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脳神経症状が起きる疾患の画像所見を復習することができます

人には12対の脳神経があり、それぞれの神経に生きていく上で必要なはたらきがあります。腫瘍による圧迫や神経自体の異常などによって難聴や顔面の麻痺などの神経症状が起きることがわかっています。脳神経症状が起きる疾患の画像所見の復習にお役立てください。


内耳・脳神経
顔面神経鞘腫

facial nerve schwannoma

(大澤威一郎,齋藤尚子)
出典ページ:P76-77

症例

30歳代,男性.十数年前より左の顔面神経麻痺を反復している.1週間前から顔面神経麻痺が再度出現したため受診,MRIが施行された.めまいや難聴の症状なし.

図1-A 脂肪抑制T1強調像
図1-B T2強調像

図1-C 脂肪抑制造影T1強調像
図1-D 脂肪抑制造影T1強調矢状断像

 脂肪抑制T1強調像では,左顔面神経の膝神経節部(図1-A;→)は,対側(図1-A; )と比較して腫大し,T1強調像で灰白質とほぼ同等の信号を示す.T2強調像では,灰白質と比較してやや高信号を呈する(図1-B;→).脂肪抑制造影T1強調像では,膝神経節部の病変に均一な増強効果を認め,迷路部~内耳道内の顔面神経に連続する(図1-C;→).脂肪抑制造影T1強調矢状断像では,病変は顔面神経鼓室部にも進展している(図1-D;→).顔面神経鞘腫の矛盾しない所見である.その後,症状は消失し,外来で経過観察中である.

 顔面神経鞘腫は,顔面神経のいずれの部位より発生するが,最も頻度が高いのは膝神経節部である.その他,頻度の高い部位として,鼓室部,迷路部,内耳道~小脳橋角部が挙げられる.発生する部位により鑑別疾患が異なり,膝神経節部では顔面神経血管腫,鼓室部では鼓室型Glomus腫瘍や真珠腫,内耳道~小脳橋角部では聴神経腫瘍が鑑別に挙がる.また,部位により症状も様々だが,最も重要な症状は顔面神経麻痺である.

 画像所見 顔面神経鞘腫の画像診断には,CTとMRIが有用である.CTでは,腫瘍の辺縁は整であり,顔面神経管の拡大を認める. また,周囲骨にはscalloping( 波状の骨吸収縁)やremodeling(薄い新生骨)がみられる1).腫瘍内の石灰化は稀である.
 MRIでは,T2強調像で高信号,T1強調像では灰白質と比較し,等~高信号を示す.造影T1強調像では,均一な増強効果を示すが,大きいものでは嚢胞変性を来す場合がある.

顔面神経鞘腫の鑑別疾患は,発生する部位により異なる.

【顔面神経血管腫】
 膝神経節部に発生した場合,最も重要な鑑別疾患は顔面神経血管腫である.なぜなら,顔面神経血管腫もまた,膝神経節部が最も頻度の高い発生部位だからである.CTでは,辺縁の状態と石灰化の有無が鑑別のポイントになる.顔面神経鞘腫は辺縁が整で石灰化が稀なのに対して,顔面神経血管腫は辺縁が不整で,石灰化の頻度が高い(39~50%).石灰化は斑状や針状を示し,“dot-like”,“point-like”もしくは“needle-like” calcificationと呼ばれたり2),“honeycomb appearance”とも称される.MRIでは,顔面神経血管腫は顔面神経鞘腫と比較して,T2強調像で高信号を示すのが特徴である.また,腫瘍の大きさと症状との関係も鑑別点となる.
顔面神経鞘腫は,腫瘍の距離が長い傾向にあるにもかかわらず症状が出にくい.これに対して,顔面神経血管腫は1cm未満が81%を占め,腫瘍が小さいうちから症状が出る傾向にある.

【鼓室型Glomus腫瘍,真珠腫】
 鼓室部に発生した場合は,鼓室型Glomus腫瘍や真珠腫との鑑別が重要になる.鼓室部の顔面神経鞘腫は,鼓索神経もしくはJacobson神経由来である.特に,Jacobson神経鞘腫は岬角に発生するため,鼓室型Glomus腫瘍との鑑別が問題となる.耳鏡所見では,Jacobson神経鞘腫が白色鼓膜を示すのに対し,鼓室型Glomus腫瘍は赤色鼓膜を呈する.また,鼓室型Glomus腫瘍はJacobson神経鞘腫より造影効果が強いことも鑑別点となる.
真珠腫は,顔面神経鞘腫と同じく白色鼓膜を示すが,造影効果がない点で鑑別可能である.

【聴神経腫瘍】
 内耳道~小脳橋角部に限局して発生した場合は,神経鞘腫の1種である聴神経腫瘍との鑑別は困難である.ただし,内耳道底部から迷路部を通り膝神経節部に達すると,ダンベル状を示し,聴神経腫瘍と走行が異なるため鑑別可能となる

【Bell麻痺,Ramsay Hunt症候群】
 内耳道底部に球状の腫瘍がみられる場合は,非腫瘍の末梢性顔面神経麻痺(Bell麻痺やRamsay Hunt症候群など)による神経腫大との鑑別が必要になる.非腫瘍性の場合は,顔面神経管の拡大はなく,顔面神経の腫大も経時的に改善する点が鑑別のポイントになる.


同テーマの症例

聴神経腫瘍

小脳橋角部髄膜腫

末梢性顔面神経麻痺

顔面神経鞘腫

参考文献

  1. Wiggins RH 3rd, Harnsberger HR, Salzman KL, et al: The many faces of facial nerve schwannoma. AJNR27: 694-699, 2006.
  2. Yue Y, Jin Y, Yang B, et al: Retrospective case series of the imaging findings of facial nerve hemangioma.Eur Arch Otorhinolaryngol 272: 2497-2503, 2015.

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