症状が起こった場合には、適切な診療が可能な医療機関を受診いただくことが必要ですので、医師の診察を受けるようにお伝えください。
- 疼痛または運動障害等の報告について1)
- ワクチンを接種した後に、広い範囲に広がる痛みや、手足の動かしにくさ、不随意運動等を中心とする多様な症状が起きたことが副反応疑い報告により報告されています。
- この症状のメカニズムとして、①神経学的疾患、②中毒、③免疫反応、④機能性身体症状が考えられましたが、①②③では説明できず、④機能性身体症状であると考えられています。
- 「HPVワクチン接種後の局所の疼痛や不安等が機能性身体症状を惹起したきっかけになったことは否定できないが、接種後1ヵ月以上経過してから発症している症例は、接種との因果関係を疑う根拠に乏しい」と評価されています。
- HPVワクチン接種歴のない方においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を有する方が一定数存在したこと、が明らかとなっています。
- このような「多様な症状」の報告を受け、様々な調査研究が行われていますが、「ワクチン接種との因果関係がある」という証明はされていません。
なお、シルガード®9接種後の「多様な症状」の発現状況については、臨床試験の結果のみでは得られる情報に限界があるため、今後、使用成績調査や全例登録の活動を行い、引き続き検討する予定です。同様に、ガーダシル®については男性を対象とした使用成績調査を行います。
- ガーダシル®またはシルガード®9の接種スケジュールを説明し、次回の接種を忘れないように指導してください。

- ガーダシル®またはシルガード®9は3回接種することで、HPV感染を防ぐために必要な免疫が得られます。必ず3回接種するように指導してください。
- 1回目にガーダシル®を接種した場合には、2回目、3回目の接種もガーダシル®を使用してください。1回目以降、2回目、3回目で他のHPVワクチンを接種した場合の予防効果や安全性は確認されていません。シルガード®9も同様で、3回ともシルガード®9を使用してください。
- ガーダシル®またはシルガード®9は、すでに感染しているHPVに対する効果はありません。また、ガーダシル®で予防可能なHPV6/11/16/18型、シルガード®9で予防可能なHPV6/11/16/18/31/33/45/52/58型以外の高リスク型HPVの感染によって子宮頸がんを発症する可能性があるため、被接種者が女性の場合は、接種後も定期的に子宮頸がん検診※を受けるように指導してください。
※厚生労働省の「がん検診実施のための指針」において、20歳以上の女性を対象に2年に1回の子宮頸がん検診が推奨されています。
1)厚生労働省 「医療従事者の方へ~HPVワクチンの接種に当たって~」
https://www.mhlw.go.jp/content/000679265.pdf( Accessed Dec. 3, 2020)
[3]副反応がみられた場合には適切な処置を実施してください。
【主な副反応への処置】
- 局所発赤、腫脹、硬結
一般に発赤、腫脹は3〜4日で消失しますが、熱感、発赤の強いときには局所の冷湿布を行います。硬結は次第に小さくなりますが1ヵ月後でもなお残る場合もあります。 - 発熱
一般的処置として身体の冷却、必要に応じてアセトアミノフェンなどの解熱剤を投与します。他の原因による発熱も考えられますので観察が重要です。
(公財)予防接種リサーチセンター「予防接種ガイドライン2019年度版」から転載・一部改変
【アナフィラキシーの臨床所見と初期対応】
- 臨床所見

一般財団法人 日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014年 第1版

一般財団法人 日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン 2014年 第1版



【ワクチン接種後に機能性身体症状が疑われる患者が受診した場合】
- ワクチン接種直後から、あるいは遅れて接種部位や接種部位と異なる部位の持続的な痛み、倦怠感、運動障害、記憶等認知機能の異常、その他の体調の変化等を訴える患者が受診した場合には、HPVワクチン接種との関連を疑い症状を訴える患者が存在することを念頭に置き、傾聴の態度(受容、共感)を持って接し、診療にあたってください。
- 患者が落ち着いて診療を受けられるよう、また治療方針が首尾一貫するように取りはからいつつ、自分が主治医として診療するか、協力医療機関、専門医療機関の医師に紹介するかを検討してください。紹介される際にも、主治医が決定するまでは責任を持ってご自身で診療にあたってください。
- 上記2点の内容は、日本医師会及び日本医学会より発刊された「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」に記載されています。詳しくはこちらをご参照ください。また、「HPVワクチン接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関」を全国に設置しています。
「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/dl/yobou150819-2.pdf
「HPVワクチン接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkakukansenshou28/medical_institution/dl/kyoyroku.pdf - 接種後に生じた症状によって受診する医療機関や、日常生活のこと、医療費のこと等で困ったことがあったときのための相談窓口を都道府県に設置しています。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkakukansenshou28/madoguchi/dl/151116_01.pdf - 副反応疑い報告を行うか検討してください。
厚生労働省 「医療従事者の方へ~HPVワクチンの接種に当たって~」
https://www.mhlw.go.jp/content/000679265.pdf (Accessed Dec. 3, 2020)
Q&A 接種に関するQ&A


1)Garland SM et al. Vaccine. 2015; 33: 6855-6864.
【利益相反】本研究はMSD社の資金により行われた。著者にMSD社の社員が含まれる。
著者に他の研究助成、講演料、資金提供を受領した者が含まれる。
2)Human papillomavirus vaccines: WHO position paper, May 2017.
WHO Weekly epidemiological record No 19, 2017, 92, 241–268.
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/255353/1/WER9219.pdf?ua=1 (Accessed Dec. 3, 2020)
3)Meites E et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2016; 65(49): 1405-1408.